46/58
霜のいと白きも
清少納言さん本人に謝れば良い物を、わざわざ道長様に謝っているんだもの。それは、道長様に良い顔をしたいという私の欲望が入っているわ。もう完全に諦めると決めたのに、口ではそう言っているくせに、道長様の気を引こうとしているんだから最低よ。優しいと思われようとしているんだから。
「最低なんかじゃない。もっと自分には自信を持たないといけないぜ?」
「私は……、私は藤原先輩みたいにはなれません。自分を好きになんてなれないし、他人に好きになって貰う事も、出来ません。藤原先輩や清少納言さんと一緒にいては、嫉妬心から殺されてしまいますから。だからもう、私には構わないで下さい」
全く理解が出来なかった。結局、私はどうしたいのだろうか。道長様を困らせたい訳じゃないのに、私はそんな事を言ってしまっていた。戸惑うような困るような、だけどどこか優しいような、そんな道長様の微笑みが、私には痛くて辛くて悲しくて。また逃げ出してしまいたくなる。何度も言い聞かせないと、私の足は道長様の優しさから逃れたくて、走り出してしまいそう。