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日入り果てて

 確かに道長様と二人きりと言うこの状況は、感動的なまでに嬉しい。だけどそれ以上に、私の作品を褒めて貰い、アドバイスまで貰っている事を、喜んでいる私がいた。私の作品を気に入ってくれて、より良いものにしようとしくれる人がいる。私の為に時間を使ってくれる、私の作品の為に時間を使ってくれる。

 それは、相手がたとえ道長様じゃなかったとしても、嬉しい事だと思う。そこで私は、気付いてしまった。恋をしている紫式部よりも、恋を描いている紫式部の方が、私なのではないかと。執筆をしているときの方が、私は恋をしている。もしかしたら、私が恋をしていたのは、光源氏だったのかもしれない。


「ありがとうございます。私、とても嬉しいです……」


 なんだか、私の中で恋が終わった音がした。初恋が終結した音がした。それと同時に、光源氏も死んでしまったような気がした。やっぱり、道長様には憧れな存在のままでいて貰うべきだったんだ。本当の道長様はこんなに優しくて、私の理想とは少し違っていた。私の妄想と少し違っていて、でももっと素敵な方だった。

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