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いとをかし
「今、こんな調子なんです。光源氏をここからどうして行こうか、そこがどうしても思い付かなくて……。藤原先輩、アドバイスを頂けないでしょうか」
まだ公開していない執筆中の画面を開き、道長様に意見を求めた。パソコンの前の席を彼に譲ると、頭を下げて道長様はそこに胡坐を掻き、パソコン画面を食い入るように見る。そしてしばらくはじっと見ていた。あまりになんの反応もなく読んでいるので、私も緊張をしてしまって仕方がなかった。
彼が見入って読んでいるせいで、私にはもう不安が押し寄せて来る。どうしてそんな笑顔の一つもない顔で、真面目な表情をして読んでいるの? そりゃまあ、コメディーを書いている訳ではないのだから、笑いながら読まれても困るんだけどさ。でもその無反応は、どう考えればいいのかしら。
「これ良いと思う。俺の好みで言ってもいいのかと思うが、それでいいなら意見はいくらでも言うさ」
道長様は一通り褒めた後、アドバイス、そしてこの後の展開についての期待を述べてくれた。少し不思議に思ったところは、細かく指摘もしてくれた。