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まいて雁などの
「いえ、いいえっ。そうではないのですが、本当に私の家にいらしてくれるのですか? だって私の家で二人きりなんて、そんな……。藤原先輩がそう言う意味で言っているのではないと、理解はしております。でも、でもなんか、はい」
わああ、私ったら何を言っているんだろうか。どうしたらいいの? 道長様、きっと私の事を変な人だと思っているわ。このままじゃ、不審がって道長様は私の事を避けてしまう。嫌われちゃう、嫌われたくなんてないよ。私はどうしたらいいのだろう。こんなことなら清少納言さんに内緒でこんな事しなきゃ良かった。
不思議そうにしている。その眼差しが私には痛いよ。道長様は素敵な方だし、お優しい方だし、この程度で私を嫌ったりしない。そう道長様の事を信じてはいるし、私自身そう望んではいるわ。でも変態だと思われてしまうのは絶対じゃない。だってこんなの、完全に変態だもの。
「何か不都合があるのなら構わない。俺の家だと女を連れ込んだとか五月蝿いだろうし、それじゃあ紫式部ちゃんに迷惑が掛かると思って。ただ自宅が無理となると」