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飛び急ぐさへ
まるで清少納言さんを気遣っているようなふりをして、私はなんてことを考えているのだろうか。私は、本当に強欲で最低な女だ。こうして道長様に恋をして、清少納言さんとは恋のライバルと言う形で親しくなり、私は改めてその事を痛感した。
自分の行動に対して、自分で絶望してしまう。やはりこれは正々堂々と戦うべきなのではないだろうか。清少納言さんには悪いと思うけれど、私の家に道長様をお呼びするべきなのでは。何これ。どちらを選んだとしても、私は卑怯な女となる運命だということなのか。
「清少納言さんも、一緒ではいけませんか? 私だけですと、その、緊張とかもしてしまいますし」
どの様に告げたら良いか中々に難しかったので、取り敢えず道長様にそう問い掛けてみた。自然な流れで清少納言さんも一緒にみたいな感じで持っていこうとも思ったけれど、それは出来る気がしなかったので直球で言ったのだ。
すると道長様は複雑な表情を浮かべた。彼の事だから快く良いと言ってくれると思ったのに、どうしたのだろうか。何か問題でもあるというのだろうか……。