3/58
なりゆく山際
彼女がライバルでは有りませんように。
そう願っていたんだけど、彼女の口から彼の名が聞こえて来てしまった。神様って、本当に意地悪だよね。
元々私だって、彼と私が釣り合うとは思っていない。想いを伝えようと思っただけで、彼と仲良くなるなんて絶対無理。次元の違う人だもん。そう、そうなんだけどさ……。
でも私は、彼の記憶に残りたいと思った。記憶に残る素敵なラブレターを書いて、彼の記憶に残りたいと思ったんだ。少しだけでも、ほんの少しだけでも。彼に私の手紙を覚えていて欲しいと思った。
だって、彼は詩とか嗜んだりするらしいの。だから素敵な恋文が書ければ、彼は私を見てくれるんじゃないかなって。優しいと噂の彼だから、一度だけでも振り向いてくれるんじゃないかなって思うんだ。
それなのに、清少納言さんがいたら特別になれないじゃないか。他の人が相手ならば私の方が良い恋文を書く自信が有るけれど、清少納言さん相手じゃ勝てるかどうか。私の唯一の取り柄、潰しに来るなんて卑怯だわ。
取り敢えず、素敵な文章を考えないと。