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二つ三つなど
私のそんな提案に、道長様は目を輝かせて、大きく頷いてくれた。まさかここまで食い付いてくれるなんて、私自身もそこまでとは思わなかった。素直に意見を貰いたいと思っていた気持ちだってあるし。
今回のは本当に自分でもよく書けたと思っている。良く書けているな、なんてまだ途中だけど今のところは思っていたりしてる。それでもまさかね、まさか思わない訳よ。あの道長様が、こんな私の小説なんて。嬉しさが止まらない、変になっちゃいそう。
「それじゃあ、休日にでも家にお邪魔していいかな。光源氏にはなんだか親近感も沸くし、俺が納得いく物語にしてやんよ。素敵な物語、だからね」
楽しそうに言う道長様は、まるで新しい玩具を買って貰った子供のようだった。……って、え!? 私の家なんかに、道長様がお越し下さるっていうの。清少納言さんみたいに豪華な家に住んでいるんなら、家に招く事だって出来るかも知れない。でも私の家なんて――。
それだったら清少納言さんの家に行って貰ったらいいんだ。私の家に呼んで二人きりになるなんて、清少納言さんに悪い。