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山の端いと
しかし、今は一句詠みたい気分だった。それはきっと恥ずかしくて、とても人に聞かせられるようなものじゃない。それでも、彼に会えたと言うこの喜びを、言葉にせずはいられなかった。
「どんな詩を? 道長先輩のセンス、あたしが見極めて差し上げましょう」
そう口にして、清少納言さんは一気に表情を後悔へと変えていった。その可愛らしい彼女の姿に、思い付いた句も忘れてしまった。どうせ誰に見せる訳でも無いのだから、忘れてしまった方がむしろ私も恥ずかしくなくていいけどね。清少納言さんに感謝。
彼女は後悔しているようだけど、反応だってそんなに悪いようには思えない。清少納言さんの自信家ぶりは学園中でもかなり有名だろうし、名前を知っていたと言う事は、その情報だって知っていたかもしれない。それならば、変に謙虚だった方が話と違うと不振がられる。
「学園内で国語の神と言われる二人に評価して貰えるなら、俺も嬉しいな。絶対に感動させてやんよ」
私が勝手に思い描いていた道長像とは違っていたけれど、彼に対する憧れの気持ちは何も変わらなかった。