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ほのかに
そう考えると、清少納言さんは私よりも良い人では無いか。勘違いされ嫌われ易い、不憫な少女。だからこそ、親しい人には酷く慕われる。成程、彼女のおまけの様に着いて歩いていた人は本当に慕っていたのね。
仁徳は薄い、人望は無い。それでも、確かに信じられる人がいる。確かに信頼し合える、大切な人がいる。それを持たない私にとって、何よりも羨ましい事。私にも、好きと言ってくれる人はいる。ただそれは、私に対して言ってくれていると言えないかも知れない。
有難い事に、私の小説を読んでくれている人はいる。そして面白いと言ってくれる人も、いるんだ。でもそれは、決して私を好きと言っている訳ではない。登場人物を好きになってくれる人、中には作者を好きになってくれる人もいるかも知れない。
それでも私とは別人。同一人物の様で、同一人物では無い。私の中の、私とは異なる人格とでも言えばいいのであろうか。私の様ではあるけれど、私その物で無いのは確か。だから私は、清少納言さんが羨ましいと思う。私本人が人望を手にするなんて有り得ないけどさ。