泣いている幽霊
どこにでもそんな話はあるものだ。
一人の女の子が殺されて。
その無念から夜な夜な化けて出てすすり泣いているなんて。
どこにでもいるものだ。
そんな幽霊を肝試しに見に来る私のような人間は。
そんなことをしているから、こんなことになる。
つまり。
「あなたは?」
泣いていた幽霊に見つかっちゃうなんて。
「ひっ……」
声が出ない。
絶望したまま私は腰を抜かしてしまう。
目は女性の顔から離れない。
綺麗な顔。
だけど涙でぐしゃぐしゃだ。
髪の毛が整っている。
丁寧にケアをしているのだろう。
化粧だってしっかりと――。
浮かぶ疑問。
それをなぞるように彼女の口が動く。
「幽霊を見に来たの?」
呆れた様子で笑う。
「残念ね。幽霊が居るなら私が会いたいのに」
つまり、彼女は幽霊ではない。
そう理解したけれど、私の腰はまだ抜けたままだ。
「ごめんね。驚かせちゃって。ここで殺されたの私の友達なの」
彼女はそう言って私の隣に座り込む。
「犯人。まだ見つかってないの。もう随分と時間経っているのにね」
彼女の口元に薄い笑みが浮かぶ。
自然と浮かんだものだろうと私は思うことにした。
「私ね。時々、こうしてここに来るんだ」
彼女は地面に手を当てて言う。
「痛かったね。辛かったね。ごめんねって。そう伝えるために――そんな私を見て。ここに幽霊が出るって皆言うようになってるのね」
辛うじて体が動くようになる。
私は謝罪をする。
興味本位で来たことを。
「ううん。気にしてない。きっと、あの子も喜ぶよ。だって、独りきりで寂しかっただろうから」
薄い笑い。
私はその顔に二度謝罪をして足早に立ち去った。
言葉を表面通りに受け取っていられる内に。




