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泣いている幽霊

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/04/09

 

 どこにでもそんな話はあるものだ。

 一人の女の子が殺されて。

 その無念から夜な夜な化けて出てすすり泣いているなんて。


 どこにでもいるものだ。

 そんな幽霊を肝試しに見に来る私のような人間は。

 そんなことをしているから、こんなことになる。


 つまり。


「あなたは?」


 泣いていた幽霊に見つかっちゃうなんて。


「ひっ……」


 声が出ない。

 絶望したまま私は腰を抜かしてしまう。

 目は女性の顔から離れない。


 綺麗な顔。

 だけど涙でぐしゃぐしゃだ。

 髪の毛が整っている。

 丁寧にケアをしているのだろう。

 化粧だってしっかりと――。


 浮かぶ疑問。

 それをなぞるように彼女の口が動く。


「幽霊を見に来たの?」


 呆れた様子で笑う。


「残念ね。幽霊が居るなら私が会いたいのに」


 つまり、彼女は幽霊ではない。

 そう理解したけれど、私の腰はまだ抜けたままだ。


「ごめんね。驚かせちゃって。ここで殺されたの私の友達なの」


 彼女はそう言って私の隣に座り込む。


「犯人。まだ見つかってないの。もう随分と時間経っているのにね」


 彼女の口元に薄い笑みが浮かぶ。

 自然と浮かんだものだろうと私は思うことにした。


「私ね。時々、こうしてここに来るんだ」


 彼女は地面に手を当てて言う。


「痛かったね。辛かったね。ごめんねって。そう伝えるために――そんな私を見て。ここに幽霊が出るって皆言うようになってるのね」


 辛うじて体が動くようになる。

 私は謝罪をする。

 興味本位で来たことを。


「ううん。気にしてない。きっと、あの子も喜ぶよ。だって、独りきりで寂しかっただろうから」


 薄い笑い。

 私はその顔に二度謝罪をして足早に立ち去った。

 言葉を表面通りに受け取っていられる内に。

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