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EP 10

世界樹からの年金(純金100kg)と、鳩の餌

その日、ポポロ屋の裏庭には、太陽の光を反射して暴力的なまでに輝く『黄金の山』が築かれていた。

「……おい、ルナ。これは一体何の嫌がらせだ?」

元・暗殺者の料理人リアンが、眩しそうに目を細めながら腕を組んだ。

目の前に積まれているのは、レンガほどの大きさがある『純金の延べ棒』の山である。ざっと見積もっても100キログラム。ルナミス帝国の国家予算の一部に匹敵する、とんでもない富の結晶だ。

「あはっ☆ お父様(世界樹)から、今月の『年金』が届いたんですぅ」

天然チートエルフのルナは、純金の山の上にちょこんと座り、ふわりと微笑んだ。

「年金って……アンタまだ数百歳(エルフ基準では若者)でしょ!? ていうか、毎月のお小遣いが純金100キロってどういう金銭感覚してんのよ世界樹様は!!」

ポポロ村村長のキャルルが、ウサギ耳を逆立てて激しくツッコミを入れる。

「実家の森で採れる鉱石を、ちょっと錬金術でまとめただけみたいですよぉ? リアンさん、これで新しいフライパンでも買ってくださいねっ♡」

「……純金のフライパンなんて重くて振れねぇよ。熱伝導率も最悪だ。邪魔だから溶かして漬物石にでもするか」

「使い道がバグってるわよ!!」

ポポロ屋の日常は、今日も圧倒的な富とチート魔法によって平和(?)に回っていた。

……しかし、世界は残酷である。

光が強ければ強いほど、その陰で生きる者の闇(貧困)は深く、そして哀愁を帯びるのだ。

◇ ◇ ◇

同じ頃。

ルナミス帝国の歓楽街から少し外れた、のどかな『中央公園』。

「ほーれ、ポッポ。お食べ」

ベンチに座る人の良さそうなお婆ちゃんが、紙袋からパラパラと豆や細かくちぎったパン屑を地面に撒いていた。

平和な昼下がり。十羽ほどの鳩が集まり、クルックーと喉を鳴らしながら食事を始めようとした、その瞬間である。

「とったどぉぉぉぉぉ!!!」

シュタタタタタタッ!!

茂みの奥から、ピンク色の髪をした少女が、プロの野球選手顔負けの完璧なヘッドスライディングで飛び出してきた。

「ク、クルックゥゥ!?」

突如乱入してきた巨大な捕食者(?)に、鳩たちがパニックを起こして飛び退く。

「ふふふっ……! お婆ちゃんの撒く『ハト麦』と『高級食パンの屑』……! これさえあれば、今日の私のディナーは完全なオーガニック・コースよ!!」

地面に這いつくばった極貧地下アイドル・リーザは、目にも留まらぬ速さで豆とパン屑を拾い集め、エプロンのポケットへとねじ込んでいく。

その動きは、もはや野生動物のソレであった。

だが、帝国の鳩たちも縄張りを荒らされて黙ってはいない。

「ドゥルルルルッ!!(※怒りの声)」

ボス格らしき首の太い鳩が、リーザの頭の真上から急降下爆撃ついばみを仕掛けた。

「痛っ!! ちょっ、やめてよポッポちゃん! このパン屑は私が先に見つけたのよ!!」

「クルックー!!(バサバサバサッ!)」

「きゃああっ! 髪の毛引っ張らないで! 私、これでも海中国家シーランの王女(人魚姫)なのよ!? アイドルなのよぉぉ!!」

純金100キロの上に座るエルフがいる一方で。

異国の公園の土にまみれ、鳩とガチの死闘を繰り広げながら「お婆ちゃんが撒いた豆」を奪い合う王女。

これぞまさに、絶対的かつ絶望的な『経済格差』の縮図である。

「くっ……! 負けないわ! この豆をポポロ屋に持ち帰って、リアンさんに『豆ご飯』にしてもらうんだからぁぁ!!」

リーザは鳩の猛攻つつきに涙目になりながらも、決して手の中のパン屑を離さなかった。

……しかし、彼女は気づいていなかった。

彼女のその勇ましくも悲惨すぎる生存競争サバイバルの一部始終が、公園の茂みに隠れた『ルナミス帝国のTV局のカメラ』によって、バッチリと高画質で録画されていたことに。

「……おいディレクター。アレ、元・親善大使のリーザ様じゃねぇか……?」

「間違いない。……まさか、アイドルブームが去って、鳩の餌を奪い合うまで落ちぶれていたとは……。これは特番のトップニュースになるぞ。カメラ回し続けろ!!」

極貧地下アイドルの哀しきサバイバル生活は、ついに「全国ネット」という最悪の形で、海を越えた故郷へと届こうとしていた。

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