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EP 3

鼻に五円玉!『ハゲたぬきのポンポコ節』大熱唱

リーザが「まかない付き(特大ハンバーグ定食)」という強力な甘い汁に釣られ、ポポロ屋の新人ウェイトレスとして働き始めてから数日が経った。

「はい、お待ちどうさま! 生ビールのみっつと、山盛り唐揚げねぇ☆」

ピンク色のフリルエプロンを身にまとい、満面のアイドルスマイルでジョッキを運ぶリーザ。

元々が「海中国家シーランの王女(人魚姫)」だけあって、その愛らしいルックスと愛嬌は、ポポロ屋にたむろするむさ苦しい客たち(ドワーフの親方衆や三国の国境警備兵)の心を一瞬で鷲掴みにしていた。

「いやぁ〜、今日のビールは一段と美味ぇな! ねぇちゃん、可愛いじゃねぇか!」

「なんでもルナミス帝国で『アイドル』やってたんだって? どうだい、俺たちのために一曲歌ってくれよ!」

顔を真っ赤にしたドワーフの親父が、ジョッキを片手にけしかけた。

すると、リーザの瞳に「プロの地下アイドル」としての熱い炎が宿った。

「えっ……! 私の歌を、聴きたいの!?」

(来たわ……! ルナミス帝国のガード下で培った、私の『ファンサービス』を見せる時が!)

リーザはエプロンのポケットから、大事そうに磨き上げられた**『穴の開いた銅貨(五円玉相当)』**を取り出した。

そして、客たちが「どんな可愛い歌を歌うんだ?」と期待の眼差しを向ける中……。

スボッ。

リーザは、その美しい顔の中心、小さな鼻の穴に、五円玉を見事に突っ込んだ。

「……は?」

客の親父たちが、ポカンと口を開ける。

しかし、リーザは一切の恥じらいもなく、ぽんっと自分のお腹を叩いてリズムを取り始めた。

「ミュージック、スタートぉ! みんな、手拍子よろしくねぇ☆」

♪た、た、たぬきのお腹は ポンポコポンポン!

♪月よ〜月で〜頭は ハーゲハゲでピーカピカ〜!

「なっ……!?」

厨房で出汁の味見をしていたリアンが、思わずお玉を落としそうになった。

可愛い人魚姫の口から飛び出したのは、ルナミス帝国の新橋あたりで酔っ払いのオッサンが歌うような、ド直球の『宴会芸(ポンポコ節)』だったのだ。

♪お尻はツールツル〜! ターマターマはマ〜ルマル〜!

(ソレ! ヨイヨイ!)

「ぶはははははっ!! なんだその歌!! 最高じゃねぇか!!」

「おい! ターマターマって言ったぞあの嬢ちゃん!! ギャハハハ!」

一瞬の静寂の後、ポポロ屋の店内は爆発的な大爆笑と歓声に包まれた。

ドワーフたちは腹を抱えて笑い転げ、兵士たちはジョッキをバンバンと叩いて合いの手(ヨイヨイ!)を入れ始める。

リーザは鼻に五円玉を詰めたマヌケな顔のまま、ノリノリで二番に突入した。

♪は、は、葉っぱを乗せても ドロンとドンドン!

♪おヘソはデベソだ〜 ターマターマはユーラユラ〜!

(ア、ドッコイ!)

「うおおおお!! 嬢ちゃん最高だ!! 俺のチップ(おひねり)を受け取ってくれぇ!!」

チャリン! チャリン!

熱狂した親父たちが、次々と銅貨や銀貨をリーザの足元に投げ入れた。

極貧地下アイドルにとって、チップの雨は至福の瞬間である。

♪み〜んな合わせて 腹太鼓〜!

♪ポンポコ ピーヒャラ テーンツルリン☆

「はい、ありがとうございましたぁ〜! 投げ銭、助かりますぅ〜♡」

歌い終えたリーザが鼻から五円玉を外し、床に散らばった硬貨をものすごいスピードで拾い集めようとした、その時。

ガァァァァァァンッ!!!

厨房のカウンターに、巨大な中華鍋が凄まじい音を立てて叩きつけられた。

ピタッ、と店内の熱狂が静まり返る。

「……おい。誰がウチの店で、そんな下品な宴会芸をやれと言った?」

元・暗殺者の料理人リアンが、絶対零度の殺気を放ちながら包丁を研いでいた。

「あ、リアンさん! 見て見て、こんなにおひねりが! これで明日の朝ごはんに『ゆで卵』が追加できるわ!」

リーザが嬉しそうに硬貨を握りしめて報告するが、リアンの眉間には深いシワが刻まれている。

「違う……! 俺の店は、純粋に『料理』を楽しむ場所だ!! 鼻に五円玉詰めてターマターマ叫ぶキャバレーじゃねぇんだよ!!」

「えぇ〜!? でも、オジサンたちすっごく喜んでるわよ? ねぇ?」

「お、おう……最高だったぜ……(ガクガク)」

リアンの殺気に当てられ、ドワーフたちも青ざめて震えている。

「いいか。次その歌を店の中で歌ったら、お前の今日のまかないは『パンの耳(換気扇の匂い付き)』に降格だ」

「ひぃぃぃっ! ごめんなさいぃぃ! まかないだけは奪わないでぇぇ!!」

ポポロ屋に響き渡った人魚姫の歌声は、料理人の逆鱗に触れてあえなく封印(店内限定)された。

しかし、この「オッサン客を熱狂させる才能」が、この後、ポポロ村のカジノでとんでもない奇跡(胴元破産)を引き起こすことになるとは、リアンもまだ気づいていなかったのである。

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