第三話 少年
扉に入るとまたもや本がずらりと並んだ空間。
それも、神殿のような、教会のような。
怪物の彫刻が天井や壁やそこら中に刻まれている。
その中心に本を読んでいる少年が座っていた。
「やぁ、遅かったね。乙ちゃんから話しは聞いているよ。」
「ようこそ、僕の部屋へ。」
「倉富二 楷真君?だっけか。少しの間だけど、よろしくね!」
「えっと、よろしくお願いします。君の名前は・・・。」
「僕は『アルバ・サルタンバンク』さ。アルバ、でいいよ。」
「さてと。それじゃぁ早速、転生の準備をしないといけないね。」
「器を創り変えるのは転生中だから・・・その他だね。」
「器って?」
「んー?あぁ、体のことさ。最強無敵の魔王になるにはっと。えーっと、この辺の本かな!」
と言ってアルバはいろんな本棚を流しまわると一冊の本を取り出した。
その本は小柄な少年が持てるようなものではない紙も表紙も真っ黒な大きな本だった。
その本をパラパラとめくり、何かを選び終わると。
「うん、オーケー!それじゃぁ。」
急にアルバの声色が変わった。それは少年の声とは思えない地鳴りのような声。
「禁忌も含めた全ての魔法、妖力と妖術、ありとあらゆるものを含めた体術・武器、この3つの知恵と技術の使用、それから・・・創造主から直々の恩恵【クリネビタビー】、これら全てを『アルバ・サルタンバンク』の名の元に、自在に使用できる権限を与える。」
本から黒い靄が!?体に入ってくる!?な、何をされた??
アルバの声が少年の声に戻った。
「これだけあれば最強無敵と言えるかな。」
「あぁ、そうだ!ゲームみたいにステータスを見られるようにしよう。最強無敵の名に恥じないようにステータスの上限突破マックスにしておいてあげるね。それから恩恵【クリネビタビー】はさっき与えた3つの技術を変化させることができる。使いようでは君の刃となるだろう。」
「ちょっとやりすぎかもしれないけど、これだけやればすぐ死なないでしょ。すぐ死んでしまったら乙ちゃんも悲しむからね。あっとそう言えば、乙ちゃんから伝言を預かっていたんだった。」
「君は紛れもない暗黒の魂の色、一つのみだ。意味はおいおい乙ちゃんから聞くといいよ。」
「魂の色ですか・・・。」
「まっ、今はわからなくてもいいさ。が、忘れてもいけないよ。」
「それから、僕からのプレゼントだ。気兼ねよく受け取るといい。」
アルバが指で上から下に下した後、上から棺桶が落ちてきた。それも5体も。
「これは?」
「召喚物さ。中身、気になるかい?」
「まぁ一応。」
「それじゃぁ紹介するね!」
また急にアルバの声色が地鳴りのような声に変わった。
「『復せよ』」
「『ミナカ』、『アシカビ』、『テンジョウ』、『コクジョウ』、『ブウン』」
「今からこの方がお前らの主だ。」
「こ、これは、人、ですか?」
またアルバの声が少年の声に戻った。
「そうとも言えるしそうじゃないとも言える。でも、君にとって助けになるのは間違いないよ。」
「まっ、召喚して使っているうちに分かるさ。」
「そうですか。」
「それから、乙ちゃんから聞いてると思うけど、見た目は前のまま・・・少し幼くなるかもね。中身は魔力やらなんやら耐えられるよう創り変えるから。」
「名前は前のままでもいいし、違う名前でもいい。どうする?変えるなら今だけど。」
「それじゃぁ、変えます。えっと・・・君がつけてもらっていいですか?」
「え!?僕がぁ?いいのかい?名前というのは何かと重要だよ。」
「構いません!」
「ふん。それじゃーねー。あの御方の名から少し捩って・・・オベリス!オべリスはどうだい?」
「うん。いいですね。」
「名前だけでいいのかい?」
「大丈夫です。」
「オーケー!!」
「名付け親が僕とはね!光栄だよ。」
「おっと、言い忘れた!転生後、いきなり魔王!っていうことじゃないからね。今いる魔王をぶっ殺して君が魔王になるんだよ。」
「僕が魔王を殺す!?そんなことって・・・できるんでしょうか・・・。」
「出来るも何もその力はさっきあげたじゃないかぁ!その力さえあれば世界を悪しき人間から守ることも世界を滅ぼすこともできる。君の使いようさぁ。」
「そんなことできるのかな、僕に・・・。」
「なんで今更ビビッてんのさぁー!君はもう死んでいるんだよ。君はこれから新しい人生を歩むんだぁ!しかも人間ならざる力を持ってね!楽しまなきゃぁ~損だよ。」
「まぁ確かに。それは一理あるかも・・・。あ、あの、一つ質問いいですか?」
「君も管理をしてる人なんですか?」
「あーうん、そうだけど、それが何か?」
「何を管理してるんです?それにこの空間は?なぜ柊さんは僕を選んだのでしょうか・・・。」
「管理しているもの、この空間のことはまだ言えない決まりなんだよ。それにいずれまたこっちに来るでしょ?乙ちゃんと契約したんだからさ!乙ちゃんが君を選んだ理由は・・・そうだな、それは彼女自身に聞いて見ないとわからないけど、強いて言うなら魂の色かな。君は他にない珍しい色をしているからね。僕も少し興味があるけど・・・怒られる怒られる!!でも、あの乙ちゃんが選んだんだ、君はかなり希少な存在だよ。誇ってもいい。」
「・・・・・。」
理解が追いついていけない。魂の色とはなんなんだ。なぜ、僕が希少なんだ。
いずれここに戻った時にそれが分かると言っても。今考えてもしょうがないということなのか。
「さてと。他にご注文はあるかな?」
「いえ、大丈夫です!」
「あとこれは僕たち管理者からのお願いなんだけど、聞いてくれるかな?」
「なんでしょう?」
「君の行く世界のどこかに、透明色の魂の左足が存在している。それは無数のお札と響羅の鎖と呪文を焚きつけている。それを探して君が帰ってくる時に、ここに持ってきてほしいんだ。大切なものなんだ、頼めるかな。」
「どこにあるか場所は分からないんです?」
「ごめん。それもわからないんだ。絶対その封印を解いたらダメだよ、君一瞬で無と化すから。」
「わ、わかりました。探してみます・・・。」
「ありがとう。苦労をかけるね。」
「オーケー!それじゃ、せいぜい死なないように頑張ってね、期待しているよ。」
「転生する世界の名前は、『フリネラアルペン』だ!それじゃ、またね!」
僕はだんだんと、眠るように気を失った。
お読みいただきありがとうございます。
もっと読んで見たいと思っていただけましたら、広告の下にある【☆☆☆☆☆】評価ボタンでお気軽に応援していただければ幸いです。
また、ブックマーク登録や感想も日々のモチベーションアップになります。
よろしくお願いいたします☁