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第二話 僕は、死んだ?


あぁ、やっと死ねた。

全てからの開放。

まさか心臓発作で死ねるとは。

なんだ、この感情、これは。


『喜びだ』


湧き上がるこの感情が僕の体を満たしてゆく。


あれ・・・でも、なぜだ。意識があるのは・・・。

まさか!?生まれ変わった!?

まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか・・・。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!?


あぁ、絶望だ。一気にその感情へと引き戻された。



「おい。」


声?


おい、と言われたような気がする。


「おいと言っている、そこの少年。」


僕は声のする方へゆっくりと顔を向けた。


そこには着物姿の肌の白いきれいな女性がいた。

だ、誰だこの人は。

こんな人は見たことがない。


それにしてもタバコの臭いがすごい。タバコ?じゃない。あれは煙管(きせる)か。

それになんだこの空間。座敷?にしては本がずらりと並んでいる。どこまでも果てしなく。


「気が付いたかえ。それでお主、記憶はあるかえ。」


「あ、あります。心臓発作?で死んだ、はず・・・。」


「ふん、覚えているようで、話しが早くて済む。」

「そう、お主は死んだ。体はな。」


「体は、ってどういう意味なんですか?」


「ん゛?そのままの意味や。」

「今のお主は体から抜けた魂よ。」

「自分の姿をよく見てみりゃれ。」


体みたいなのはあるが透けている。

これが魂?の状態ということか。


「僕は死んだのになぜ魂でここにいるんでしょう?」


「それはわちきが呼んだからじゃ。」

「そのままだとお主はまた、元いたあの世界に生まれ変わるじゃろうて。」

「それは、お主が望まん最悪の状態で、絶望的な結果じゃろう?」


「も、もちろんです!あんな世界、もう二度と戻りたくない。」


「と、思って呼んだのじゃ。感謝してもよいぞ。」


「ほんとに、ありがとうございます。」


「よしよし。素直でよい子じゃ。」


コンッ!!

煙管の叩く音が響いた。


「さて、ここからが本題じゃ。」

「お主、別の世界に転生したくはないかえ?」


「そんなことできるわけ・・・」


「できるから言っておるのだが。」

「それにお主は今、魂だと言ったであろう。」

「どこに転生させるかはわちきの匙加減じゃ。」


「その、あなたは何者なんですか?」


「一言で言うには難しい。が、あえて言うなら・・・お主らを管理する者よ。」


「管理?なぜです?」


理由(わけ)は話せぬ。そういう掟じゃからの。」

「それで、お主の回答は?」


転生だと・・・そんなアニメみたいなことが・・・。


「転生したいです。でも、また以前のような人生は嫌、です。」


「よしよし。それならどんな風に転生したいか、望みはあるかえ?」

「少しは聞いてやるぞ。」


「そうですね・・・。絶望も希望も与えられる人生、とかどうでしょう?」


「ほほう、おもしろい。ちっと待ちなんし。少し探してみよう。」


と言って、指を子招いた。すると、果てしない本棚の奥から1冊の本が飛び込んできて、その人の手にすっぽりとはまり、その本をパラパラとめくり始めた。


「ふん。これなんかどうじゃ。勇者になって世界を救う、なんて。ふふ。」


「それはちょっと・・・。そんな性格でもないし、勇者なんて正義を押し付けでしょう?」


「ふん。まぁそう言うと思ったわ。それじゃぁ・・・これはどうじゃ。国王になって全てを支配し世を動かす、というのは?」


「独裁政治は必ず破滅しますから、それもちょっと・・・。」


「まぁこれもそう言うと思ったわ。ふん、それじゃこれはどうじゃ。魔王、人間のみを滅ぼす、最強無敵の魔王、というのは?」


「魔王?ですか・・・。人間のみというのは他にも種族がいる、ということでしょうか?」


「ほう、鋭いの。さすがわちきの見込んだ者じゃ。」

「そうじゃ、人間以外にもおる。魔王がいるということは魔族もいる、そして獣人、小人・・・いやあれはドワーフとか言ったかの、それから天使や神といったものもおるぞ。」


「そんなに種族がいる中で人間のみを滅ぼす、というのは何か理由が?」


「またまた鋭いのう。転生後の世界の人間は特に残虐非道なのじゃ。勿論、人間の中には良い者もあるが、大半は善かれば殺しその繰り返しをしておるあほうな種族じゃ。」

「それはお主が元いた世界でも同じかろう?」


「そうですね。権力者というものは金と土地と名声しか考えていませんし、それが得られれば何でもする種族ですからね。」


「よく分かっておるの。もともと人間という種族はそういう者なんだが、この世界の人間は特に見るに堪えん。そこで人間のみを滅ぼす、というわけじゃ。まぁお主が気に入った人間なら活かしておいてもよいぞ。そこはお主の匙加減ってやつよ。」


「まぁ、それなら望んだ条件にも合う、それがいいかもしれませんね。」


「ふん。いいぞ。あぁ、そうそう。言い忘れておった。見た目は前のままじゃが最強無敵の魔王になるにはちと体を変える必要がある。見た目は少し変わるくらいだ、心配せんでよい。」


「わ、わかりました。」


「転生させる代わりと言ってはなんじゃが、お主が向こうの世界で死んだのち、わちきの元へ帰ってくるのじゃ。」


「なぜです?」


「それも言えぬ。」


「また掟ってやつですか・・・。まぁいいですよ。それくらいなら。」


「ふふ。契約成立じゃな。」


コッコンッ!!


「お主の背中にわちきの柊印を付けた。これで死んでも迷わずここに辿り着けるじゃろ。」

「ここまでで聞きたいことはあるかえ?」


「あの、まだ名前を聞いていないんですが。」


「あぁ~、そうじゃったの、わちきの名前は『(ひいらぎ) 乙星(おとぼし)』じゃ。」


「柊さんですか。僕の名前は。」


「そんなこと知っておるわ。『倉富二(くらふじ) 楷真(かいしん)』じゃろうて。」


「何で知って・・・」


「わちきが呼び出したんじゃ、知って当然であろう。」

「さてと、わちきの役目はここで終わりじゃ。」


コッコンッ!!


壁に突然、扉が現れた。


「あの扉にお進み。そこにおる者が案内してくれる。」


「わかりました。あの、お世話になりました。」


「ふん。また会おうて。ささ、はよ行くがよい。」


僕は扉へ向かった。


お読みいただきありがとうございます。


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