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絶望人生にさようなら、人間にして魔王に転ず。  作者: 御歳 逢生
第一章 フリネラアルペン
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第十四話 地下4階層 四季街


「これから行く階層はヤゴリ率いる雷狸族、ナコビ率いる狐火族、メザカモ率いる雹狼族が住みやすい居住区だ。みんな魔法陣へ。」


オべリスの指先が転移陣をなぞると、床がゆるやかに沈んだ。

足元に、転移の術式が静かに展開され、淡く揺らめいていた。

魔法陣の構図は螺旋状。中央に描かれた魔法陣が光を放つと、転移の術式が静かに展開され、重厚な床がまるで液体のようにうねり、淡い光に包まれ、彼らを包み込んだ。


転移の瞬間、視界が真っ白になり、そして風が季節をまたぐように吹き抜けた。

足元が重力を忘れたかのように浮遊し、景色が反転する。次の瞬間、彼らは広大な広場の中心に降り立っていた。天井は地上の大空の如く青く、(ほの)かな自然光を思わせる魔力があたりを照らしている。

彼らの前に現れたのは、四方に広がる異なる四季。


「ようこそ、地下4階層 四季街へ。」


オべリスが低く告げる。


「さて、君らの居住区へと案内しよう。今いる3種族が、それぞれ居心地の良いところに住むがいい。」


四方に伸びる大路はそれぞれ異なる色を纏っていた。



ー西の街 霧葉街(むようがい)


濃淡入り混じる霧が低くたなびき、しんと静まる苔むした街路。

黄金と深紅に染まる森に囲まれており、風が吹けば落葉が宙に舞う。


「ヤゴリ率いる雷狸族には、雷を溜め、空気を読む者が多い。強さと慎重さを兼ねるには、静けさのなかに揺らぎのある街がふさわしいと思った。」


「この霧は、雷を包み込むためのものですな。」


ヤゴリの目が街灯の微光を捉えると、オべリスは静かに頷いた。


「雷は暴れすぎる。その音をやわらげ、鋭さを磨くには、こうした湿りと静けさが必要でした!」


霧の立ちこめる広場には、稲妻の紋を象った石灯籠が並び、やわらかく雷光が脈打っていた。


ヤゴリは、葉に触れ、微かに鼻を鳴らす。


「わい、こんなに落ち着くところは故郷以来です!」



ー南の街 焔街(えんがい)


熱気が渦巻く焔街では、朱塗りの橋がいくつもかかり、青い火が提灯のように揺れていた。


「懐かしい。この焼けた空気。」


「ナコビ率いる狐火族の心は炎だと思った。燃え上がり、他を照らし、儚く揺れる。」


オべリスは街の中心にある焔の塔を指し示す。


「ここはお前たちの『誇りの炉』となるだろう。」


ナコビは塔に近づき、その足元に火の粉を撒いた。


「なかなか派手だが、うらはここ気に入った!」

ナコビの尾が軽く跳ねる。



ー北の街 氷月街(ひょうげつがい)


静寂の白が支配し、氷の柱が林立する白銀の街。凍てついた橋、結晶の彫刻、青白い月光が差す回廊。

夜には、街中にある氷晶が月光を反射し、街路はすべて青白い光に包まれている。


「メザカモ率いる雹狼族は、雪嵐の中を生きる者たちだろ。静寂と誓いを愛する者には、言葉なき街が似合う。」


声を潜めてオべリスが語ると、氷の道を踏む足音が澄んだ響きを残した。


メザカモは、無言のまま氷の階段を昇り、一度だけ振り返った。

その目に、わずかな安堵の色が宿っていた。


「この街は、魂の沈黙を保てる。冷たさは凍えるものではなく、心を沈めるための鎧だ。私たち雹狼族は、戦で吠えるだけの獣ではない。静かに、牙を研ぐのが流儀だ。この静けさは、かつての仲間を思い出すな。」


メザカモはかつての仲間に祈るかのように目をそっと閉じた。



「ゴホン!この街は、お前たちだけのためにあるわけではない。まだ発展途上だ。いずれは他の種族もここに住まうだろう。仲良くするんだぞ。」


俺に続いてルーデンが3人に告げた。


「3人とも、ここは牙を研ぐ場所でもある。生きることを思い出す場所だ。そして散らばった他の仲間も必ず探し、ここで一緒に暮せる。オべリス様、なんとお礼を言ってよいか。」


「いいよ。当然のことだよ。魔王たるもの、みんなの生活も守らなきゃね。」


ルーデンと3人の目がうるうるしている。


「3人は種族の仲間を連れてきて早速住んでいいよ。それじゃ、待ちに待ったルーデンの本拠地だ。」


お読みいただきありがとうございます。


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