099話 市場にてスリに遭う。
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どうぞ、よろしくお願いします。
「じゃあ、中には入らない方がいいね」
「そうね。別にどうしても入りたいって訳じゃないしね」
「そうですねっ。ここは早めに去ることにしましょうっ」
「そうじゃのう。我も別に聖堂の中まで見たいとは思わぬ。外側だけ見れば満足じゃ」
と、言うことで僕たちは大聖堂を去った。
そして街の繁華街の方へと向かった。
街はそろそろ店を開ける時間のようで道の両側に並んでいる店が戸を開け始めている。
それに従って街を行き来する人々の姿も多くなった。
店は肉屋、八百屋、雑貨屋、料理店、武具店、薬草屋など、この街で生活する人々に必要なものを商いしているものばかりだ。
フララランに聞いた話だと、この岩の上に造られた中心街に住めない貧しい人々は岩の中の住処で生活はしているけど、買い物などの用事があるとこの商店街にやって来るそうだ。
貧富の差は岩の上の日の当たる場所で暮らせるかどうかの違いで、下層の人たちの出入りを禁止しているのではないとのこと。
それからも僕たちは街を見物した。
そして奥まった別の通りでは朝市のような市場が開かれているのがわかった。木製の柱を立てて屋根を布で覆った簡単な造りの店が多く出店しているらしい。
行ってみるとこちらの方が賑わいが多い。
よくよく見てみるとそれもそのはずで、大通りの商店街よりもこちらの市場の方が品数も豊富で価格も安い。
なので大勢の人たちが集まっている訳だ。
「でも買い物をするのなら注意した方がいいわね」
「そうですねっ。こういう所の商品はピンからキリまであって、粗悪品や偽物も多いと思いますっ」
「安いのには訳があるからのう。買う側の目利きも求められるのう」
市場には安い食料品や中古の衣類、武具なども多く売られている。
食べ物には痛んだもの、衣類にはほつれ破れがあるもの、武具も壊れているものも混じって売られているようだ。
確かに買う側がちゃんと見極めてから買わないと損をする可能性があるね。
今、僕たちは謹慎中だ。
なので収入の目処がない。だけどタマユラが金剛石の原石を売ったお金をパーティ資金にしてくれたので、かなりの間、依頼が受けられなくても大丈夫だった。
そしてパーティ資金は僕が預かることになっている。
エリーゼとフララランが自分たちはお酒に酔っ払ってしまうことがあるから、心配であると意見を述べて、僕が預かることになっているのだ。
そしてその後、タマユラがパーティに加入したが自然にそのままの流れで僕が管理している。
そして普段、お金が入った巾着袋は魔法収納袋に入れている。
なので落としたり盗まれたりすることがないので安心である。
だけどなにかを買って支払うときは魔法収納袋から巾着袋を出さなければならない。
そして、それもそんなときだった。
「薬屋ね」
「ポーションがありますねっ。色からして混ぜものがない良質なものに見えますっ」
「そうじゃのう。値段はあまり安くはないが効果を考えるとまずまずの値段じゃのう」
一軒の露天商。
地面に広げた布にガラス瓶に入れられたポーション類を並べているお店があった。
店主は気難しそうな顔をした初老の人族男性。
重々しそうな雰囲気で買う気がないなら買わないで結構、って感じだった。
「……これ悪くないわね」
ポーションのひとつを手にしたエリーゼがそう言う。
「そうですねっ。鮮度もまずまずですっ」
「粗悪な感じはしないのう」
エリーゼ、フラララン、タマユラが客の特権とばかりにはっきりと物言いをする。
すると店主の男性がジロリと3人を見る。
「混ぜもんなぞしとらんぞ。買う気がないならとっとと行ってくれ」
見た目通りの店主の反応だった。
客に愛想など振りまくつもりはさらさらないようだ。
だけどその態度にはプライドを感じさせるものがあり、商品の品質を保証しているようにも思える。
「せっかくだから買おうかしら?」
「そうですねっ。マキラがかなりポーションを持っていますけど消耗品ですからねっ」
「ある程度予備があれば安心じゃしのう」
そう言ってエリーゼたちはどれを買おうか品定めを始める。
そして支払いの準備として僕は巾着袋を取り出した。
「おっとごめんよ」
突然どすんと衝撃が来た。
僕は思わずたたらを踏む。見ると背の低い男性が僕にぶつかったので謝ったところだった。その男は両耳の形と尻尾から鼠の獣人のようだ。
そして鼠獣人は去って行く。
その姿はあっと言う間に人混みに紛れて見えなくなってしまった。
「……ちょっとマキラ! 巾着袋!」
「ああっ……!」
エリーゼに指摘されて気がついた。
僕の手は空だったのだ。
「スリですねっ。さっきの鼠獣人が犯人ですっ」
「そうじゃのう。わざとぶつかってスリ盗ったのじゃろう」
大変だ。
あの巾着袋にはパーティ資金の全額が入っているのだ。
依頼で稼いだお金もタマユラが売った金剛石の原石のお金もすべて入っていたのだ。
「捕まえなきゃ! あれがないと今夜泊まることもできないよ!」
僕は慌てた。
するとその事態が伝わったようでエリーゼの顔が青くなる。
「まだ追いつけるかも知れないわ」
「買い物どころじゃなくなってしまったのう」
そう言って僕とエリーゼ、タマユラが走り出そうとした。
そのときだった。
「待って下さいっ。大丈夫ですっ」
駆け出そうとした僕たちの服の裾を掴み、フララランがそう言ったのだ。
その声はなぜか落ち着いていて表情も穏やかなのだった。
お金をすられたのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




