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090話 シローヌの確保。

【基本一日置きで夜の18時に更新します】

どうぞ、よろしくお願いします。


そう言って主様がエリーゼに用紙を返してきた。

そして記載された内容を確認しようとしたエリーゼはツバルさんを呼んだ。

やはり商人であるツバルさんの方がこういう契約に関することは慣れているだろうからと思った。

そしてなんだけど、2人の次第に表情が変わってくる。明らかに緊張しているのだ。

そしてエリーゼとツバルさんは互いに顔を見合わせて、片膝を地面に着き頭を垂れるのであった。




僕はなにが起こったのかわからない。だけどエリーゼとツバルさんの行動を見て、あ、これ、僕も同じことをしなきゃ駄目ってやつだとわかる。

なので、僕もエリーゼとツバルさんの格好を見様見真似でする。見るとフララランとタマユラも僕と同じ考えに至ったようで同じ様に片膝を着いているのであった。




「依頼、確かにお引き受けいたしました。……ザボルーグ女伯爵閣下」




エリーゼが厳かにそう告げた。

僕は……。思わず絶句してしまう。

確かに身分が高い人だとは思っていたが、お貴族様だったとは……。

しかも伯爵ってことは高位貴族だ。それに女伯爵ということはこの主様自身が当主なのだ。伯爵夫人ではなく伯爵そのもの……。




見るとエリーゼとツバルさんは身じろぎひとつもしない。ずっと片膝を着いたままである。そしてフララランもそうだった。世離れしているように思えるフララランだが、さすがは長生きしているだけあってこういうことがわかっているようだ。




一方、タマユラは微妙だった。

仲間たちがそうしているから自分もやっている感がある。

異世界から来たのでこういう貴族制度がしっかりとは理解していないのだろうね。

だけと空気を読んで付き合ってくれているだけありがたい。

お貴族様に不敬を働けば首が危ない。文字通りに、物理的に……。

今までは主様も名乗っていなかったので多少の無礼は許してくれそうだけど、こうして公式な文書で身分を明らかにされたら、もう言い訳はできない。

僕たち平民はただただ頭を下げるのみだ。




「では、頼みます」




主様。――ザボルーグ女伯爵閣下はそうひとこと口にされるのであった。




 ■




「結局、依頼料金はいくらだったのですかっ?」




また訊きにくいことをずけずけと。

フララランは相変わらずだった。

それに対してエリーゼが重々しく説明した。




「……金貨10枚よ」




えっ……!

僕は心底驚いた。猫を助けるだけで金貨10枚だって!

確かに緊急指名依頼は高額になる。だけどそれにしたって金貨10枚は半端じゃない。

僕がイチバーンメの街で請け負ったペット探しは銀貨5枚で、それでも高収入の依頼だったのだし。




それから僕たちは問題の樹木の元に向かっていた。

近づいて改めて見ると、その木は本当に細かった。

少し手で押しただけで木の全体がぐらぐら揺れそうなほどで直径は両手で足りそうなほどの細さだ。




「いるわね」




「いるね」




エリーゼが樹上を見上げてそう言うので僕は返事する。

遥か上、高さは10メートル以上もの細い枝先に猫のシローヌがひっしと枝にしがみついている。

遠くてその表情は窺えないがたぶん必死なのだろう。興味本位で登ったはいいものの高すぎて飛び降りることもできない。そして揺れる枝先からいつ落ちてしまうかわからないので後退することもできないのだろう。




「待っててくださいねっ」




フララランが口の中でなにやらぶつぶつ呟く。

おそらく魔法を唱えているんだろう。

そして唱え終わったフララランは杖を頭上に掲げた。

だが、……なにも起きない。




「……もうちょっと待ってくださいねっ」




居合わせた主様、シャルロットお嬢様、騎士やメイドさんたちは拍子抜けの態度だ。

魔法を唱え終わったのになにも起こらないことに疑問を感じたようだ。

これは、ある程度だがフララランが悪い。

彼女の魔法は予約魔法なのだ。唱えてすぐに発動する魔法じゃないのだ。

そのことの説明をせずにただ待っていろと言われても事情を知らない者たちからすれば、騙されているんじゃないかと思われても仕方ない。

その証拠に……。




「おい。そこのエルフ。なにも起こらないではないか」




「そうですよ。……まさか主様を騙しているのではないですよね?」




早速、騎士とメイドさんから疑いの声が出た。

もちろんあの態度の悪い騎士と目つきの悪いメイドさんだ。

だが、主様は泰然としている。

フララランの様子から、騙している感じがないからだろう。




「お待たせしましたっ」




フララランがそう告げたのは魔法を唱えてから2分くらい経過したときだった。

地面から太い根っこが大蛇のようにウネウネと飛び出して、ぐんぐん頭上へと伸びだしたからだ。

そして猫のシローヌのすぐ真下まで木の根は伸びて行き、そこで先端がぐるぐるととぐろを巻いて平たい大きなお盆のような形状になったのだ。

面積も十分でシローヌなら5匹くらい乗っても大丈夫な広さになっている。




「さあ、シローヌちゃんっ。それに乗ってくださいっ」




ところがだ。

しがみついている細枝のすぐ真下、わずか30センチくらいの位置に木の根のお盆があるにも関わらず、シローヌは動かない。

と、言うよりも腰が抜けてしまって動けないようだ。




「困りましたっ。下手に枝に接触させるとシローヌちゃんが落ちちゃうかもしれないので、これ以上、接近させるのは難しいのですっ」




どうやらこれ以上、お盆を寄せるのは危険なようだ。




「マキラ。できる?」




エリーゼが僕に問いかけてきた。

僕は頷く。




――転倒。




魔法が発動し、シローヌとしがみついている細枝の間に魔法陣が白く浮かび上がる。




――ツルリン。




シローヌが転けた。そして枝から落下してフララランが作った木の根のお盆に乗っかったのだった。

そしてそのシローヌだが、無事を実感できたのか、ニャーンとのんびりと一鳴きするのであった。




「ああ。良かったぁ」




シャルロットお嬢様は心底ホッとした声でそう叫んだ。

そしてフララランがウネウネの木の根を地面まで戻し、無事にシローヌはお嬢様に回収されるのであった。



シローヌを無事に捕まえたのです。(`・ω・´)∩


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「いらぬ神にたたりなし」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。


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