086話 野営地でのトラブル。
【基本一日置きで夜の18時に更新します】
どうぞ、よろしくお願いします。
「そんなにおいしいのですかっ?」
「ええ。香りもいいし味も喉越しも最高だったわ」
「お陰様で評判のようです。なのでこうして私が運んでいる訳ですし」
フララランは興味津々のようだ。間違いなく飲んでみたいのだろう。
そしてその二人の様子にツバルさんが笑顔で答えている。
こうして旅は続き、日が傾き始めた頃、街道の脇に設けられている野営場に到着したのであった。
野営場はどこも同じようで草が刈られた平らな場所だ。
馬車が何台も停車できるだけの広さがある。
そしてここは井戸があった。
水の確保は旅人にとって死活問題なので、これはありがたい。
野営場にはまだ誰の姿のないことから、僕たちは井戸に近い場所で荷馬車を停めて野営の準備を始めた。
魔法収納袋から天幕やら毛布やら薪やらを取り出した。
そして設置を終えるとすぐに焚き火を熾し料理を始めた頃だった。
馬のいななきと蹄と馬車の車輪の音がしたのだ。
見ると3台の馬車と護衛の騎士たちの集団が野営場に到着したところだった。
3台の馬車の2台は地味な作りのものだったが中央の1台は装飾が華美にされた豪華なものだった。
騎士はすべて馬に乗っていて、その数は10騎。
「なにかしら? 身分のある人の馬車に見えるわね」
「そうですねっ。たぶん真ん中の馬車が偉い人が乗っていて、残りの地味な馬車は護衛や使用人が乗っているんだと思いますっ」
「馬上の護衛も多いのう。鎧も立派なもののようじゃから、さぞ身分のある方の一行かのう」
そうだった。
どう見ても僕たち冒険者のような平民とは身分が異なる富貴な一行の到着だった。
そして護衛の1騎が隊列からするりと抜けるとそのまま僕たちの方へとやって来たのだ。その護衛の騎士は馬から降りることなく馬上から僕たちに向かって声をかけてきた。
「その方ら、冒険者だな。その場所を明け渡し即刻移動しろ」
突然の上から目線での命令だ。
僕はその意味は理解したが、その真意がわからずぽかんとしてしまう。
野営場はかなり広いのだ。
僕たちが気に入らないのなら、自分たちが離れた場所で野営すればいいだけだろう。
「井戸のことでしょうか? 井戸ならあちらの方にも設置されています。私たちはすでに設営を終えて火まで熾した状態ですので移動には時間がかかってしまいますよ」
エリーゼがリーダーらしく毅然とした態度でそう反論した。
すると騎士は憎々しげにエリーゼを睨む。
「口答えするな。我らをどなたの一行と心得ている?」
「わかりませんっ。初めて会ったのにわかるはずないと思いますっ」
「そうじゃのう。まずそちらから名乗るのが礼儀じゃのう」
フララランもタマユラも騎士の態度に動じていない。まったく平気な顔で言い返している。僕はと言えば正直、騎士が怖いと感じてしまったのでなにも言えずにいた。
そんなときだった。
「おい。あちらにも井戸があった。面倒事は起こすな。余計な手間になる」
いつの間にかもう1騎の騎士が馬で近寄ってきて、睨んでいる騎士にそう告げたのだ。
どうやら僕たちに移動を命じた騎士よりも立場が上の騎士だったようで、睨んでいた騎士はフンッと不満そうな声を漏らしながらも馬頭を巡らし上司の騎士と引き返して行くのであった。
そして高貴そうな馬車の隊列は僕たちの場所より離れた所に野営を始めるのがわかった。そこが別の井戸がある場所なのだろう。
「なんなんだろうね?」
僕は不平を漏らすかのように誰となく尋ねる。
「自分たちの方が身分が上だから、ここを譲れってことでしょ? 井戸が他にもあることを知らなかったんだろうけど……。どっちにしても嫌な話ね」
「迷惑ですよねっ。例えそうだったとしても言い方ってあると思いますっ。譲って欲しければお願いすべきですっ」
「そうじゃのう。上役の方はましじゃが我らに命令した騎士はクズじゃのう」
エリーゼ、フラララン、タマユラの女性3人は辛辣な感想だった。
まあ、僕もそう感じたけどね。
見るとそのお偉いさん一行は設営を終えたようで焚き火が各所で熾されていて天幕も数えると7つも設営されていた。
しかも家紋が入った豪華な作りのものだった。
見張りの護衛は天幕を背に武器を持って立っていて、使用人のメイドたちが料理など様々なものを運んでいるのも見えた。
総勢30人近くはいるだろう。
そして僕たちは向こうにはお構いなく食事を済ませ、寝る前の談笑を火を囲んで始めていたのであった。
そんなときだった。
――ニャー。
突然の鳴き声だった。
見ると真っ白で妙に体毛が長い猫が僕たちのそばに来ていた。
可愛らしい顔つきの猫でのんびりとした雰囲気だ。
こんな呑気そうな猫で獲物を捕らえて生きる野生の暮らしなんてできるんだろうか。
「見たこともない猫だね」
僕がそう言う。
きれいな毛並みでフワフワな猫だ。
もしかしたら、ここらで暮らしている野良の猫じゃないのかもしれない。
「珍しい猫ね。どこから来たのかしら?」
「あっちのお偉いさんの方からじゃないですかっ。お偉いさんが飼っているとかじゃないですかっ」
「だとすると面倒じゃのう。こちらから届けるのは嫌じゃのう」
「これは高価な猫です。よほどの身分でないと手に入れられないでしょう。下手に触らない方が無難です」
僕たちとツバルさんはこの猫の扱いに困った。
追い払う訳にはいかないし、かと言ってこちらから届けるのはなにか面倒事になりそうだ。相手は偉い人なのだろうから礼儀作法とか必要だろうし。
そんなときだった。
「ああっ。ここに居たぁ!」
なんか関わりたくない連中が来たのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




