081話 妖狐の正体。
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どうぞ、よろしくお願いします。
「勝負あったようね」
そう発言したエリーゼが一歩一歩、妖狐へと近づいて行く。
その手にはもちろん短剣が握られている。
あのブルーオーガの女戦士であるミサイアからもらったミスリル合金製の切れ味抜群の短剣だ。
妖狐がそれをじっと見つめるのがわかった。
そんなときだった。
「待ってぇ~! 殺しちゃダメ~!」
「これはお芝居なの~。悪い人じゃないの~」
「お願い~っ! 止めて~っ!」
大木の幹にグルグル巻きにされている狼獣人の少女たちが一斉に叫んだのだ。
それも全員、妖狐の命乞いをするものだったのだ。
「……ど、どういうこと?」
それを見たエリーゼが足を止めて少女たちを見る。
「ええとっ。意味がわかりませんっ。あの女の子たちは囚われているんじゃないんですかっ」
フララランも困惑している。
すると次の瞬間、狼獣人の少女3人はスルスルと自らロープを外し、妖狐に向かって走りだした。どうやら縛られている訳ではなかったようだ。
そして妖狐の元に到着すると両手を広げてこちらを向いた。
そう、まるで妖狐を守るように。
「えっと。どういう状態?」
「わかりませんっ。なんか私たちが悪者みたいな状態になっているのだと思いますっ」
そうなのだ。
これでは僕たちが妖狐を虐めていて、それを少女たちが守ろうとしている図式になってしまっているのだ。
「タマユラ様を傷つけないで」
「タマユラ様は私たちの命の恩人なんです」
「タマユラ様は私たちを守ってくれているんです」
驚いた。驚愕だ。
僕とエリーゼ、フララランはお互いに顔を見合わせた。
だけど誰一人事情がわかっておらず、キョトンと見つめ合うばかりだ。
「……タ、タマユラ様って……」
エリーゼがおずおずと少女たちに尋ねる。
すると狼獣人の少女たちは目に涙をいっぱい貯めたまま背後を指差す。
そこには9本の尻尾を持つ大きなキツネがいるだけだ。
「驚きですっ。まさかのまさかなのですっ。その妖狐がタマユラさんなんですかっ。だとしたらどうして私たちに討伐を依頼したのかわかりませんっ」
そうなのだ。
僕たちに妖狐討伐を依頼したのがタマユラ自身なのだ。
そしてその妖狐の正体がタマユラ……?
いったいなんの冗談なのか、正直わからない。
すると動きがあった。
直立したままだった妖狐がゆっくりと歩き出し、少女たちの肩に手を乗せた。
「……悪かったのう。少々試しておったのじゃ」
そう口にした。
するとフワッと妖狐を白い煙が包んだ。
そして煙が晴れると着物姿のタマユラが立っていたのであった。
■
その後、僕たちはタマユラの屋敷の中にいた。
そこにはタマユラはもちろんユミア、シリス、アンシュと名乗った狼獣人の少女3人もいる。
場所は食事を取った大広間。
「妖狐に生贄のために攫われたっていうのが嘘?」
エリーゼの確認のための問いにタマユラとユミアたちは大きく頷いた。
そして説明される。
ユミア、シリス、アンシュの3人がサンバーンメの街の違法奴隷商人たちから、この地に逃げてきたのは本当で、野営中の監視が薄くなったときに偶然に破損していた荷馬車の檻の一部をこじ開けて脱出し、森の中へと姿を隠したと説明された。
たぶん必死だからだったからだろうけど、幼い少女たちの勇気と行動力に僕は感心してしまった。
そしてだが、そんなユミアたちを保護したタマユラなのだが、この土地に馴染みがない。それもそのはずでどこか遠くから旅してこの地に一時滞在していた身らしい。
そしてタマユラは考えた。
いつまでもこの霧の集落にユミアたちを匿って暮らすことはできない。できれば同胞の住む里へ返してやりたいと。
だが、タマユラはその場所を知らない。
なので実力ある冒険者たちがこの地を訪れるのを待って、その者たちに送ってもらおうと思案したらしいのだ。
そして僕たち『ひとつの足跡』が訪れた。
見るからに実力がありそうで、しかも狼獣人がリーダーを務めていることからユミアたちの同胞が住む里も知っているだろう。
なので戦って腕試しをして送り届ける実力があるかどうかを確かめたと言うことだった。
「じゃあ、私たちは適任だったんですねっ。それに狼獣人の里の場所は知ってますしねっ」
「でも、この子たちは私の里の住民じゃないわよ。確かに同胞ではあるけれど……」
そうらしい。
確かにエリーゼのやり取りを見て、ユミア、シリス、アンシュたちが顔見知りじゃないのはわかっていた。
「そうね。でも里に連れて行きましょう。あとは伯父上がなんとかしてくれるわ」
「じゃあ、決まりですねっ。ユミアちゃん、シリスちゃん、アンシュちゃんはこの近くの狼獣人の里に行きましょうっ。それでタマユラさんはどうするのですかっ? まだこの土地に住み続ける必要はあるんですかっ? もし必要がないなら私たちといっしょに行きませんかっ?」
遠慮も思慮もないフララランだった。
言われたタマユラはキョトンとして考え込んでいる。
「我は……。まあ、どうでもいいのじゃがお主らに迷惑はかからんかのう?」
「私たちなら構いませんよ。マキラはどう?」
「なにも問題はないよ」
僕はそう言って頷いた。
そうなのだ。
バーティメンバーはもっといても構わない。
それがタマユラのように強力なメンバーなら大歓迎だ。
「なら、儂も着いていくかのう」
こうして僕たちの『ひとつの足跡』にメンバーが増えたのだった。
幻術使いの妖狐のタマユラ。
頼りがいのあるメンバーだった。
妖狐の正体はタマユラだったのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




