075話 不思議な集落の話。
【基本一日置きで夜の18時に更新します】
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「昨日のことだ。……この街道を歩いていると最初は天気が良かったんだが、いつのまにかいきなり霧に包まれてな。……それも普通の霧じゃない。濃霧も濃霧。一寸先もまともに見えないほどの真っ白な霧だったんだ」
「近くに大きな川とか森とかがあったんですか?」
エリーゼがそう尋ねる。
確かに大きな川や森の中では霧が発生しやすい。
するとバルクさんは首を左右に振る。
「いや。平原の真っ只中だ。道の両脇には背の低い草原が広がっているだけの土地だ。だから風通しもいいはずなのにいきなりの濃霧だ」
バルクさんたち『野獣の絶叫』一同は当然歩きを止めて様子を見たらしい。
視界が効かないことから互いに離れることをせず、街道脇に集まって霧は晴れるのを待ったそうだ。
「……だが、一向に霧が晴れる気配がない。だけどしばらく待っているとなにかが見えてきたんだ」
「なにかって、なんですか?」
僕は気になったので尋ねた。
するとこの時初めてバルクさんは僕たち3人の顔を見上げてきた。
そして、人族と獣人族とエルフの組み合わせなんて珍しいな……、と呟きながらも話を再開してくれた。
「……集落が見えてきたんだ」
「集落ですかっ。霧の中にですかっ?」
「ああ。……霧はだんだん薄くなってきたんだ。だから集落が見えた」
集落に建つ家々は粗末な木造の小屋と言って差し支えないものだったと言う。
だけど手入れはちゃんとされていて廃村のような雰囲気はなかったらしい。
しかしこの辺りでは見かけない造りの家屋だったそうだ。
「そして人たちがいた。俺たちを見ても不思議そうに思わない様子だったが、俺たちには不思議だった。見たこともない服装だったんだ。大きな布を前で左右に合わせて腰のところを幅広い紐で縛った服でサンダルに似たものを履いていた……」
「異国風ですねっ。でもどこの国の服装でしょうかっ」
「わからない……。だから俺たちは集落を歩いた。なにかわかるかも知れないかとも思ったし、そこから抜け出せる道があるんじゃないかとも思ったからだ」
バルクさんたちは集落をどんどん進んだらしい。
そしてしばらく歩くと奥に大きな屋敷が見えたと言うのだ。
黒い瓦の立派な屋敷だけど、やはりこの辺りでは見たこともない建築様式だったようだ。
「そこの門のところに少女がひとり立っていて、俺たちを手招きしてるんだ。年の頃は成人になったかどうかの若い女だ。
長い黒髪で服装は集落の人たちと似ている腰のところで幅広い紐で縛っている服だ。
そして雰囲気がなんて言うか、妖艶なんだ。若い女性なのに色気がありやがった」
そしてパーティで相談した結果、バルクさんたちは手招きしている女性に着いて行くことになった。
そして案内されるがまま屋敷に入った。
「そこでだが、入口でブーツを脱ぐように言われた。靴のままでは入れないと言われたんだ」
なんとも不思議な話だ。
ベッドで寝るとき以外、家の中でも室内履きに履き替えることはあっても靴自体を脱ぐとは面白い習慣だと思った。
「そして広い食堂のような部屋に案内された。そこには見たこともない料理と酒が並んでいて俺たちをもてなしてくれたんだ」
料理も酒もどれも美味かったとのことだ。
そして時は進み、酔いも回ったところで寝室に案内された。
ところが寝室にも驚きがあったそうだ。
そこにはベッドがひとつもなく草で編んだ床の上に人数分の布団が直接敷かれていたとのことだ。すでに酔っていることで怪しむこともなくバルクさんたちは用意された布団で全員寝たらしい。
「……で、気がついたら俺たち全員がこの街道に立っていた」
「寝ている間に運ばれたんでしょうかっ?」
「わからん。とにかく振り向いてもあの集落はなかった。そして霧もだ」
一同が気がついたのはほんの数時間前らしい。
それでとにかくニバーンメの街に向うためにこの野営地に立ち寄っていたとの話で不思議な体験の説明は終わったのだった。
「不思議な話ですね。全員が全員同じ夢見ていたとは考えにくいですし……」
エリーゼがそう言うと『野獣の絶叫』の面々が頷く。
「そうだ。……お前たちもサンバーンメに向うなら、この街道の先を進むはずだ。万が一霧に出会ったら気をつけろよ」
バルクさんは本当に心配そうな顔になり僕たちに告げるのであった。
■
野営地で一泊した。
魔法収納袋から3人で泊まれる天幕を出して中で毛布に包まる。
もちろん見張りを置く。
僕とエリーゼ、フララランの3人で交代してながら火の番をしながら警戒を怠らず一晩を明かすのであった。
朝、明るくなるとバルクさんたち『野獣の絶叫』一行はニバーンメに向けて去って行った。去り際にもう一度、霧には注意しろと告げられて。
そして僕たちはサンバーンメに向けて歩き出した。
「でもホントだったのかしら? あの霧の中の集落の話」
「どうだろう? でも嘘を言っている様子はなかったよ」
「そうですねっ。長く生きている私でも聞いたことのない話ですっ。でも命の危険はなかったようなので、私としてはその集落に行ってみたいですねっ」
フララランは好奇心旺盛な性格だ。
なのでバルクさんたちが迷い込んだ霧の集落にどうしても行ってみたい様子だった。
それから僕たちはしばらく歩いた。
そして昼休憩を取り、再び街道を歩き始めた頃だった。
霧の中の不思議な集落の話なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




