070話 予約魔法。
【基本一日置きで夜の18時に更新します】
どうぞ、よろしくお願いします。
「どうやら休憩しているみたいだね」
「そうね。まずはこのまま観察しましょう」
「……やっぱり魔法使いは精神攻撃系のようですねっ。あの女の子たちは今は眠らされている様子ですっ」
やはりフララランが言うようにラシンは睡眠などの魔法を得意とするようだ。
確かに起きたまま背負子に縛り付けても騒ぐ藻掻く、隙あらば逃走を狙うだろう。
なので眠らせて大人しくさせているのは容易に想像がつく。
「このまま奇襲ってのは無理だよね?」
「そうね。警戒しているし、第一あの位置じゃサイラとミーラは完全に人質よ」
「そうですねっ。ラルゴって男は剣を抜いているしっ、背負子の大男はすぐに腰のナイフを抜ける姿勢ですっ」
サイラとミーラは人質である前に大切な商品だ。
あえて傷つけることはしないだろうけど、自分たちが倒されそうになったり捕獲されそうになったら躊躇なく人質として利用するだろうしね。
「もう少し機会を伺いましょう。きっといいチャンスは来るわ」
「あ、たぶんですけど、あのまま徒歩でまるまる2日かけてサンバーンメに行くとは思えませんっ。きっと森の外に馬車を隠していると思いますっ」
「そうね、馬車の可能性は確かに高いわね。でも馬車を放置してこの森の中に長時間踏み入れるなんてことはないから……」
「仲間が待ってるかも、ってこと? それ合流されると敵の数が増えてマズイんじゃない?」
そうなのだ。
今でさえ人数比は向こうが4人、こっちは3人なのだ。
相手が合流してしまうとこちらが不利になるんじゃないか……?
「そうとも言えませんっ。私たちなら相手が数人増えようと負けることはないですっ。それよりも重要なことはサイラちゃんとミーラちゃんが敵に密着させられていることなのですっ」
「そうね。まずはあの背負子から離れた状態にさせないと、とっさのときに刃物を押し付けられて人質にされてしまうわ」
「そうですっ。だからいっそ馬車に乗せられて敵から距離を取れたときの方が救いやすいのですっ」
なるほど。
敵は馬車を用意しているってことは、荷台に縛って乗せるか檻に入れるかするだろう。そうするとラルゴたちから距離が取れる。
そうすればこちらとしては攻撃はしやすい。確かに。
それからも観察は続いた。
やがてラルゴたちは休憩を終えたようで全員で森の外に向い始めた。
陣形は追手を警戒しているようで先頭は魔法使いのラシン、そして背負子のハメン、ヘメン。殿には剣を抜いて警戒しているラルゴというものだった。
僕たち3人は距離を一定に開けたまま追跡を続ける。
多少距離が開くときもあったけど、こちらにはエリーゼの気配察知があるので問題ない。そしてそんなときだった。
「あ、そうですっ。戦闘に入る前にお互いの能力を教え合いたいと思いますっ。私は見ての通り魔法使いです。なので近距離戦闘は不向きですっ。そして私の得意魔法は『予約魔法』ですっ」
「予約……魔法……ってなんです?」
初めて聞く魔法だ。
火魔法、雷魔法、風魔法、氷魔法とかなら有名だけど予約の魔法なんて聞いたことがない。
「私も聞いたことがないわ。どんな魔法なのかしら?」
「よくぞ聞いてくれましたっ。私の魔法は発動時刻と範囲を予約して発動させる魔法なのです。例えば1分後に……。あの枝にしましょうっ。あの巨大な木の横に伸びた太い枝を凍らせますっ。見ててくださいっ」
フララランはそう言って僕たちの後方にある大きな樹木の太い枝を指さした。
その枝は人の胴体くらいもある太さであれを凍らせると言ったけどなんだか疑わしい。
そんなことを思ってエリーゼを見ると、ちょっと眉をしかめている。たぶん僕と同じ考えなんだろうなと言うことがわかる。
そして1分後になった。
するとその枝がいきなりなんの前触れもなくピシリピシリと音を放ち、カチカチに凍りついたのだ。
枝の端から先端まで葉っぱも含めてあっという間に完全に凍りついてしまった。
季節外れの部分的樹氷の完成だった。
「……ええっ」
「……これはすごいわね。正直驚いたわ」
エリーゼの言葉じゃないけど、これには心底驚いた。
さすがSランク冒険者だ。
「魔法の属性はだいたいなんでも使えますっ。そして発動までの時間が長くすれば長くするほど威力は増しますっ。ただ欠点がありますっ」
「……欠点? なんです?」
「私は瞬間的には魔法は使えないのですっ。あくまで予約魔法なので最低でも1分間は待つ必要があるんですっ」
なるほど。
なんでもかんでも万能って訳じゃないんだな。
「あ。だから温泉で湯気が覆われるを1分後って言ったのか……」
そうなのだ。
あのときフララランは1分待てと言ったのだ。
それはつまり予約魔法を発動させるまでの時間を指定していたのだ。
僕はそれを理解した。見るとエリーゼも納得顔だった。
それからエリーゼと僕も自分たちの能力を紹介した。
エリーゼは斥候職で気配察知と罠感知、そして身が軽く短剣を得意としていること。
そして僕はもちろん転倒魔法しか使えないことだ。
「……転倒魔法ですかっ? それはどんな魔法なんでしょうかっ? 危険はあるんですかっ?」
「特にかけられた相手を危険にするものじゃないよ。えと試してみる?」
するとフララランはニッコリ笑顔になる。
「ホントですかっ? じゃあ私に使ってくださいっ」
魔法を予約するのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




