067話 Sランク冒険者。
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「……知らない人族のおじさんたちだった」
「人数は何人いたの?」
エリーゼがそう尋ねると、ウリンは指を4本立てて示した。
そしてその後、意外なことがわかってくる。
4人はすべて男。
ひとりは片手剣。
ひとりは魔法使い。
残りのふたりは大男で背中に背負子を背負っていたことが告げられたのだ。
そして男たちは狼獣人の8歳の少女であるサイラとミーラを捕まえた。ウリンはその事実を里に告げようと必死で逃げたらしいのだ。
……ま、まさか……。
僕の額に冷たい汗が流れた。
エリーゼを見ると両目を瞑って難しい顔をしていた。
「ねえ、マキラ。それって……、ラルゴたちよね?」
よく通る冷えた声だった。
エリーゼはもはや確信しているんだろう。ラルゴさんからさん付けが取れて呼び捨てにしていることでそれがわかる。
「残念だけど、その通りだと思う」
エリーゼは里長や集まったこの里の主だった連中に説明した。
ここに来る道中で出会った行商人を名乗っていた一味が今回の誘拐犯だと思われること。ここである事実が判明する。
世間一般では獣人の少女は見目麗しいことから愛玩奴隷として違法取引されていることを説明されたのだ。
……考えてみればおかしな点があった。
ラルゴたちは行商人なのに里に挨拶もせずに去ったことだ。
次回からの取引を考えれば顔と名前だけでも憶えてもらうのが当然な気がする。
それにやはり行商なのに手ぶらなのも今から思えば気になる。
以前、エリーゼから聞いたのだけど、商人は魔法収納袋の使用が認められていない。
手ぶらで大量の荷物が運べるのだから商人こそ魔法収納袋が欲しがるのではないかと尋ねたのだが、脱税、密輸の原因に繋がることから商人は魔法収納袋の所持使用が固く禁じられているらしい。
ちなみに魔法収納袋を持っている冒険者が商人を手伝って商品を収納して運んだ場合は重罪に問われるそうだ。
そのことを考えるとやはり手ぶらの行商人と言うのはおかしい。
彼らが野営の荷物を持っていなかった時点で商人ではないと判断すべきだったのだ。
だが僕は気が付かなかった。そしてたぶんエリーゼも。
つまりは人当たりの良いラルゴに騙されてしまったのだ。
「大男が背負子を背負っていたことは最初から少女誘拐を企んでいた可能性がありますねっ。それにその魔法使いは精神攻撃系の魔法使いかも知れませんっ」
僕とエリーゼの後ろにいたフララランさんがそう発言した。
「精神攻撃系ってなんですか……?」
「催眠とか暗示とか相手の心の意思を奪う魔法のことですっ。その魔法を使えば少女たちに暴れられたり逃げられたりすることが防げますっ。……つまり最初からこの里には狼獣人の少女を攫う目的で近づいた可能性が高いですっ」
「……なんてことだ」
里長さんが苦々しげな顔になった。
行商人が来るとのことで喜んでいたのに、その相手が実は犯罪者だったのだ。
落胆とか怒りとかを感じているんだろう。
それからこれからのことが話し合われた。
まずサイラとミーラが森の中で道に迷っている訳じゃないことから里中の大人たちによる捜索隊出発は中止となった。
相手は特定できたのだ。里中の大人たちの仕事の手を止めてまで行う作業じゃない。
誰かが追跡して事件を解決すればすべてが上手く収まる。
そして問題は誰がサイラとミーラを救出するのか、だ。
「私たちが行きます」
エリーゼが立候補した。
伯父さんでもある里長は強い視線を向けた。
「危険だぞ」
「当然です。ですが私たちは冒険者です。それが仕事なのです」
そう言ってエリーゼは僕を見た。
僕はエリーゼを見てまっすぐ頷いた。もちろん僕もそのつもりだ。
騙されただけに仕返ししてやりたい気持ちも強いのだ。
「ただひとつお願いがあります。今からテプ村の冒険者組合出張所に里の誰かを派遣してください」
「それは構わないが、どうしてだ?」
「この件を組合への正式な依頼にして欲しいのです」
エリーゼは説明した。
今、僕たち『ひとつの足跡』がラルゴたちを追って捕らえようとしても、世間から見ればただの私的な揉め事扱いされてしまう可能性があるからだ。
ラルゴたちが自分たちの犯行をとぼけたり否定した場合、間に冒険者組合を入れていれば組合が調査をしてくれる。
また、ラシンとか名乗った魔法使いがフララランさんが言った通りに精神系の魔法使いだった場合、サイラとミーラの意識が操られて自分たちから自主的に里を出たいと思い、ラルゴたちに同行していると返答される可能性もある。
そのために今回の僕たちの行動が個人的な目的ではなく里の総意であることの証明にするために事後承諾の形にはなるが、冒険者組合を通した仕事にしてもらう必要があるとのことだった。
里長はエリーゼの意見に同意してくれた。
そして里の若く頑健な男をテプ村(開村祭が行われた村。僕は名前を知らなかった)をすぐさま派遣してくれるとのことだ。
そのときだった。
僕とエリーゼの背後に立っていたフララランさんが、あの~、と手をあげる。
「私もお二人といっしょに救出に行きますっ。私も冒険者ですし、お役にたつと思いますよっ」
そんな発言をしたのだ。
「え? フララランさんって冒険者だったんですか?」
僕は驚いて振り返る。
確かに今のフララランさんは僕と同じように三角帽子とローブと杖を持っているから魔法使いだとはわかる。
だけど、だからと言って冒険者であるとまでは思わなかったのだ。
するとニッコリ笑ったフララランさんは胸元から首から下げられた冒険者組合の札を取り出すのであった。
その札は黄金に輝いていた。
「私は世界中の温泉巡りをしてるんですよっ。だったら旅の途中でお金が稼げる冒険者になったのは当然ですっ。ちなみに私、Sランク冒険者なんですっ」
「「えええっ……!!」」
僕とエリーゼの叫び声がハモった。
Sランク冒険者。
国に数人しかいないと言われる冒険者の頂点。
この美人だけどふわふわしたフララランさんがそのSランク冒険者……!?
フララランはSランクだったのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




