066話 子供たちの誘拐。
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「……人がいるわ」
突然、エリーゼが言う。
辺りを見回すと僕たちのいる場所のちょうど対岸の位置に人がひとり座っていた。
横座りで泉に手を入れている。
その姿や所作からして女性に思える。
「気が付かなかったの?」
「ええ。今まで気配を感じなかったわ」
エリーゼが気が付かないなんてことがあるのか。
何者だろう?
僕は急激に対岸の女性に興味が湧いた。
すると向こうも僕たちに気がついたようで、顔を上げそして手を振っている。
「……ああっ。マキラじゃないですかっ」
僕たちが泉の周囲を周ってその女性に近づくと声をかけられた。
それはフララランさんだった。
彼女は今、風呂場で出会ったときと違って髪を降ろしていて、その長さは腰より下まであった。
日差しを十分に浴びた髪は金色に光り輝いていて、この聖なる場所にふさわしいと感じてしまう。
「私はフララランですっ。あなたはこの里の人ですねっ」
「私はエリーゼです。マキラと同じ冒険者パーティ『ひとつの足跡』のリーダーです」
フララランさんは遠慮なく、エリーゼは警戒しながらの問答だった。
「ここは私たちの聖地です。あなたはどうしてここに来たのですか?」
「泉に呼ばれたんですっ。私たちエルフは森の民ですからねっ。こういう神聖な場所には必ず訪れるようにしているんですっ。……ああ、決してやましいことはしてませんよっ。その辺はご安心くださいねっ」
あっけらかんとフララランさんは言う。
その顔に邪念とか悪意とかはまったく感じられない。
本当に本心を言っているようにしか思えない。
「……わかりました。あなたはここに来るのに相応しい人物のようですね」
そう笑顔になったエリーゼが言う。
その表情には疑念のひとつもない。きっと僕と同じような印象をフララランさんに持ったのだろうね。
その後、僕とエリーゼはフララランさんと三人で里へと戻ることにした。
来た道を戻りながら、他愛のない世間話をする。
僕はあの温泉でフララランさんが使った謎の魔法のことを聞きたかった。だがそれは不躾なことだ。まだ気心も知れてないような浅い間柄なのにそんな踏み入ったことを尋ねるのはマナー違反である。
そしてそれはエリーゼも同じなようで彼女もフララランさんに魔法のことを質問することはなかった。
やがて里に到着した。
するとなにかおかしい。里の中が騒々しいと言うか物々しいと言うか、とにかくさっきまでののどかな雰囲気がまったくないのだ。
人々は家屋と家屋を駆け回り、すれ違う人に尋ねたりを繰り返している。
「なにかあったのかな?」
「そうね。なにか変ね」
「慌てているように見えますねっ」
なにかが起こったのは間違いないようだ。
だから僕たちは里長の屋敷に向うことにした。
到着するとすでに里人たちが屋敷に押しかけていた。
僕たちはその隙間を縫うようにして奥に進み、難しい顔であぐらをかいている里長さんに尋ねるのであった。
「伯父上、なにがあったのですか?」
「ああ、エリーゼか。……なに、子供が3人ほど見つからないのだ」
聞けば、朝早くから森に木の実採集に出かけたことはわかっているのだが、3人とも戻って来てないらしい。
そのため里から捜索隊を組んで森中を捜すことになっているとのことだった。
「私たちも加わった方がいいかもね」
「そうだね」
エリーゼの提案に僕は頷いた。
そしてその後、しばらくしたときだった。捜索隊が森へ踏み込もうとした頃だ。
門の外から泣きべそをかいている男の子を連れたひとりの里人が戻って来たのだ。
その子は行方不明だった3人の内の1人だった。
「ウリン……!」
その姿を見て飛び出して行ったエリーゼがそう叫んだ。
するとウリンと呼ばれた8歳くらいの男の子は泣きながらエリーゼに向かって走る。
そして門の所でエリーゼとウリンは抱き合った。
「ウリン。行方不明はあなただったの?」
するとウリンはエリーゼの顔を見て、一層強く泣き出した。
両手で目を覆いわんわん泣いているのだ。
「知ってる子?」
「ええ。ウリンって言うの」
泣き止まないウリンの頭を撫でながらエリーゼはそう紹介してくれた。
エリーゼがこの里を出てから3年くらいしか経ってないから、この子のことはよく知っているんだろう。
「……エリーゼお姉ちゃん。……サイラとミーラが……。うええええ~ん……」
「サイラとミーラがどうしたの?」
おそらく行方不明の残りの2人だろう。
名前からして女の子かもしれない。なにか嫌な予感がする。
「……攫われた。……うええええ~ん」
エリーゼ、そして門番の男性、そして出向いた狼獣人の大人たちの間に緊張が走った。
子供たちが何者かに連れ去られたと言うのだ。
「ウリン。……落ち着いて説明してくれるかしら?」
静かにエリーゼがウリンに問いただしている。
だがもうそれなりの付き合いがある僕には、それはエリーゼが平静を装っているだけで内心の驚きとか怒りとかを一生懸命抑えていることはわかる。
その後、里長の屋敷で里の主だった人物たち、僕、エリーゼ、フララランさん、そしてウリンがいた。
ウリンは果実水を飲まされたことで落ち着きを取り戻していた。
そしていっしょに木の実を採っていたサイラとミーラが攫われたときの内容を話してくれたのだった。
子供たちが攫われたのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




