063話 墓地参拝。
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「あのお転婆なエリーゼが、まさか婿殿を連れてくるとは……」
里長だけでなく、長老格の方々も驚きの顔になる。
それだけじゃなくて、思うところもあったのか老人の方々はしきりに目頭を押さえていた。……こんな雰囲気じゃ、もう否定なんてできないね……。
それから僕たちは今まで経験したことを話した。
エリーゼとの出会い。
冒険者として依頼を受けた数々。
ここまでの道中で行商人のラルゴさんたちと出会ったことなどだ。
「行商人とは珍しい。これは来訪が待ち遠しいな」
エリーゼの伯父さんに当たる里長さんは楽しげな笑顔を見せた。
他所の土地と交易なんてほとんどないんだろう。
なので届く品々に興味があるようだ。
……そして避けられない話がある。
それはニバーンメの街で出くわした魔族との戦いのことだった。
魔族。
魔族がこの里を襲ったのは10年前。
そのときに父を失ったエリーゼは伯父である里親に引き取られて育った。
そして14歳のときに魔族を討てる冒険者になるために里を旅立った。そして今日、旅立ちの日以来初めて帰郷したのだと教えられた。
10年前の話になった。
突如、里に魔族が現れたらしい。
空からふわりと舞い降りたようだ。
そして始まったのが殺戮。男、女、子供、老人たちと相手を選ばずにその鋭い爪で牙で次々と殺し、そして喰ったのだ。
もちろん里もただ手をこまねいていた訳じゃない。
狼獣人の戦士団が武器を手に戦った。
そのときの戦士団団長がエリーゼの父親だった。
激しい戦闘で戦士たちがバタバタと倒れる中、孤軍奮闘して魔族に立ち向かった。
団長には特別の武器があった。
里に代々伝わる戦士の剣であった。それは刃が緑色に光る特別の剣だったらしい。
「……魔剣だったのかな?」
「今から思えばそうなのかもしれないわね」
僕の疑問にエリーゼが答えてくれる。
刃は普通は銀色に光るものだ。それが緑色。
ニバーンメの街でミサイアさんが抜いた剣は目の覚めるような青色だった。
やはり魔剣の色は通常の剣とは違うようだ。
そして戦士団団長はついに魔族の心臓を剣で貫いた。
トドメを刺したのだ。
だが、魔族の長く鋭い爪も団長の胸を刺し貫いていた。
相討ちだったのだ。
こうしてこの狼獣人の里を襲った魔族の襲撃は終わった。
ただ甚大な被害だけを残して……。
「ここがお父さんのお墓なのよ」
久しぶりに来たと言っていたけど迷うことなくエリーゼはお墓まで僕を案内してくれた。そこには正方形の石が置かれており、名前が刻まれている。
これが狼獣人族の習慣らしい。
僕とエリーゼは携えていた花束を献花した。そして手を合わせる。
そして僕はふと周りを見る。
「……ここはどうして廃墟ばかりなのかな?」
そうなのだ。
ここは里のほぼ中央に位置する一等地とも言える場所なのに、この墓地の
周りは屋根が落ち柱と壁が折れた崩壊した家屋ばかりなのだ。
それが長年放置されているようで蔓草に覆われているのがほとんどだ。
「ここは魔族との戦いの場所だったの」
「戦いの場所? ここで魔族とエリーゼのお父さんが戦ったってこと?」
「ええ。……そのときの破壊の跡をそのまま残そうってことになって……」
「破壊の記念碑。……記念って言葉を使っていいのかわかんないけど……」
「そんな感じよ」
改めて僕は周囲を見回す。
倒壊した家屋は10件以上ある。柱などは鋭利な刃物ですっぱり断ち切られたかのように崩れている。おそらくたぶん魔族の鋭く長い爪で切られたんだろう。
しかもこれだけ家屋が密集している場所で暴れたのなら、相当の数の住民たちが被害に遭ったのは想像に難くない。
「大変だったんだね」
「ええ、そうよ。……ふふ。でも、ありがと。そういう風に外から来てくれたマキラのような人にそう思ってもらえるのなら、この場所に意味はあるわ」
そう思う。
改めて魔族の脅威を感じる。
彼らはなぜこんなテロを起こすのだろう。
テロリストはその場で命を奪われる。それに見合う価値があるんだろうか。
人族に対してよほどの恨みでもあるんだろうか。
……わからない。僕には魔族への知識が圧倒的に足りない。
「温泉に行ってみたら」
参拝を終えた後、エリーゼにそう言われた。
聞けばこの里には湯量豊かな温泉があるとのこと。
この里に狼獣人族が暮らし続けているひとつの理由になっているそうだ。
僕は着替えを手に案内された大きめの建物に入る。
入り口には未使用の札がぶら下がっていた。女性が入っているときに間違って男性が入らないように工夫されているようだ。
中に入るとそこは脱衣場になっていてそこで着替えられるようになっていた。
そして脱衣場から出ると岩で囲まれた露天風呂があった。相当広い。
かけ湯を済ませた僕は湯気に包まれた温泉に入る。
するとふわ~っとした声が漏れる。
僕は温泉に入るのが初めてだった。風呂には入ったことがあるけど、空が見えること、そして広々とした湯船。開放感がぜんぜん違う。
「その様子だと温泉は初めてみたいですねっ」
「へ……?」
僕は突然話しかけられて思わず立ち上がりかけてしまう。
なぜだって? だってその声は若い女性の声だったからだ。
驚きのあまり条件反射ってやつだ。
「……い、入り口の札は未使用になってたけど!」
「ああっ、忘れちゃいましたっ。うっかりですっ」
そう答えた女性が岩陰から姿を現した。
胸まで湯につかったままなので助かったけど、風呂場なのでもちろん裸だ。
長い金髪を後ろでお団子に丸めているスラリとしたスタイルの女性だ。
そして……。耳が長かった。真横にピンと尖って伸びている。
更に驚くことがある。
とても美人だった。年齢は20歳前後で目も鼻も口も人形のように整っている。
エリーゼとはタイプが違う美しさだ。だが口調はどうも子供っぽい。
風呂場での出会いなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




