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056話 勇者の仲間。

【毎日夜の18時に更新します】

よろしくお願いします。



 

「魔剣ね」




 僕の隣、ミサイアさんの背後に位置したエリーゼが呟く。

 そうか。

 ミサイアさんの剣は魔剣だったのか。

 魔族を攻撃するには強力な魔法か魔導具に限ると聞いている。

 その点、魔力が込められた魔剣なら通用するのかもしれない。




 そして振り抜かれた魔族の鋭い爪を掻い潜ったミサイアさんが魔族の胸部にするどい突きを入れた。




「グギャギャーッ……!!」




 魔族の断末魔の声が響いた。

 見ると胸のほぼ中央に柄近くまでミサイアさんが剣を突き刺していたからだ。

 あの位置は心臓。




 魔族はそのまま固まったかのように背後にドタンと倒れた。

 そして砂が風に飛ばされるようにその身体が風化して塵となって空中を舞った。

 その時間はわずか1分ほど。

 気がつけば魔族はそこに最初からいなかったかのように痕跡を一切残すことなく消滅していたのであった。




 だが、周りには倒れている人たちがいる。

 僕は魔法収納袋から師匠謹製のポーションを取り出すと怪我人に使用した。

 だけど、すでに何人かはポーションが使えない状態になっていた。

 つまり死亡していたのだ。

 これだけの被害……。

 いや、ミサイアさんがあっという間に仕留めてくれたので、この程度の被害で済んだのだと思うことにしよう。




「……ミサイアさん。あなたは勇者パーティのメンバーなのですか?」




 え? ミサイアさんが勇者パーティだって?




 僕はエリーゼの言葉に驚く。

 ……でも、待てよ。

 ミサイアさんは一撃で魔族を倒した。

 そしてその手には魔剣。

 そもそも実力は僕たちの遥か上なのは間違いないし。




「そうだ。私は勇者スザクの仲間だ」




 ミサイアさんが剣を鞘に収めながらそう答えた。

 なるほど。

 なら、魔剣を持っているのも、魔族を一撃で倒せるのも納得だ。

 それにだからこそ人族の街に入るために認識阻害の魔法も使っているのだろう。




 それからしばらくすると冒険者組合から増援がやって来た。ただし慌てた様子はない。笛で魔族の位置がわかっていることから、すでに討伐済みなのを把握して駆けつけた様子だ。

 そして増援部隊の代表の冒険者にミサイアさんが事の顛末を報告している。

 そして僕とエリーゼも事情聴取された。

 だが時間はあまりかからなかった。

 ただ魔族を見つけたので笛を吹いただけだからだ。

 まあ、僕が転倒魔法を使った件はあるけど倒したのはミサイアさんだし僕が口出しすることじゃないしね。




「機会があれば、また会おう」




 すべてが終わった後、ミサイアさんはそう言って僕たちを別れた。

 僕たちはそれからも街の巡回を続けた。

 だけどさすがにもう魔族を発見することもなく、その日は終わったのであった。




 その夜。

『水鳥の憩亭』の部屋。昨日と同じ部屋だ。




「結局、あれから魔族は現れなかったね」




「そうね。でもそれの方が良かったわ」




 確かにそうだ。

 あの悲惨なテロがそう何度も起こって欲しい訳がない。




「しばらく巡回の依頼を受けた方が良さそうね」




「そうだね。とにかく街を守ろう」




 僕たちは翌日以降も街を魔族から守るために巡回の依頼を受けようと決めたのであった。



 ■




 そして翌日以降、一週間ほど僕とエリーゼはこのニバーンメの街を巡回する依頼を受け続けた。

 しかし、それ以降一度も魔族の気配を察知することもテロが発生することもなかったのだ。

 やがて冒険者組合からの情報で街の警戒は解除され、巡回の仕事もなくなることが告げられた。

 そして噂では勇者パーティたちがこの街を去ったらしいと聞いた。

 そう言えば、あれ以来、勇者スザクやミサイアさんを見かけることもなかったので、この噂は本当のように思えた。




「……師匠も見つからないんだよな」




「そうね。マキラと同じ格好をした魔法使いってことならば、一目見ればすぐにわかりそうだけど、結局見かけなかったわね」




 今日は休日だ。

 ぶっ続けで街の巡回の依頼をこなしていたので依頼が解除されたことから、ちょうどいいとエリーゼと相談して休みにしたのだ。

 そして巡回のときに見つけた景色の良いスイーツの店で僕たちは食事をしている。

 湖に張り出したバルコニーに席があり、辺り一望湖面なのでとても気分が落ち着く。

 湖には一艘の小舟が水面を滑っていた。

 見ると若い男女が乗っている。恋人同士だろうか……。




「あれいいわね。私たちも乗りましょうか」




「ええっ……」




 思いっきり戸惑いの声を上げてしまった。

 だってあれラブラブカップルじゃないか。あれと同じことするなんて、まるで僕たちも……。

 だが、僕の困惑などお構いなしなエリーゼは食事を済ませると湖畔に行き、貸しボートを借りてしまった。

 そして僕がオールを持って湖へと漕ぎ出すことになった。




「舟なんて初めてなんだけど……」




「私もよ。大きな川を渡るための渡し船なら冒険の途中で乗ったことあるけど、二人っきりでこんな小さな舟に乗るのは初めてね。でも、いいわね……」




 僕は悪戦苦闘しながらも借りたときに係員さんから教わったようにオールを左右に動かして舟を動かす。

 最初はぜんぜん慣れなくて右に行ったり左に行ったり、その場でグルグル周ってしまったりしたけど、ものの30分も経つとなんとか動かせるようになった。




 エリーゼは笑顔だった。

 そして手で湖の水を掬ったりしながら耳と尻尾をピクピク動かしている。

 どうやらご機嫌なようだ。

 それにしてもいい顔だ。元の造りが素晴らしいから余計にそう見えるんだろうね。




ミサイアは勇者パーティのメンバーだったのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「いらぬ神にたたりなし」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。




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