054話 思わぬ再会。
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僕とエリーゼはここでも不審人物を探しながら巡回した。
そして街の門に到着すると東に進路を取った。
歩いているとやがて店は見えなくなり、洗濯物が干されていると言った生活感ある通りになった。
ここは住民が暮らす街区だろう。
人通りは極端に少なくなった。行き交うのはここで暮らしている人々ばかりなのだろう。
「この辺は庶民が暮らす街みたいだね」
「そうね。建物も大きくないし敷地も小さくてゴミゴミしているから、それほど豊かじゃない普通の人たちが暮らしているみたいね」
そうだった。
庭を持つ一軒家などはほとんど見ることがなく、密集した二階建て、三階建ての煉瓦造りの建物が並んでいる。
通りもあまり広くなく。馬車が入ってくることなどほとんどないだろう。
そして二階、三階の窓には鉢植えの花が飾ってあったり、洗濯物が干されていたりと各窓ごとに異なる生活を感じさせることから、それぞれの別の家族が暮らしているのがわかる。
つまり集合住宅ってヤツだね。
そんな町並みは平和そのものだった。
怪しい人物など見かけなかったし、エリーゼの気配察知に引っかかる者もいない。
そして僕たちは一般市民が暮らす街区を抜けて湖畔に到着していた。
湖はかなり大きくて向こう岸は遥か彼方に霞んで見える。
「海ほどじゃないけど、けっこう大きいね」
「水の都だもの」
僕たちは湖畔に沿うように作られた小道を歩いている。
途中に公園があり、そこの屋台で昼食を済ませる。
食べたのは魚のフライ料理だった。
淡白な味の白身魚でこの湖特産品らしい。
そして更に巡回を続ける。
門から島まで伸びる大通りを横切って、今度は街の西側へと踏み入れた。
すると途端に緑が多くなる。
立派な石壁が長く続く大きな屋敷が増えて馬車をよく見かけた。
その割に歩いている人は少ない。
「ここいらは大きな屋敷が多いね」
「たぶん貴族様とか大商人とか、富裕階級の人たちが暮らす街じゃないかしら」
言われてみると、庭園も広くよく手入れされた庭木、いろんな色の花々が咲き乱れる花壇などがある二階建て、三階建ての広い屋敷が多い。
ところどころの門には私兵と思われる衛兵さんが門番をしていることから、やっぱり貴族の人たちの屋敷なんだろうね。
結果的に言えば、ここの高級住宅街にも異変はなかった。
行動が怪しい人物は見かけないし、エリーゼの気配察知にも反応はない。
なので、僕たちは更に歩を進めた。
「異常がないことは、いいことなんだろうけど……」
「ええ。これじゃまるで市内観光ね」
異変がないことでちょっと気が緩み始めた。
いかんいかん。
僕は顔を引き締めた。
するとそれがエリーゼにも伝わったようだ。
「まだ巡回は終わってないわね。残りも半分を切ったし気を引き締めて行きましょう」
そして僕たちは富裕層が住む高級住宅街を抜けて大通りに近づいた。
すると店の数が増え始めて、人通りも多くなる。
どの店の前もそれなりの人だかりがあり活気がある。
だけどそんな中、それなりに大きな店なのに戸が閉ざされている店があった。
その店の両隣は八百屋と肉屋で人が並んでいるので、その中で閉めている店というのはちょっと目立つ。
「閉店しちゃったのかな?」
「流行る店もあれば、その逆の店もあるしね。……ん。張り紙がしてあるわよ」
エリーゼが指差す先に閉じている店の張り紙があった。
興味がわいたのでちょっと見てみることにする。
「……ゴリアス商会。この店だったのね」
エリーゼがぽつんと呟いた。
そこには諸事情により当面休店いたしますと書かれていた。
ゴリアス商会。
僕たちが護衛したドガ商会の商隊を盗賊に襲わせた商会だ。
たぶんすでに衛兵の調査が入って店を開けられる状態ではないのだろう。
内容が内容だけに商会主たちは取り調べを受けているに違いないし。
そんなときだった。
「よお。エリーゼとマキラじゃないか。なんだニバーンメの街に来てたのか」
背後から僕たちの肩を叩く人物が現れた。
振り返り見ると若い女性だった。
上は生成りのチェニックに下は紺色のロングスカートと言った町娘風の服を着ているんだが、なぜか腰には剣を佩いている。
だが、その顔に見覚えがない。見た目クール系美女って感じだ。
「えと……。どなたでしょうか?」
どうやらエリーゼも僕と同じで、この女性が誰だかわからないようだ。
イチバーンメの街でも大勢の若い女性は見かけたけど、会話をして顔を憶えられるような付き合いをした人はいなかったし、ましてこのニバーンメの街は僕は初めて来たのだから顔見知りなどいるはずもないし……。
すると僕とエリーゼの戸惑いがわかったようで、町娘さんがぱっと笑顔になる。
「ああ。……このナリではわからんか。私だ。ミサイアだ。イチバーンメの街の近くの森で一度会っただろう?」
「ええっ! ミサイアさん……?」
エリーゼが驚き顔になった。
そしてもちろん僕もそうだ。
なぜならば、目の前の女性はどう見ても人族。
なのに森で会ったミサイアさんはブルーオーガの女戦士だったはずだ。
頭に生えた角。青空のような色の肌。それがまったく見当たらない……。
「ああ。仲間のア……。仲間の魔法使いに認識阻害の魔法をかけてもらっている。なので人族に見えるだろう?」
なるほど。魔法使いに魔法をかけてもらっているのか。
だから角も肌の色も隠せている。
じゃないと魔物に分類されてしまっているブルーオーガは街に入れないもんな。
「あのときは世話になった。お前たちに救助してもらったリーアは無事に里に送り届けた」
ミサイアさんの説明によると、リーアは族長のひとり娘だったらしい。それで里では大騒ぎになっていたとのことだ。
なんでもひとりで薬草摘みをしていたところをゴブリンたちに攫われてしまったようだ。
良かった。
リーアは無事に戻れたのか。
僕はまだ幼いけれど見目麗しいリーアを思い出す。
ミサイアと予期せぬ再会なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




