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053話 街の巡回依頼。

【毎日夜の18時に更新します】

よろしくお願いします。



 

 そしてしばらく歩いて僕たちは冒険者組合に到着した。

 中に入ると騒然としていた。

 もちろん今はまだ朝と呼べる時間なので、新たに貼り出された依頼を探しに来た冒険者たちが大勢いるのもあるんだけど、いつものそれとは違う雰囲気があった。




 なにか殺気立っているのである。

 でもその原因はすぐにわかった。耳に注意を向けると冒険者たちの会話内容が聞こえてきたからだ。

 それはやはり昨日の魔族のテロに関することだった。

 僕はすでにエリーゼから話の詳細を聞いているので知っているんだが、その情報を集めようと違いに情報交換し合っているのがわかった。




「……これは思った通りの案件ね」




 新たに掲示された依頼票を見てエリーゼが呟いた。

 それは街の巡回の依頼案件だった。




「街をぐるっと見回りするってことだよね?」




「そうね。魔族の次のテロを未然に防ぐためのものだと思うわ」




 貼り出された依頼票。

 それにはこのニバーンメの街の巡回が依頼されていた。

 この冒険者組合がある湖の島を起点に東廻りに一周、そして西廻りにもう一周して異常がないか調査する仕事だった。




 そしてそれにはもちろん魔族の発見が含まれていた。

 魔族を発見し次第、冒険者組合に報告することが義務付けられていた。

 ただ、討伐は含まれていない。

 当然と言えば当然だ。

 魔族は強力なのだ。今現在で言えば勇者パーティ以外にそれは実現不可能と思えるからだ。

 組合も無駄な犠牲を出すつもりはないのがわかる。




「報酬は銀貨5枚。まあ、悪くはないわね」




「ただの巡回にすれば高い方だよね」




 緊急かつ重要な依頼なのでそれだけ依頼料金が高めに設定されたようだ。

 そして他にも案件を探したんだけど、あんまり良いのがなかった。

 なので僕とエリーゼはこの街の巡回の依頼を受注するのだった。




「この笛。魔導具なんだね?」




 依頼を窓口で受けると、受付嬢から笛を人数分渡されたのだ。

 それは楽器のように音色を調整できるものではなくて、ただ危機を知らせる音を発する笛なので呼子と説明すればわかりやすい。




「吹けば音が出るだけじゃなくて、その位置が冒険者組合にわかる仕組みらしいわよ」




 なんとも便利な魔導具だ。

 これなら魔族と接触してしまっても笛を吹けば冒険者組合経由で勇者パーティに連絡が行くようになっているようだ。




 そして受付嬢から、重要なお伝えがありますと小声で話しかけられた。

 それはこの街にいるすべての冒険者たちに伝えなければならない件だった。




「……魔族のことは伏せておくってことかしら?」




 受付嬢は大きく頷いた。

 そうなのだ。

 昨日の魔族の件は魔物が暴れたことにされていると言うのだ。具体的には密輸商人がオーガを密かに運び込み、それが逃走して暴れたと領主様より発表がすでにされているとのことだ。




「なんのためだろう?」




「……パニック防止です」




 受付嬢が更に説明してくれる。

 街中で魔族が出現し人々を殺戮したとなると一般市民がパニックを起こして大騒ぎになってしまう。

 そうなると街の治安も経済活動にも支障を来すことから、オーガが暴れたことにされたらしいのだ。

 なのでこれから僕たちが巡回して、もし魔族を発見したときも街の一般市民には決して魔族と伝えてはならないと念押しされた。




「……仕方ないわね」




「まあ、事情を聞けば納得だね」




 僕とエリーゼは受付嬢に約束を守ると伝えた。

 そして僕とエリーゼ、つまり『ひとつの足跡』は東廻りにニバーンメの街を巡回することになった。

 まずは冒険者組合、大聖堂、そして領主様のお屋敷があるこの湖に浮かぶ島をぐるりと周る。

 もちろん目視で怪しげな人物がいないか見ているけど、いちばんの頼りはエリーゼの気配察知だ。

 なんせ前日の魔族テロのときも事前に悪意を察知していたからね。頼りになるよ。




「この辺だったわよね……」




 島と湖畔を結ぶ石橋に来たときだった。

 橋はとても広く、馬車が余裕ですれ違えるほどもある。

 そして橋の両側は商店街だ。

 今も人は多く。買い物客でごった返している。

 だけどその一角にぽつんと開けた場所があった。

 そこにあったはずの露店はなく、背後の石造りの店も閉店している。

 そして石畳の上に設置された献花台にはいくつもの花束が捧げられていた。




「魔族が暴れた場所だね……」




 そうだった。

 昨日、この場所で人族の少女が突如、正体を現して魔族となって人々を殺戮したのだ。

 被害者は10名を超えたと聞かされた。

 ちょうど居合わせた僕たち『ひとつの足跡』とライナスさんたちAランクパーティ『黒の鋼団』がいたことで、倒せはできなかったが足止めしたことで被害はそれ以上にならなかった。

 もし、僕たちがいなかったら……。そして勇者パーティの到着がもう少し遅れていたら被害者の数はもっともっと増えていたに違いない。




「手を合わせて行きましょう」




「そうだね」




 僕とエリーゼは花束が捧げられた献花台の前に立ち手を合わせたのだった。

 なんの罪も落ち度もないはずの人々……。

 そんな彼らがテロの被害に遭ってしまった。

 その無念さはかなりのものだろう。

 せめて安らかに眠っていただくことを祈るしかない。




 ■




 それから僕とエリーゼは巡回を再開した。

 商店街になっている石橋を渡り終わり、湖畔の町並みに到着していた。

 その間に目視とエリーゼの気配察知で不審人物を探していたのだが、それらしい者は見当たらなかった。




 湖畔の街は広い。

 ニバーンメの街の人口の大部分がここに住んでいるのだ。

 石橋へとつながる大通りは幅広の大通りになっていて、地面は石畳で整備されている。

 もちろん馬車が自由に行き来できる造りになっていた。

 そして道の両側は石橋同様に商店街になっているので、行き交う人々の数は多い。

 昨日、魔族テロがあったとは言え、みんな仕事はあるし生活しなくてはならないのだ。

 人の姿が多いのは当然だろう。



街を巡回するのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「いらぬ神にたたりなし」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。



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