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050話 完全なる敗北。

【毎日夜の18時に更新します】

よろしくお願いします。



 

「……くっ。転倒、転倒、転倒」




 エリーゼとの作戦通りに僕は転倒魔法を重ね掛けする。

 その度にパリン、パリン、パリンと勇者スザクの足元の魔法陣が砕ける。




「……くっ。転倒、転倒、転倒、転倒、転倒、転倒……」




 僕は発動を早めた。

 だけどそれでも魔法陣はパリンと砕ける。

 ……が、その後も懲りずに発動を繰り返して行くと魔法陣が砕け散る直前に次の魔法陣が浮かび上がり始めた。

 もしかしたら、いけるかもしれない。




「転倒、転倒、転倒、転倒、転倒、転倒……」




 崩れる魔法陣の下から次々と新しい魔法陣が浮かび上がる。

 そして発光も強くなり白くて強い光を放ち始める。




「……ほお」




 余裕綽々だった勇者が振り向いて僕を見てつぶやいた。

 転倒は全然しないんだけど、勇者の下半身が白く染まるのが見えた。

 その間、エリーゼはもちろんただ立っていた訳じゃない。

 高速で跳躍し矢のような勢いで勇者スザクに迫り短剣を振っている。

 だが、そのすべてが紙一重で躱される。

 勇者は手を剣の柄に添えたままだ。




「転倒、転倒、転倒、転倒、転倒、転倒……」




 僕は転倒魔法を発動し続けた。

 すると勇者スザクの下半身が完全に白く染まった。




「……なるほど。動けんな」




 どうやら勇者は転倒こそしないものの両足を動かすことができなくなったようだ。

 転倒魔法が効かない強者相手でも、魔法を重ねがけするとこういう効果が発揮されるようだ。それを見たエリーゼが勇者の背後に回り込んだ。

 下半身が動かせない今の勇者には死角が多いからだろう。

 僕は手応えを感じた。

 これなら今後の強敵相手にも転倒魔法は有効になるはずだ。




「シッ……!」




 目で追えないほどの速度で駆けたエリーゼが身を一瞬屈めたかと思った瞬間にバネのように体全身を使い高速で跳躍した。

 そして勇者の後方から逆手に持った短剣を勢いよく振る。

 刃ではなく刃先で直接喉を突く作戦のようだ。




 ――ガキンッ……。




 だが、エリーゼの剣は届かなかった。

 聖剣を抜いた勇者がその剣の腹でエリーゼの短剣を防いだだけじゃなく、その勢いでエリーゼの剣が宙を舞ってしまったからだ。エリーゼの短剣は陽の光を浴びてキラリと光ると遥か遠くの地面に落ちるのだった。




 打撃とも言えない。ただ剣を抜いただけ。

 なのにその勢いと膂力でエリーゼの剣を弾き飛ばしてしまったのだ。

 勇者スザクは今、動けない。

 下半身を僕の魔法で固められてしまったからだ。

 なので上半身の力だけでエリーゼを止め、そして破ってしまった。

 動けるのに動かないのと、動けないから動けないは違うはず。

 不十分な体制なのに力の違いをまざまざと僕たちに見せつけたのだ。




「正直、思ったよりもやるな。Dランクとは思えないぞ」




 勇者スザクはニヤリと笑みを浮かべた。




「完敗です……」




 ■




 今、勇者スザクは支部長室のソファに座っている。

 そしてその正面に僕とエリーゼがいる。




「やはりお前たちを俺のパーティに入れるのは無理だな」




「わかります。実力の違いがはっきりわかりました……」




 エリーゼは両耳をペタンと垂らして頷いた。

 僕は横に座るエリーゼをそっと盗み見る。

 すると……。エリーゼは目に涙を貯めていた。

 よっぽど悔しかったんだろうな……。




「参考までに訊きたい。なぜ俺たちの勇者パーティに入りたかったんだ?」




「……ま、魔族を倒したいからです。……父と里の人たちの仇なんです」




 初耳だった。

 そう言えば今までエリーゼから身の上の話を聞いたことがない。

 そう云う事情があったとは思わなかった。




「なるほど。だから勇者パーティか」




 話を聞くと勇者とは魔王と魔族を倒すための存在で、その仲間が勇者パーティとのことだ。

 だとするとエリーゼが勇者スザクのパーティに入りたがった理由がわかる。

 だが、今の僕たちの実力では無理だ。

 魔族には一切攻撃が通用しなかったし、勇者スザクに至っては手抜きされた上に完敗している。




「ところでだ。先程の魔法は転倒魔法だな。……お前がマキラか?」




 突然、勇者スザクが僕を見て尋ねてきた。




「え? は、はい。そうですが……」




 すると勇者は遠くを見るような視線になる。

 いったいなんなんだろう?

 って言うか、なぜ僕を知っているんだ……?

 ここはひとつ訊いてみるか。




「どうして僕を知っているんですか……?」




 すると勇者スザクはコホンと空咳をひとつした。




「……まあ、お前たちはまずは実力をつけろ。そして実力がついたら改めて俺たちを探すんだな」




 と、僕の質問には答えてくれず、当たり前に近いことを口にするのであった。

 その後、勇者は席を立った。

 街で巡回している勇者パーティと合流するためだと言う。

 そして僕たちは背を見せて部屋を去る勇者スザクを見送るのであった。



やはり敵わなかったのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「いらぬ神にたたりなし」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。




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