047話 謎の攻撃。謎の男。
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様子を伺いながら身を起こす。
僕はほぼ無傷。エリーゼもたぶん無傷。だが片手剣士と僧侶、リサさんは負傷していた。立ち上がれる状態ではあったが腕や肩に火傷のような傷を負っている。
「……な、なんて威力だ……」
僕は呆然としながら口にした。
こんな威力の魔法など聞いたことがない。
圧倒的な広範囲攻撃魔法だ。ただの一撃で僕たちは戦闘不能になってしまった。
そして遥か向こうでもライナスさんが立ち上がるのが見えた。
だがダメージが大きいようでバスターソードに体重を預けながらよろよろと立っているのだった。
「つ、強い……」
「ちょっと勝てそうにないわね……」
僕とエリーゼがそう呟いた。
これは撤退を考慮した方がいいかもしれない。
僕とエリーゼを除き、『黒の鋼団』は満身創痍。
そして僕たち『ひとつの足跡』は無傷だけど実力が圧倒的に足りない。
「グガアアアアアア……ッ!!」
魔族が吠えた。
それは勝ち誇っているように見えた。
敗北が、死が、僕の中によぎる。
そんなときだった。
吠える魔族の向こうの空中高くになにかが赤くキラッと光った。
そしてその直後、ものすごい勢いで細長い赤いなにかが飛来した。
それは魔族の腹を貫くのだった。
……炎の槍?
そう見えた。
それはまるで火でできた燃え盛る槍のように見えたのだ。
「グギャーッ……!!」
魔族は貫かれた腹を抱えて片膝を地につけた。
そして次弾。
再び空中から放たれた炎の槍がものすごい勢いで飛来して魔族の肩をやすやすと貫くのだった。
「グギャーッ……!!」
魔族は両膝を石畳につけた。
あれだけ硬く、切っても傷口が盛り上がって直してしまう魔族が一方的に串刺しにされていた。
僕はあっけにとられて呆然とそれを見ていた。
「……いったい誰が攻撃したのかしら? 相当な使い手よね……」
エリーゼがぽつんと呟く。
そうなのだ。
Aランク冒険者パーティである『黒の鋼団』でさえ、まるで歯が立たなかった魔族なのだ。
それをいとも簡単に戦闘不能に持ち込む謎の攻撃……。
そんなときだった。
魔族の向こうからマントを風に靡かせながら駆けてくる来る白銀の鎧の男が見えたのだ。
「足止めご苦労だった。後は任せろ」
男は腰から剣をすらりと抜いた。
その剣はまるで光でできているとしか思えない光沢を放っている。
「参る!」
そう告げると男は一気に駆け出した。
その速度は尋常じゃない。
まるで瞬間移動でもしているかのような圧倒的速度だった。
――ジャキーンッ!
魔族に迫った男が剣を一閃した。
すると魔族の首がぽーんと宙を舞った。
あの硬くてあっという間に修復してしまう身体を一瞬で切り抜いたのだ。
「す、すごい……」
エリーゼが呆然とした口調で言う。
だがそれは僕も同じだった。
僕たち、いやAランク冒険者パーティである『黒の鋼団』ですら、まったく通用しなかった魔族をたった一撃で仕留めたのだ。
「な、何者なんだろう……」
僕は男を見た。
背が高く肩幅の広い人族の男だった。
髪は黒色で短く刈り込んでいる。
そして光の剣と鈍く光る白銀の鎧、そして黒のマント。
「グギャャャ……!」
宙をまだ舞っている魔族の首から悲鳴が漏れた。
すると首を切られた胴体がいきなり立ち上がると男とは別の方角にいきなり走り出した。それは脱兎のごとくと言う表現がぴったりで、明らかに逃亡を図っているのがわかる。
なんと、首を切られてもまだ生きているのだ。
「追う!」
光の剣の男はそう告げると魔族を追った。
魔族はその膂力を活かして二階建ての建物の屋根に一飛で跳躍し、そして駆け出す。
そして光の剣の男も人間離れした跳躍力で屋根に飛び魔族を追跡し始めた。
そして、魔族も光の剣の男も僕たちの視界から消えるのだった。
■
その後、僕たち『ひとつの足跡』と『黒の鋼団』は石橋を渡った湖の島にある冒険者組合の建物の中にいた。
ひとつは今回のドガ商会の護衛依頼の報告。そしてもうひとつは遭遇戦となった魔族との戦闘の報告だ。
そのため僕たち7人は建物1階のロビーではなく、2階にある組合支部長さんの部屋に呼ばれた。
ちなみに僕たちは今、誰も怪我をしていない。
『黒の鋼団』の僧侶の男性の治癒魔法と僕が魔法収納袋に入れていた師匠謹製のポーションで回復していたからだ。
いちばん酷い怪我をしていたのは、やはり魔族と鍔迫り合いをしていていちばん近くにいたライナスさんだった。
上半身のほぼすべてが酷い火傷を負っており、骨折もしていたようだ。
だが治癒魔法とポーションで全回復しているのだった。
報告の前半はドガ商会護衛の報告だ。
これは死傷者も出た大事件であるんだけど、盗賊行為の取り締まり関係は元々衛兵隊の守備範囲であることと、護衛依頼自体は問題なく完了していることで割と簡単に済んだ。
こうなったのは盗賊の件よりも重大な事件が新たに発生してしまったこともあり、盗賊討伐が軽く扱われたからだ。
ライナスさんたちも支部長さんも、もう終わった盗賊の件などよりも、これから対応しなくてはならない魔族の件にリソースを割きたいのが僕にもわかった。
強いのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




