046話 魔族。
【毎日夜の18時に更新します】
よろしくお願いします。
「な、なにあれっ?」
僕は騒ぎの中心に立っている人物を見た。
少女だ。
まだ幼い女の子なのだが、その周りにはすでに命ある者は誰もいなくなっていて、倒れた人たちとその血溜まりだけが残っていた。
そしてその少女だが様子がおかしかった。
服装は街の子供らしくワンピース姿でおかしな点はないんだけど、髪の毛が逆立って天に向かって伸びている。
そして頭の両脇に異物がある。
見ると羊の角のように思えた。
更におかしな点がある。それは目だ。両目ともにまるで燃えているように真っ赤なのだ。そして思う。
この惨状からどう考えてもこの少女が倒れている人たちを殺戮したに違いない。
「気をつけろ。ただの子供じゃない。……あれは魔族だっ!」
先に到着したライナスさんがそう叫びながらバスターソードを抜剣している。
そしてリサさんたち『黒の鋼団』のメンバーたちも剣を弓を杖を構えていた。
「……エ、エリーゼ。ま、魔族って……?」
僕の声は震えていた。
魔族。
名前だけは聞いたことがある。人族や亜人族と異なる種族。
でも街で見かける種族じゃないはずだ。
「端的に言えば私たち人間の敵ね。魔力が膨大で強力な魔法を使うわ。そして膂力も桁違いで人間では相手にならないって聞いたわね……」
エリーゼがそう答えてくれた。
見ると額には冷や汗が浮かんでいた。僕より経験豊富なエリーゼでも魔族とは戦ったことはないようだ。
そして思った。先程エリーゼが探知した悪意とはあの少女のことなんだろう。
「グガアアアアアア……ッ!!」
突然少女が叫びだし両手で頭髪を掻きむしった。
すると身体がムクムクと大きくなり背は伸び腕も足も太くなり、服は破れその中から青黒い肉体が出てきたのだ。
大きさはすでに2メートル以上になり、その鋭く伸びた爪先がある両手を広げて、その魔族を囲むように展開した『黒の鋼団』と僕たち『ひとつの足跡』を威嚇する。
大きく曲がった羊の角。真っ赤な目。鋼のような筋肉。そして鋭い爪。
見ているだけで身体が震えてくる。
「コロス。コロス。コロス……」
魔族は呪文のように呟きながら一歩一歩踏み出した。
「来るぞ! 攻撃開始だっ!」
ライナスさんがそう叫ぶとバスターソードを振りかぶって突進する。
それを追って片手剣の剣士も続く。
その剣士たちが到着する前に後方からリサさんの火魔法、弓使いの矢がライナスさんたちを追い越して着弾する。
「グガガガガ……ッ!」
魔法は頭に命中し、矢は肩に突き刺さる。
だが魔族は頭を一振りしただけで炎を消した。そして刺さった矢は自然に抜け落ちた。肩の筋肉の力で異物の矢を押し出した様子。
「「でぃやあああっ!」」
ライナスさんと片手剣士が魔族の胴体を捕らえた。
腹部を真一文字に切り裂いたのだ。
ライナスさんと片手剣士はそのまま魔族の後方へと走り抜ける。
そしてその魔族だが切られた胴体が一瞬で再生した。
矢が抜け落ちたのと同じように筋肉が内部から盛り上がって傷を消してしまったのだ。
「ちっ! 効かねえ!」
ライナスさんが舌打ちする。
そしてそのライナスさんを獲物と見倣したのか、魔族はこちらに背を向けてライナスさんを追う。
そして振り下ろされる鋭い爪。
――ガキンッ!
「ちぃっ……!」
ライナスさんは既のところでバスターソードで受け止めた。
だが膂力が違うようで徐々に押し込まれている。
「マキラ。魔法!」
エリーゼに言われて僕は我に返った。
そうだ。僕の魔法なら魔族を足止めできるはず。
「転倒!」
魔族の足元に魔法陣が浮かび上がる。
だが、そのときだった。
「えっ……!?」
魔法陣がパリンと硬質な音を立てて砕け散るのが見えたのだ。
なので転倒魔法は発動しなかった。
「……な、なんで……?」
「レジストされたのね。……たぶんだけど魔族の魔力がかなり高いのでマキラの魔法が打ち消されたのよ」
短剣を逆手に持って構え、魔族から視線を外さないままエリーゼが答えてくれた。
転倒魔法が失敗した……。
こんなことは初めてだった。
「こいつの背中にありったけぶつけてやれっ……!」
今だに魔族と鍔迫り合いをしてままの状態でライナスさんが指示を出す。
そしてリサさんが氷魔法を飛ばし、弓使いも矢を連続で放ち、片手剣士は背を切りつけた。更にエリーゼが首に短剣を真一文字に叩き込む。
だが、やはりダメージが入らない。
筋肉が盛り上がり傷を消してしまう。
「コロス。コロス……」
魔族がそう呟いた。
すると魔族の頭上に大きな魔法陣が浮かび上がった。
「エリーゼ。みなさんっ! 魔法が来ますっ! 避けてっ!」
嫌な予感がした僕はありったけの声で叫んだ。
そして後方へと全力で走り出す。
振り向くとエリーゼと片手剣士と弓使い、僧侶、そしてリサさんも僕を追って散開した。その直後だった。
真っ黒な炎が魔法陣から湧き上がり四方八方に向けてその炎が周囲を襲う。
「マキラ、伏せてっ!」
エリーゼの叫び声に反応した僕はとっさに石畳に身体を投げ出して伏せた。
するとその直後、僕が立っていた場所に真っ黒い炎がゴウッと吹き、遠くに流れていったのだった。
魔族には通用しないのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




