300話 そして半年後。
更新遅れました。すみません。
基本、10日に1回更新の予定です。
「……これはなんですか?」
僕は不自然な水たまりのようなものを指さした。
だが、それも仕方ないだろう。
重力に逆らって垂直に張り付いた水たまりなのだ。疑問に思うのは当然だろう。
「これは異空間から戻る出口だ」
ドロシーさんはなんのためらいもなく、そう答えた。もしかしたら呆れが入っていたのかもしれないが、僕は異空間に飛ばされた経験は少ない。
なので転移できる出入り口などそうそう見たことはないのだ。
「じゃあ、ここから現実世界へ戻れるんですね?」
「ああ。まずは私から入ろう」
ドロシーさんはそう言うと出口の水たまりのようなものに身を入れた。するとそこには壁がないようでドロシーさんの姿は水たまりの中へと姿を消す。
なので僕も覚悟を決めてドロシーさんと同じく水たまりの中へと進むのであった。
■
オーガ・ジェネラルたちを撃破したエリーゼたち4人は森を抜けた。するとすぐそこに街へと繋がる街道が左右に伸びているのが見えた。
「街道へ着いたわ」
「そうですねっ。でもどっちに進むんですっ?」
左に行けばニバーンメの街、右に進めばサンバーンメの街へと通じている街道だ。
見るに行き交う人々の姿はなく、道の向こうにはだだっ広い平原が広がっているだけであった。
「おや、あれはじゃんじゃろうか?」
タマユラが街道の向こうの平原を指さした。わずかに傾斜した向こう側にくぼみがあるようで、そこに水たまりが見えたのだ。
「……水たまりかな? ……ちょっと色が白っぽいけど」
フーシュがそう言うと調べるつもりなのか先頭になって歩き始めたのだ。なのでエリーゼ、フラララン、タマユラも続く。
「ただの水たまりじゃないみたいだね」
「そうね。そもそもここにだけ水たまりがあるのは変だわ」
そうであった。
ここが異空間だとわかっていても、森の中も土の街道にも雨が降った形跡は一切ない。にも関わらず眼の前の一箇所だけ直径2メートル弱の円形の水たまりが存在するのだ。
「……なんか気になりますっ。試しに小石を落としてみますねっ」
水たまりに異変を感じたフララランは足元に落ちていた指先ほどの小石を拾うと水たまりに落としてみるのであった。
すると水面がどろりと反応し、小石は姿を消す。
「ああっ。……なんか粘っこいですよっ、これっ」
そうだった。
水たまりはただの水ではなかったのだ。水のようにさらりとしてなくて、ちょっと粘度を感じるものだったのだ。
「……これって、出口じゃないかしら? ……確か以前に魔族が使っていた転移門の感じに似ているわ」
そうだった。
以前に女性中級魔族であるスザンナが魔物の群れをおびき寄せるために使った転移門の様子に粘っこさが似ているのだ。
そのことに気がついたフラララン、タマユラ、フーシュが大きく頷いた。
「そうですねっ。確かに転移門の感じに似ていますっ。どうやらここが異空間の出口ですねっ」
そしてエリーゼとフラララン、タマユラ、フーシュの4人は順々に水たまりに身を沈めるのであった。
■
時は大きく過ぎて半年後になった。
僕も誕生日が過ぎて15歳となり成人した。なのでお酒が飲める年齢となったのだ。
僕たちはコウ王国のロクバーンメの街に向かっている。
だが、その前に過ぎ去った半年の間に起こった出来事を語らなくてはならないだろう。
ドワーフの里の鉱山から中級魔族のダリドーンの仕掛けた異空間に飛ばされた僕たちだが、全員無事に元の現実世界に戻ることができた。もちろんエリーゼたちとはすぐに合流できた。
戻った先はやはり鉱山だった。
そこにはダリドーンの姿はなかった。どうやら僕たちを異空間に閉じ込めた後に逃亡したようだ。
なので、異空間内で戦ったダリドーンは幻影となるのだろう。
そしてそこで退魔官であるドロシーさんと別れた。
僕たちは鉱山内を調査したが魔族がなにを企んでいるかの確証は得られなかった。ただオーガの群れがいたことで以前の遺跡のように、ここで魔族の量産を計画していたのではないかと憶測するのであった。
口にはしなかったが、たぶんドロシーさんもそれに気づいているような気がした。
その後、僕たちはオツ王国のイーエフの街に戻り、男爵夫人であるエリザベート様の護衛をしてコウ王国のゴバーンメの街に到着した。
恐れていた襲撃だが、正体不明の騎馬隊にしばらく追跡されたが僕たち以外にBランクパーティである『不動の意思』とCランクパーティ『白銀の剣』も加わった総勢15名にも及ぶ護衛がいたことで諦めて去って行ったのであった。
そして僕たちは次の街へと舞台を移すためにロクバーンメの街に到着したのであった。
ロクバーンメの街は背の高い石壁に囲まれた城郭都市であった。
イチバーンメの街と似ているなと思ったが規模が違う。この街はコウ王国で2番目に大きい街と聞いている。
なんでも広大な農園から取れる小麦を国内各地に送るための集積地でもあり、街道の要所でもあるらしいのだ。
ちなみに人口も10万人はいるそうで、イチバーンメの3倍以上の人々が暮らしているそうだ。
僕たちがこのロクバーンメを選んだ理由は簡単なものだ。まだ行っていない街に向かおうと考えたからだった。
本当ならばゴバーンメの街で護衛依頼などを受けて移動したかったのだが、丁度よい依頼がなかったのだ。
新しい街に向かうのです。(`・ω・´)∩
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