291話 父の仇。
更新、またまた遅れてしまいました。すみません。
以後、がんばります。
「……でも? でも、どうしたんだい?」
「……え、ええ。……父上は魔族と相打ちになったはずなのよ」
フーシュに問われてエリーゼが困惑した様子で答える。
それは無理もない。今、彼女の父親はかすり傷だけでしっかり生きているのだ。記憶の通りであれば父親は魔族に胴体を串刺しにされたはずなのだ。
なのに、父親は健在。……これを意味するのはなんなのかエリーゼにはわからなかった。そんなときだった。
「ん? ……そこに誰かいるのか?」
父親がエリーゼたちの気配に気づいたようで、こちらを見るのであった。その顔を見て、その声を聞いてエリーゼは小さく息を漏らす。
間違いない。間違いなく懐かしい父親であった。
「そこに誰かいるのか……?」
するとエリーゼとフーシュは顔を見合わす。どう行動したらいいのか判断がつかなかったからだ。
だが、懐かしさに負けてエリーゼが物陰から立ち上がり父親に自分の姿を見せるのであった。
しかし戸惑いはある。なぜならば今のエリーゼは成長した姿である。父親が存命中のときのエリーゼはまだ幼さが残る少女だったからだ。
果たして自分を理解して受け入れてくれるのだろうか? かなりの不安を抱きながらエリーゼは父親に話しかけるのであった。
「……父上。私です。……エリーゼです。……お分かりになりますか……?」
年齢差がある。目の前の父からすればエリーゼはまだ幼い12歳くらいの少女であるはずだ。今の成人の姿には明らかに違和感があるだろう。なのでエリーゼは今の自分を認識してもらえるのかが不安だった。
だが、事態はまったく異なる方向へと向かう。
「……気のせいか。誰かいたような気がしたんだがな」
父親がそう発言したのだ。
そしてそれは冗談や芝居ではなく事実のようで、辺りを丹念に見回していることからもわかる。
「……そう。……父上には私が見えていないのね」
「そうだね。……やっぱりここは記憶の中の世界なんだね」
フーシュが残念そうにそう告げてエリーゼの肩を叩くのであった。
そしてエリーゼは改めて父親を見る。幻とわかっていても記憶の通りの父親。その表情、体つき、歩く仕草など、なにもかもが懐かしい。
そう思った。
そしてそんなときだった。
――グサッ!
瞬時だった。肉を貫く音が聞こえたのだ。見ると父親の胸が正面から背中まで串刺しにされていたのだ。
激しい出血とともに声もなくドウと倒れる父親。
――なにが起こった……!?
自らの動揺を隠し、エリーゼは周囲を見回す。するとボウッと姿を現す者があった。それは中級魔族であるダリドーンだった。
ダリドーンが突如姿を現したのだ。そして右手には血塗られた細剣があった。それが父親を貫いたのは間違いない。
「……クッ!」
エリーゼはその場を駆け出そうとした。父親の敵が目の前にいるのだ。これをためらう理由はない。
だが、そのエリーゼの肩に手をかけてフーシュが止めた。怪力のドワーフ族らしい力強さがあった。
「待ってエリーゼ。……今、あなたは冷静じゃない。
これは過去の土地の記憶を見せられている。そのことから考えるとあなたの父親は下級魔族と相打ちになったのではなくて、下級魔族を倒した後にダリドーンに刺されたんだよ。今、それを見せられているってことを肝に銘じて」
「……そうね。これは過去の記憶」
それは理解した。エリーゼは巻き上がる感情はこの際どうでもいいと抑え込む。
だが、ダリドーンを見たことでここが単なる過去の記憶ではないこともわかった。なぜならばダリドーンがエリーゼたちの姿を見てほくそ笑んだからだ。
つまり、ダリドーンはエリーゼとフーシュを明らかに認識しているのだ。
「……そうだったね。ここは過去の記憶である以前にダリドーンが造った異空間だったね。あたいたちは異空間で過去の記憶を意図的に見せられたってことだね」
フーシュの推察は正しい。
ここで今まで再現されたのは現実世界の過去の狼獣人の里で起こった惨劇の再現。だがその再現された舞台装置は中級魔族が仕掛けた異空間世界なのだ。
そのことを考えれば、眼前のダリドーンがエリーゼたちを認識できるのは当然なのであった。
「……つまりこういうことね。……私の父上はダリドーンに殺された。そしてわざわざダリドーンがそのことを私たちに伝えてくれたってことね」
すると不穏な笑みを一層深めながらダリドーンが完全にエリーゼとフーシュに向き直る。
「真実を知りましたね。……そうです。あなたの父親を殺したのも私なのです」
ダリドーンは語る。
この里へ下級魔族が襲った当時のことを。
魔族は戦士団の団長であるエリーゼの父親に倒された。だが下級魔族を案内したダリドーンが父親を倒したという事実だ。
つまり、今さっきエリーゼたちが見せられた現場は真実であったとのことだった。
「……どうして父上を殺したの!?」
「お答えはできかねます。……ただ私たちの計画に沿った結果であったと申し上げましょう」
魔族の正確な意図はわかっていない。
わかっているのは人間、つまり人族や亜人族たちを殺戮していることだけだ。なのでダリドーンの言う通り、これは魔族のなんらかの計画のひとつだったのだろう。
「お前を……倒す!」
「あたいも手伝うよ」
エリーゼは魔法収納袋から短剣を取り出した。もちろん魔族を倒せる魔剣:五束剣である。青緑色に鈍く光る刀身。
そしてフーシュは2枚の大盾を取り出した。ミスリル合金製のドワーフの里で新調した愛用品だ。
そしてエリーゼとフーシュはダリドーンと対峙した。
間合いはまだ遠く、近づかなければ剣が届かない距離である。
「私を倒さなければ、ここからは出られません」
「承知よ。……そして父上の仇でもあるから、確実に――」
「「――倒す!」」
エリーゼとフーシュの声が重なった。
するとそれが合図となって2人は魔族に向かって飛び出したのであった。
父の仇だったのです。(`・ω・´)∩
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