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129話 予約の治癒魔法。

【基本一日置きで夜の18時に更新します】

どうぞ、よろしくお願いします。

 

「……呼吸が落ち着いてきたな。本当に助かった。俺たちはCランクパーティ『命の絆』だ」




 そして自己紹介が始まった。

 片手剣のリーダーはガトルさんと言って20代半ばくらいの筋骨隆々の人族剣士だ。そして今、横たわっている負傷したウェールズさんは人族の槍士で同じく20代半ばの背の高い男性。そして女性2人は人族の魔法使いのシェールさんは10代後半、つまりエリーゼと同じくらいの可愛い系美少女で、猫獣人の弓使いのスザンヌさんは20代前半くらいのショートカットヘアのクール系美女だった。




「……ウェールズさんの腕がポーションでは完治してないわね」




 エリーゼが横たわり意識がないウェールズさんを見て言う。確かに腕の肉が盛り上がって治りかけているが、傷口がくっついていない。まだ半分千切りかけの状態なのだ。




「残念だがポーションで治らないのであれば……。ウェールズには覚悟してもらう必要があるな」




「そ、そんな……」




 魔法使いのシェールさんが悲痛な声を出して両手で顔を覆う。見ればスザンヌさんもやはり辛そうな表情だ。

 リーダーのガトルさんが言いたいのは、ウェールズさんは冒険者を引退するしかないってことだよね。

 冒険者は常に命を掛けて冒険している。だから敵との戦いで死亡したり大怪我したりするのは日常なのだ。

 こういう事態になってしまうのも仕方がないのかもしれない。




 僕はポーションの在庫を調べた。

 もしかしたらと思ったのだが、やはりなかった。僕が探したのは師匠謹製のポーションだ。師匠の作ったポーションならば身体の部位欠損でも治ると聞いていたのだ。だが今回のダンジョンの前、つまり魔族に襲われた人々を救うために使い切ってしまっていたのがわかった。

 なんとか方法はないのだろうか。そう思ったときだった。




「私に時間をくださいっ。……ウェールズさんを治してみせますっ」




 そう言ってフララランが立ち上がったのだ。

 そして口の中でなにやら呟き始める。これは予約魔法の前兆だ。どうやらフララランは魔法でウェールズさんを治療しようとしているようだ。




「フラララン。時間はどれくらい?」




 エリーゼが尋ねる。するとフララランはしばらく待つようにと手のひらを差し出して詠唱を続ける。

 やがて一段落経ったのか口を開く。




「30分くださいっ」




 それだけ答えると再び口の中で詠唱を始めるのであった。

 なにがなんだかわからないと言った表情なのは『命の絆』のみなさんだ。なので代表してエリーゼがフララランの予約魔法の件を伝える。

 するとガトルさんたちは、おおっ、と希望に満ちた声を出しフララランを見守るのであった。




 ただ30分をじっと待つには長い。

 なので僕たち『ひとつの足跡』とガトルさんたち『命の絆』はこれまでの情報交換をするのであった。もちろん予約魔法中のフララランと横たわっているウェールズさんは除外だが……。




 話を聞くに『命の絆』の4人は通路でジャイアント・スパイダー7匹に挟み撃ちにされたらしい。

 考えうるにかなり悪い状況だ。

 そしてその結果、クモたちを倒すには倒せたがウェールズさんが右腕と右腹を運悪く噛まれてしまったとのことだ。




 通路は幅がそれほどないので、前方もしくは後方からだけの接敵であれば対処はそれほど大変ではないのだが、幅が狭いので前後に同時に魔物が現れてしまった場合、自然に挟み撃ち状態になってしまうのだ。

 僕たちの場合はエリーゼの気配察知が優秀なので、魔物の動向をかなり前から判別できるので挟み撃ちにされることは少ないが、斥候職がいないパーティの場合、こういう場面で苦労があるのだろう。




「……お待たせしましたっ。今から治癒を行いますっ」




 突然、フララランがそう宣言した。どうやらいつの間にか30分が経過していたようだ。

 そしてフララランが横たわっているウェールズさんの真横に立ち、杖を高く掲げるのであった。




「行きますっ。光の精霊魔法ですっ」




 フララランが一際高くそう叫んだ。すると杖全体が白く輝き光の鱗粉のようなものがキラキラと舞い始める。

 その光の粉が渦を巻いてウェールズさんの右腕の破損箇所に集まるのであった。

 するとその光の粉が欠損したままの部分に埋まるように固まっていく。そして数分後には完全に右腕はくっついて治っているのであった。




「……ううう」




「おい。ウェールズ、大丈夫なのか?」




 ガトルさんがウェールズさんの真横に膝をつく。するとウェールズさんの目が開かれた。意識が戻ったのだ。そして辺りを見回し、やがて自分の右腕を上げてそれを眺めている。



「腕が治っている……!?」




「ああ、こちらのフララランさんが治癒魔法で治してくれたんだ」




 ガトルさんがそう説明した。ウェールズさんは呆然とした後、滂沱の涙となった。嗚咽が止まらずその声が小部屋に響く。

 おそらくたぶんウェールズさんは負傷した際に冒険者廃業を覚悟していたのだろう。その後隻腕となった後の生活とかもだ。

 だがそれがなくなった。完全に治った腕を左手で擦って確かめている。

 そんなウェールズさんの行為に誘われたのかシェールさんもスザンヌさんも目頭を抑えている。

 しんみりとしていて、それでいて心温まる空気が広まった。




「フララランさん。ありがとうございます。……しかし部位欠損まで治療してしまうなんて、さぞ高名な治癒魔法使いなんでしょうね?」




「いえ。私はエルフですので精霊魔法使いですっ。それに高名ではないですよっ」




 しかし僕も初めてみたが、それはガトルさんたちも同じようだった。こんな治癒魔法は見たことがないらしい。




「ですが、私はいちおうSランク冒険者ですのでっ」




 そう言ってフララランは服の中にしまっていた首から下げた冒険者組合の札を見せる。




「「「「ええっ!」」」」




 ガトルさん、ウェールズさん、シェールさん、スザンヌさんたちが絶句した。そしてためつすがめつフララランの札を見る。




「俺、……Sランクの冒険者なんて初めて会ったぞ」




「俺、すげー人に治してもらったんだなぁ……」




「私、Sランクの存在なんて都市伝説だと思っていたわ」




「あの魔法。Sランクなら納得ね」




 とても驚かれてしまった。

 そうなのだ。僕にとってフララランはもう見慣れているし、勇者スザクの特Sランク、師匠やミサイアさんのSランクと立て続けに会っているから、きっと麻痺してしまっていたのだろう。

 なのでガトルさんたちの反応の方が正解なんだろうね。

30分の予約魔法の効果なのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「いらぬ神にたたりなし」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。




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