125話 宝箱が出た。
【基本一日置きで夜の18時に更新します】
どうぞ、よろしくお願いします。
「倒したわ」
そして今度はタマユラが動いた。
瞬時に霧を発生させるとその中から脇差しを咥えたキツネを5匹召喚したのだ。
そしてそのキツネたちは1匹のスライムに襲いかかった。最初の2、3撃は浅かったので傷はすぐに再生されてしまったが、徐々に深い斬撃が入り始めて、やがて地面に薄く広がって終わりとなった。
そして残る3匹のスライムだが、これまたエリーゼとタマユラがあっと言う間に片付けたのだった。
その後、スライムの死骸はすっと床に吸い込まれるようにして消えた。
なるほど。これがダンジョン仕様ってやつだね。
「う~ん。私の出番がありませんでしたっ」
そう言ったのはもちろんフララランだ。
だがスライム相手では僕たちだけで十分なのだ。フララランには今後現れる強敵相手にがんばってもらおう。
「む? なんか出たのう」
タマユラがスライムたちがいた場所を指さした。
するとそこには天頂部が丸くなった木製の四角い箱がいつの間にか現れた。枠は金具になっている。
「ラッキーですっ。宝箱が出ましたっ」
そう言ってフララランが箱に手を出そうとしたのだが、エリーゼが手を横に伸ばし制止させた。
「待って。罠がないか確認するわ」
なるほど。
宝箱には罠が仕掛けられていることもあるのか。
エリーゼに聞くと、開けると刃物が飛んできたり毒ガスが吹き出すものもあるらしい。なんとも怖い話だ。
「……大丈夫ね。問題ないわ」
「わかりましたっ。じゃあ開けますっ」
フララランは宝箱を開けたくてワクワク顔で待っていたからね。許可が降りるとすぐに蓋を開けるのであった。
「ああっ! 金貨ですよっ!」
なんと宝箱の中身は金貨だった。
数えてみると100枚近くある。これは思わぬ臨時収入だ。魔道具なんかでも嬉しいけど、使い道が微妙なモノなんかもあるからね。だけどお金はなんにでも使える。僕はありがたく魔法収納袋に収めるのであった。
■
その後、僕たちはスライムと戦った部屋を出た。それからも部屋はいくつもあったんだけど、全部使用中だった。
「冒険者の数が多すぎるんだね」
「仕方ないわ。みんな稼ぎに来ているんだもの」
「まだ地下1階ですからねっ。もっと下の階層に行けば空いていると思いますっ」
「そうじゃのう。下に行けば行くほど魔物が強くなるらしいからのう」
そうなのだ。
冒険者だって命は惜しい。危険と実入りを天秤にかけてダンジョンに挑んでいるのだ。安全に戦える地下1階に冒険者が集中してしまっているのは仕方ないんだろうね。
そしてまた次の部屋の入口が見えた。
エリーゼが中を伺うと僕たちを手招きした。
「冒険者は誰もいないわよ。で、中にいるのがオークね」
それなら問題はなにもない。
僕たちはその部屋に入った。中にはオークが3匹いた。ちなみにオークの牙は冒険者組合で買い取り依頼が出ていたはずだ。
「転倒、転倒、転倒」
――ツルリン、ツルリン、ツルリン。
僕は先制攻撃として転倒魔法を発動させた。オーク3匹のそれぞれの足元に魔法陣が発動して、その結果、すべてのオークが派手にすっ転んだ。ドタンッと激しい音が部屋の中に響く。
「「「ブモモモモッ」」」
オークたちは懸命に立ち上がろうとするが、オーク程度の力では僕の転倒魔法からは逃れられない。
そして短剣を抜いたエリーゼと霧の中から脇差しキツネの群れを呼び出したタマユラによってものの数十秒でオークたちは絶命した。
「急いで牙を」
エリーゼの指示で僕たちはさっさとオークの牙を折り回収した。するとその直後、オークの死骸が床に吸収される。
これがダンジョンでは素材回収を急がなければならない理由だ。もたもたしていると床に吸い込まれて消えてしまうからだ。
本来ならばオークは魔法収納袋に回収して組合に買い取ってもらえば肉などが高額になるのだが、ダンジョンでは倒した魔物そのものは魔法収納袋になぜだか回収できない仕様になっているのだ。
とにかくダンジョンは地上の世界とは異なることが多いのである。
「また出番がなかったのですっ……」
フララランがしょんぼり顔でそう言う。
しかしエリーゼがそんなフララランの肩をぽんと軽く叩く。
「フララランの出番がないのは良いことよ。あなたの魔法が必要なときはこれから先に必ずあるから」
「そうだね。強敵が出たときはお願いするよ」
「期待しておるぞ」
僕たちからそう声を掛けられたフララランは右手をグッと握って笑顔になるのであった。そして今回は残念ながら宝箱はポップしなかった。まあ、毎回毎回出るものじゃないって聞いていたし、仕方ないだろうね。
■
それからも僕たちは適度に休憩を取りながらダンジョン地下1階を進んだ。もちろん地図を見ながらである。
すると未走破で地図には書かれていない箇所に到着した。
「……こういう理由だったのね」
「これは仕方ないよ」
「完全に崩れていますっ」
「これは入れんのう」
そうなのだ。
おそらく枝分かれの通路があったように思えるのだが、その通路は天井が落ちて完全に崩落してしまっていたのだ。
これでは先に進めない。
なので誰も立ち入ったことがないのもわかる。
「もし進むとしたら落ちた岩をひとつひとつどかさなきゃならなわね」
「時間の無駄ですねっ」
「この先に必ず希少な宝があるとわかっていれば手作業で掘り進むんじゃがのう」
エリーゼ、フラララン、タマユラの3人は完全に塞がっている通路の岩を触りながらそう言うのだった
確かにこの岩をどけるのは容易なことじゃなさそうだ。
宝箱が出たのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




