表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/305

119話 師匠が旅立った理由。

【基本一日置きで夜の18時に更新します】

どうぞ、よろしくお願いします。



 

 そして1階の組合の食堂。

 割と空いていたのでテーブル席で向かい合わせで座ることができた。

 そして師匠は当然のようにエールを僕は果実水を注文するのであった。




「……僕が知りたいのは、あの日なぜ師匠は置き手紙ひとつ残して旅立ってしまったんですか? 僕に直接伝えればよかったんじゃないですか?」




 僕は直球で質問をした。

 そうなのだ。これが僕の旅の開始の原点なのだ。あの件がなければ今の僕はいない。




「時間が惜しかったのだ」




「時間? 僕に言葉で伝える時間のこと?」




「そうだ」




 そして師匠は話を始めた。

 あの日の未明。深夜にミサイアさんが来訪したと言うのだ。そして勇者スザクから連絡があり、屋敷と麓の集落付近で魔族の出現が予言されたと言うのだった。

 そのことで師匠は書き置きだけを残し、ミサイアさんと魔族討伐を行ったとのことだった。




「ええっ! 僕たちが暮らしていた屋敷の近くで魔族が出現したんですか?」




「そうだ。その魔族は森の中に現れたので私とミサイアで倒した。そしてそれまで緩やかだった魔族の活動が活発になる傾向があるらしいと聞かされたのだ」




 そして魔族討伐後の早朝、空を飛んで集落を抜けてイチバーンメの街に向かったらしい。そこで勇者スザクが待機しているので合流するためだったと言う」




「麓の集落では師匠ひとりで飛んで行く姿を長の人が見たと言ってましたよ」




「ミサイアは私の認識阻害魔法で姿を消していた。騒ぎになると困るからな」




 なるほど。

 空を飛んでいたのは実際には2人。だけどミサイアさんの姿は見えなかったと言う訳か。




「とにかく書き置きをするのが精一杯だったのだ。お前にちゃんと内容を伝えるには時間が足りなかった。それにお前は連れて行けない。その理由はわかるな?」




「わかります。僕が未熟で足手まといになるからですね」




 そう答えると師匠は深くゆっくりと頷いた。




「だが、お前は成長した。短い間にも関わらずCランク冒険者になった」




「それは僕だけの力じゃありません。仲間たちの協力があったからです」




「そうだな。だがそれは私も同じだ。仲間がいてくれたからこそ今の私がいる」




 師匠は勇者パーティの一員だ。勇者スザクとブルーオーガのミサイアさん。2人は強力過ぎるほど強力な仲間なのだろう。




「それはそうと、師匠。どうして行く先々で僕に居場所を教えてくれなかったんですか? どの街の冒険者組合でも居場所は本人の希望で教えられないって言われました」




「それはお前のためだ。居場所を教えれば私と再会するのを最優先にして自分の成長を二の次にしてしまうだろう?」




 確かに……。

 そもそも僕の旅の目的は師匠を追いかけることだ。師匠とまたいっしょに暮らすために師匠を探すのがこの旅のメインテーマだった。




 なるほど……。

 早い段階、つまりイチバーンメの街で僕が師匠と再会してしまったなら、僕は師匠に着いて行くと発言してしまっただろう。

 例えそれが師匠たちの足手まといとなってしまうことだとわかっていても、甘えん坊の僕は駄々をこねたに違いない。

 だとすると師匠が僕の成長と強化を促すため、つまり一人前を目指すために旅を続ける、そして信頼できる仲間を増やすことを願って居場所を教えなかった理由がわかる。




「わかりました。ありがとうございます。確かに師匠の言う通りです。僕が最初の街で師匠と出会ってしまっていたら、Cランク冒険者となった今の僕はいないとわかりました」




「そうか。……では私は行くとしよう」




 そう言って師匠が立ち上がったときだった。




「質問がありますっ。なんでアルスイーヌはアルと名前を変えたんですかっ?」




 いちおうは僕たちの話が終わるのを待っていてくれたのだろうけど、相変わらずの空気を読まないフララランがいつの間にかこの場に立っていたのだ。




「フラララン。お前ってヤツは相変わらず……。まあ、いい。30年くらい前だったか、ある上級魔族に恨みを買ってしまってな。それで名乗る名前を変えた。まあ、元々私の愛称はアルだったから大して誤魔化しは効かんが、それでもいちおうな」




「わかったのですっ。……そうですかっ。上級魔族と戦ったんですねっ」




 意外な理由だった。

 まあ、誤魔化しが通用するかはわからないがいちおう別の名前だ。

 ……それにしても上級魔族ってなんだ? 魔族にも階級があるのだろうか。




「師匠。上級魔族ってなんですか?」




「簡単に言えば強い魔族だと言うことだ。今日私が倒した魔族は下級魔族になる。下級と上級は強さが違う」




 僕は愕然としていた。

 あの魔族が下級。……つまり弱いってことだ。だとしたら上級魔族の強さはどれだけなのだろう……。




「まだ違いがある。下級ははっきり言えば馬鹿だ。ろくに人語を話せない。だが上級は流暢に人語を話せる。知能もそれだけ違うと言うことだ」




 頭までいいのか……。

 それじゃまるで別物だな。




「上級魔族は数が少ないのですっ。なので鉢合わせしてしまう可能性は低いですよっ。安心してくださいっ。マキラが今後成長を続ければいいだけの話ですっ」




「そうだな。フララランの言う通りだ」




 どんな物事でも前向きに考えるフラララン。だが師匠までもそう言うのであれば、僕がもっと強くなればいいだけの話なのかもしれないな。




 そして気がつけば、エリーゼ、タマユラだけじゃなくて勇者スザクとミサイアさんもこの場に来ていた。

 全員がなんとなく納得顔をしている。どうやら僕と師匠の会話は声が大きかったようで内容はすべて伝わっている雰囲気だ。

 まあ、聞かれて困る内容でもなかったし問題はないけどね。




「そうだ。最後に訊く。マキラは今後どうするつもりだ?」




 師匠が僕に向かって尋ねてきた。




「……僕は仲間と旅を続けます。まだ師匠といっしょに行動するのは実力不足だと思いますから」




 そう答えると師匠は薄く笑みを浮かべた。

 すると勇者スザクが口を開く。




「エリーゼ。お前は今も勇者パーティに入りたいか?」




「いいえ。マキラと同じ回答ですが、私もまだ実力が足りません。もっと力をつけようと思います」




 エリーゼがそう答えると勇者スザクは深く頷くのであった。

 そして勇者パーティ3人は冒険者組合を出て行った。もうこの街に魔族は出現しないので旅立つそうだ。

 ちなみに今度は隣国であるオツ王国に向かうとのこと。どうやらそちらの方で嫌な気配があるらしいのだ。



 つまり魔族は今度はオツ王国に出現するのだろう。


師匠が急いで旅立った理由なのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「いらぬ神にたたりなし」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ