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115話 地下街で魔族の登場。

【基本一日置きで夜の18時に更新します】

どうぞ、よろしくお願いします。






 

 やがて街の中央と思われる場所に到着した。

 そこには露天の市場があり、賑わっていた。

 野菜や果物、肉などの食料品だけでなく、生活雑貨や武具なんかの店もある。




「気にはなるけど……」




「そうね。今は止めときましょう」




 僕の言葉をエリーゼが受け取る。

 そうなのだ。今はノーアたち少女4人を無事に送り届けるのが先決だからね。




「また来ればいいのですっ」




「そうじゃのう。依頼を達成したら、また来てもいいのう」




 そして僕たちは市場を横目に見て、先へと進む。

 ちなみに僕たちは少女たちを囲むように歩いている。もちろん攫われたりしないように警戒しているからだ。

 そしてノーアたち獣人少女4人は、まだ元気がない。

 でもそれは仕方ないだろう。誘拐団の檻から救出されてからまだ間もないし、この地下の街も見知らぬ街なので不安が強いのだろう。




 そんなときだった。

 先頭を行くエリーゼがさっと横に手を伸ばす。止まれの合図である。なので僕、フラララン、タマユラ、そしてノーアたち少女4人は足を止める。




「……なんか嫌な気配がするわ」




 ぴんと伸ばした耳を左右に動かしてエリーゼが警戒して言う。

 僕はとっさに周囲を見回す。市場であることから周りには大勢の人がいる。物を売る人、それを買う人、行く人、来る人、数え切れないほどだ。

 見た目怪しい人物はいない。……いや、疑おうと思うのであれば全員が怪しい。




「気配の数は?」




「今わかるのはひとつね。大勢の中に紛れて悪意を持つ者を感じるの」




 改めて見回す。

 しかし行き交う人たちに不穏な動きは感じられない。




「それは人ですかっ? それとも魔物ですかっ?」




「……人とも魔物とも違う感じがするのよ。ニバーンメの街で感じた悪意に似ている気がするわ」




「……そ、それって」




 僕が尋ねるとエリーゼは口をきつく閉じて深く頷いた。

 ……なんてことだ。

 僕はエリーゼがなにを言いたいのかわかってしまった。ニバーンメの街の中でエリーゼが感じた悪意。

 それは、――魔族だ。




 これは大変な事態になる。

 僕たち『ひとつの足跡』は魔族を倒せない。それは聖剣や魔剣、強力な攻撃魔法が使えないからだ。

 それはニバーンメの街でわかっている。

 その後にフララランやタマユラがメンバーに加わってくれたが、彼女たちならどうにかなるだろうか?




 フララランの予約魔法は発動までの時間を長くすれば長くするほど強力な魔法が放てると聞いている。

 だが、魔族相手に例えば30分とか1時間とかの時間稼ぎができる訳がない。そんなに長く戦いながら時間を稼ぐのはまず無理だ。




 そしてタマユラだが、彼女は基本、幻術使いだ。幻を見せて混乱させる支援魔法なのである。攻撃方法もキツネを使うことでできるのだが、とても魔族を倒せるほどではないだろう。




 それにである。

 今は僕たちだけじゃない。ノーアたち少女4人を親元へ送り届けなくてはならないのだ。僕たち4人では勝てない相手。しかも少女たちの無事を守りながらと言うハンデ付きなのだ。




「「「うわぁー!!」」」

「「「キャーッ!!」」」




 そんなときだった。

 前方だった。僕たちが進む進路方向で突然に悲鳴が上がり数人の人々が空中に飛ばされたのだ。

 そして人がいなくなり視界が確保できたことで、はっきりと見えたものがある。

 ――魔族だ。




「コロス、コロス、ミナゴロシ……!」




 元はただの通行人の男性だっただろう肉体がはち切れるように盛り上がり巨大化する。

 そして体色は青黒くなり、羊の角が頭にニョキニョキと伸びるのであった。

 発達した分厚い筋肉。そして赤く光る鋭い目。




「……ま、魔族」




 両手で握る杖に力が入る。

 そのときエリーゼからの指示が飛んだ。




「マキラは魔法で足止め。フララランは強力な魔法の予約。タマユラは幻術で魔族の視界を奪って。私はこの子たちを守るわ」




 エリーゼの判断は正しい。

 僕は転倒魔法の重ねがけで対応し、フララランは時間をかければかけるほど強力な魔法を予約できる。そしてタマユラは幻術が得意だ。

 そしてエリーゼにはできることが実はないのだ。

 魔族に攻撃することはできるのだが、すぐに傷を回復されてしまうので有効打にはなり得ない。なのでここはノーアたちの護衛に徹するのが正しいのだ。




「わかった」




「わかりましたっ」




「了解じゃのう」




 僕、フラララン、タマユラは大きな声で返事をする。

 そして、僕は魔族目掛けて魔法を放つ。




 ――転倒、転倒、転倒、転倒、転倒、転倒、転倒……。




 息が続く限り、魔力が続く限り、僕は魔法を唱え続けた。




 今、魔族は2メートル以上もある巨体で周囲で逃げ惑う人々に襲いかかろうとしている。

 武器はなく、手の指の先に伸びた鋭い爪を使っている。

 そんな魔族の足元に魔法陣が浮かび、割れる。そしてまた浮かび、割れる。浮かぶ、割れる。そんなことを繰り返しているとやがて先に浮かんだ魔法陣が割れる前に次の魔法陣が発生し始めた。

 すると魔族は転倒こそしないものの、明らかに動きが鈍くなり始めた。なにか重しでも付けられたかのように足を引きずっての移動になったのだ。もちろん歩みは遅い。




 すると突然、魔族の周囲だけ濃霧が発生した。

 顔面だけを包むように発生した濃い霧は確実に魔族の視界を奪った。

 その証拠に周囲の人たちはすべて魔族の攻撃範囲の外へと避難が完了していたからだ。

 そしてその霧だけど、魔族にぴったりと付き纏うようになっているようで、魔族がどの方向に移動しようとしても纏わり付き離れない。結果、魔族は視界がまったく効かない。




 一見、有効な対策をしているように見えるが、実は薄氷の上を歩くくらい危なっかしい。それは僕の魔法だ。

 連続して僕は魔法を発動している。だがそれは危うい天秤と同じで、いつ逆に傾くかわからない。僕が転倒魔法を放ち続けている反面、魔族も魔法をレジストし続けているからだ。

 今は僕の連続魔法が優勢だけど、僕の集中力、もしくは魔力が切れた瞬間、魔族は動きを取り戻してしまうだろう。

魔族が現れたのです。(`・ω・´)∩


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「いらぬ神にたたりなし」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。


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