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113話 タマユラたちの救出。

【基本一日置きで夜の18時に更新します】

どうぞ、よろしくお願いします。



 

 そしてこの空間を改めて見る。

 さっきまでは濃霧でわからなかったが冒険者組合のロビーくらいもある天井高く広い部屋になっていて片側には書架や机、椅子、ソファがあり、その反対側には鉄製の大きな檻が並んでいたのだ。




「マキラ。まだ魔法は解除しないでね。こいつらを縛り上げるから」




 エリーゼがそう言って自分の魔法収納袋に手をかけた。その瞬間だった。




「待って下さい。今、用意しますっ」




 それまで静かにしていたフララランがそう発言した。

 ……だが、待てよ? 

 僕は思い出す。天井、壁、床すべてが岩盤なのだ。だとしたらいつもの木の根の拘束魔法は使えないと言っていたはず。

 そう考えたときだった。フララランは自分の魔法収納袋から1本の長い金属棒を取り出したのだ。その棒は先端が折り返しの爪になっている。




「なにそれ?」




 僕が疑問に思って尋ねるとフララランは得意満面な笑顔を見せる。




「引っ掛け棒ですっ。これは魔道具で魔力や重さに関係なく引っ張れるものなのですっ。実際に使って見せますねっ」




 そう言ったフララランは棒を持って床で藻掻いている誘拐団の男のひとりに近寄った。




「お、おい。なにするつもりだ! 近寄るな!」




 その男は嫌な予感がしたのか立ち上がろうと両手を岩盤の床につけるが、そこでコテンと転倒してしまう。魔法陣は今回は直径2メートルくらいあるからね。霧の中だったから範囲を多めに取ったからだ。そしてその中では踏ん張ることはできない。




「安心してくださいっ。あなたにはなにもしませんっ」




 男にそう告げたフララランは棒の先端を魔法陣の端に引っ掛けた。

 そしてそれを引っ張ったのだ。すると魔法陣は男を乗せたままフララランに引き擦られて行くのだった。




「「ええっ!」」




 僕とエリーゼが驚きの声をあげてしまう。

 それもそのはずだ。展開されている魔法陣は魔力で視覚化されているだけであって、物理的にそこに存在しているものじゃない。

 つまりは見えているだけで触れることはできないのだ。




「だからこの棒は魔道具だと言ったのですっ。展開された魔力を引っ張る能力があるんですっ」




 なんともはやだ。

 見れば男はそのまま空き家になっている檻の中へと入れられた。

 そしてフララランは次々と残りの騒ぎ藻掻いている4人の男たちの魔法陣を引っ張り最初の男を入れた牢屋に閉じ込めた。

 そして鍵を掛ける。鍵は男の中のひとりが腰に金属輪でぶら下げていたのを引っ張り棒で奪ったものだ。

 直接手で取ろうとすると手を掴まれる可能性があるからね。その辺りはさすがのフララランだ。

 こうして誘拐団の男たちを完全に無力化することができた。

 まあ、ここから出せと叫ぶ声は騒々しいけど無視すればいいことだ。




「おーい。エリーゼ、フラララン、マキラ、我はここじゃ」




 声の方を向くと奥の檻の中にタマユラが入っていた。そしてその同じ檻にはそれぞれ膝を抱えて怯えている獣人の少女たちの姿があった。

 その数、4人。

 おそらく行方不明になった少女たちだろう。




「みんな安心して。助けに来たのよ。順番に檻から出してあげるから、ちょっと待っててね」




 そう笑顔で少女たちに告げたエリーゼは魔法収納袋からギザギザの針金を2本取り出した。あれは以前に鍵を開けたときに使った道具だろう。

 そしてエリーゼはタマユラと少女たちを檻から助け出すのであった。

 ちなみにエリーゼがわざわざ道具を使ったのは意味がちゃんとある。先程、フララランが誘拐団から奪った鍵束には合う鍵がなかったのだ。

 どうやらこの通路の地上部分の店から出ていった30代の男がリーダー格のようで、その男が大事な商品である少女たちの檻の鍵を肌身放さず持っていると思われた。




「確認したいの。ノーアは誰?」




 すると猫獣人の可愛らしい女の子が手を上げた。




「私です……」




 そして書類を確認し、残りの少女たちもやはり行方不明になった女の子たちだと判明した。それぞれ狼獣人、兎獣人、猫獣人だった。

 この少女たちに共通しているのは、やはり見目麗しいと言うことだ。やはり美少女の獣人少女を狙っての犯行だと思える。




「……しかし不覚じゃったわ」




 タマユラが助け出した少女たちの頭をなでて安心させると話し出した。

 攫われたのはやはり大道芸の所だったようだ。

 嫌な臭いのするなにか特殊な薬品を染み込ませた布で鼻と口を塞がれて意識が遠のいた所を大きな袋に詰め込まれて攫われてしまったとのことだ。




「それは特殊な魔法薬ですねっ。裏稼業の組織では一般的に使われていると聞いたことがありますっ」




 さすがに長生きしているエルフのフララランだ。そういう方面の知識も十分に持っているようだ。




「……まあ、お主たちがすぐに駆けつけてくれるのはわかっておったから、檻の中で目覚めたときに霧を発生させたのじゃ。なにも見えなければ混乱しよるし、我らに手出しできんからのう」




 その後、幻術のキツネたちを出現させて誘拐団たちを倒してしまおうと考えていた頃にちょうど良く僕たちが到着したとのことだった。




「……ちょっと見て下さいっ。ここに書類がありますよっ」




 フララランが執務机でなにかを見つけたようだ。

 僕たちは手招きされるままフララランの所へと向かう。




「契約書ね」




 それは何十枚に及ぶ各契約の書類束だった。

 いついつどこで誰から依頼されて違法奴隷を集めて出荷することが延々と書かれていたのだ。




「我ら以外にも違法奴隷に手を染めていたようじゃの。これは後で中身を精査するため全部回収した方がよかろう」




 タマユラが数枚の書類を見比べながらそう言う。

 そして契約書の束をすべてまとめると袖から例の魔法の風呂敷を取り出すとその中に収納した。




「冒険者組合、それとも衛兵隊。どちらに提出するか難しいわね」




 エリーゼが自分が言った言葉通りに難しい顔になる。

 それはわかる。

 以前にエリーゼが言っていたように、こういう組織的な犯罪は内通者や協力者が冒険者組合や衛兵隊に混じっている可能性があるからだろう。

 下手に提出してもみ消される可能性もあるし、それが原因で僕たち『ひとつの足跡』が逆恨みで狙われて襲われることも十分に考えられるしね。




 今も檻に閉じ込めた男5人は、ここを出せと大騒ぎしている。

 だが、ノーアたち獣人少女にもう怯えは感じられない。誘拐団を閉じ込めて自分たちを解放してくれた僕たちが完全に味方だとわかっているようだ。

 そしてもちろんエリーゼとタマユラと言う獣人少女が2人もいるのも安心材料なんだろうね。



タマユラたち獣人少女を助けたのです。(`・ω・´)∩



よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「いらぬ神にたたりなし」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。

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