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111話 誘拐団のアジト。

【基本一日置きで夜の18時に更新します】

どうぞ、よろしくお願いします。



 

 そうして角を曲がったときだった。

 一軒の店の前で足跡草が止まっていたのだ。

 それは小さな店でなんだかくたびれている。そしていちばんの特徴は看板になにも書かれていないことだった。

 文字も絵もなにもないことから、そこが何屋なのかがさっぱりわからない。




「……ここなのかしら?」




「そうなのかな。でも足跡は終わっているよね」




「ここなのですっ。誘拐犯は間違いなくこの店に入ったのですっ」




 それから僕たちは人目がつかないように物陰に隠れて様子をうかがった。

 その店の前の通りは建物同様に寂れていて、ほとんど通行人が通らない。

 そうして1時間くらい経過した。




 ちなみにエリーゼの気配察知は試した。

 だがその謎の店の建物にはなんらかの認識阻害の魔法がかかっているようで、もっと近づかないとはっきりわからないとのことだった。




「なんの動きもないわね」




「出入りがないよね。客も来ないし店員も出てこない」




「営業しているのかもわからないですねっ。……あ、誰か出てきますっ」




 そうだった。

 フララランが言った通り、ガチャリと木製の扉が開いて、人族の30代くらいに見える男がひとり出てきたのだ。

 帽子を被りステッキを持ったその服装は割と整っていて店の雰囲気と比べると上等に思える。




「追う?」




「うーん。どうかな。ひとりだけだしタマユラは店の中にいると思うよ」




「そうですねっ。あの男のことは取り敢えず保留にしたいですっ。それよりも店の中を探りたいですっ。もしかしたら他の店員は残っていない可能性もありますしっ」




 僕とエリーゼ、フララランは顔を見合わせた。

 そしてしばし互いに考え込む。




「……店の中を調べましょう。もちろん他の店員がいない場合だけよ」




「わかったよ。じゃあ早速店の中の様子を調べよう」




「わかりましたっ。じゃあエリーゼの気配察知で人の有無をお願いしますっ」




 辺りを伺いながら僕、エリーゼ、フララランはその店の前に到着した。

 幸い人通りがまったくなくて誰にも見つかっていない状態だ。

 そしてエリーゼが店の中を扉越しに探るように目をつむる。




「……変ね。誰もいないわ」




「どういうこと? タマユラがいないってこと?」




「それはおかしいですっ。さっき出てきた男はひとりだけですっ」




 するとエリーゼは思案顔になる。




「……ひょっとしてだけど、この店から運び出されてしまって私の気配察知の範囲外にいる可能性があるわ」




「裏口から運び出したってこと?」




「そうかもしれませんっ。そうじゃなきゃ別の建物に繋がっている隠し通路がある可能性もありますっ」




 そうなのだ。

 この目の前の店は小さい。建物内に住居部分はないようで、どこかから(かよ)いで営業している店にしか見えないのだ。

 だとすると、裏口があるか隠し通路があるかの二択だろうね。




「とにかく入ってみましょう。誰もいないのはわかっているから」




 エリーゼがそう言って扉を開けた。

 ギイッと軋む音をたてながら厚めの木製扉は開かれた。そして僕たち3人は店内に入る。




「……これ、なにかしら?」




 店には商品棚とかの什器はなにもなかった。

 ただ床の隅に大きな玉や楽器や派手な色のヒラヒラ衣装が並べられているだけなのだ。




「これっ、あれじゃないですかっ。大道芸人の道具ですよっ」




「「あっ……」」




 僕とエリーゼが同時に声を出してしまった。

 そうなのだ。これはさっきタマユラが攫われた公園で芸を見せていた大道芸人が使う道具だったのだ。




「ってことは、あの大道芸人たちは誘拐団の一員ってことね?」




「そうだと思う。あんなに目立っておもしろい芸をしていたら、みんな夢中になって見てしまうよ」




 つまり、あれだけ大勢の人がいても、その全員が大道芸に見とれてしまってしまえば背後から少女ひとりを攫うのは簡単だし犯行を目撃される心配もない。




「なるほどですっ。誘拐犯たちは大道芸で少女を引き付けて攫っていたんですねっ」




「結果的に考えればそうなるわね。現に私たちもタマユラが攫われる瞬間を見落としてしまった訳だし……」




 仕掛けはわかった。

 だがまんまと騙されてしまったって訳だね。




 そして僕たちは店の中、つまり建物内を捜索した。

 店はそんなに大きくない。大道芸の道具を見つけた場所を売り場とすると、奥に小部屋が2つあるだけだった。




 1つ目の部屋は空き部屋だった。

 テーブルと椅子が隅に片付けられていて、日常的に使われている感じがしない。

 そして2つ目の部屋の扉を開けたときだった。




「……地下室?」




 エリーゼが部屋の中央にある階下に降りる階段を見てそう口にした。

 階段は石造りで中は暗がりでどこまで続いているのかわからない。




「どうでしょうっ? 地下室なのか地下通路の入口なのかわかりませんっ」




「入ってみるしかないよね」




 僕がそう提案するとエリーゼとフララランが頷くのが見えた。

 そして僕たちは階段を降りることにした。

 先頭は斥候職のエリーゼ、続いて光精霊の照明が使えるフラララン、最後は僕だった。



大道芸人は一味だったのです。(`・ω・´)∩


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「いらぬ神にたたりなし」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。




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