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110話 タマユラの誘拐発生。

【基本一日置きで夜の18時に更新します】

どうぞ、よろしくお願いします。



 

 それからタマユラは通りを抜けた。もちろん僕たちもそれを追う。

 そして眼の前には樹木に囲まれた広い公園があった。

 ベンチや遊具、砂場があり、老若男女、子供たちが大勢集っている。

 公園は石畳ではなく、土の地面になっていた。そして昨夜降った通り雨の名残で水たまりやぬかるみがいくつもあった。




 そして公園の中に入って行くと一際大勢の人々が輪になって集まっている場所があった。賑やかな音楽が奏でられていて、人々は笑顔を浮かべている。なにか見世物でもあるのかもしれない。

 見ると先を歩くタマユラがその集団に向かって歩くのがわかった。




「あ、タマユラがあそこに行くみたいだね」




「そうね。じゃあ私たちも距離を置いて行きましょう」




「いったいなにがあるんでしょうっ。気になりますっ」




 僕とエリーゼ、フララランもタマユラとの距離を置きつつ、騒ぎの集団に向かうのであった。

 輪になっている人々に近づくと、その中心が見えた。

 そこでは真っ黄色でヒラヒラの奇抜な衣装を来た男が2人いた。

 ひとりは横笛を吹いていて、ひとりは一抱えもある大きな玉に乗り音楽に合わせて踊っているのだ。

 玉乗りをしている男は顔に道化師のような化粧をしている。そしてかなり上手だ。玉の上で踊っているのに落ちる気配がまったくない。




「大道芸人ね」




「珍しいですねっ。私も久々に見ましたっ」




 なるほど、これが大道芸人か。

 僕はもちろん初めて見た。

 芸を見せている男たちの前には広げられた小さめの木箱がある。

 見るとそこには銅貨が何枚も入っていた。どうやら見物客が入れたものらしい。そして大道芸人はそれで生活しているのだろうね。




 音楽は陽気で軽快な曲で、笛吹の男はずっと吹いている。そしてその音楽が続く限り、玉乗りの男も踊りを止めないようだ。

 気がつくと僕は夢中になって大道芸を見続けていた。そしてエリーゼもフララランも……。




 いちばん先に気がついたのはエリーゼだった。




「ねえ、タマユラはどこ?」




「「えっ」」




 言われて僕とフララランは辺りを見回す。

 だが、さっきまで姿が見えていたタマユラが見つからない。




「勝手にどこかに行くとは思えないよね」




「そうね。移動するなら私たちに声を掛けるか合図を送ると思うわ」




「……ひょっとしてですっ。攫われたんじゃないでしょうかっ!?」




 僕とエリーゼ、フララランは互いに顔を見合わせた。

 そして3人で同時に頷く。




「やられたね」




「やられたわね」




「不覚ですっ。大道芸に夢中になってしまいましたっ」




 そうなのだ。

 僕とエリーゼ、フララランは大道芸人の芸はあまりにも見事なので、つい監視の目を緩めてしまったのだ。

 きっとこの見物の群衆に紛れていた誘拐団の構成員にその隙をつかれてしまったと言う訳だ。




「まあ、タマユラだから大丈夫だと思うけど」




「そうね。身の安全だけは保証できるわね。……問題はどこに攫われたか、ね」




 するとフララランが笑顔を見せる。

 その表情は自信に満ち溢れていた。




「大丈夫なのですっ。タマユラがいた場所はわかっているのですっ」




 そういうとフララランはさっきまでタマユラが大道芸を見ていた場所に歩き出す。

 そして到着すると足元を指差すのであった。




「これはタマユラの足跡ですっ。そしてその隣の強く踏まれて泥がめり込んだ足跡。これが誘拐団の犯行時の第一歩目の足跡なのですっ」




「あっ。それってフララランの魔法で追跡できるってことよね?」




 エリーゼの質問にフララランは深く頷いた。

 見れば二歩目以降の足跡は他の足跡と紛れてしまっていて判別しづらい。

 だがフララランの足跡草の魔法は一歩目があれば使用可能と言っていた。これは運が良かったと言えるだろう。




 そして大道芸が続く中、僕たちは3分程待った。




「では発動させますっ」




 フララランが予約していた魔法が発動した。

 踏ん張ったことで大きく抉れた誘拐団の足跡に芝生のような草がニョキニョキと生えたのだ。




「成功ですっ。じゃあ行きましょうっ」




 そう発言したフララランを先頭に僕とエリーゼは続くのであった。

 そして足跡草は街の奥、つまりもっと人通りが少ない方角へと続いている。

 それを辿って僕たちは進む。




「そろそろ寂しい通りになるわね」




「そうだね。酒場とか娼館とかがある通りだね」




「そうですねっ。でも今は昼間ですから、それらの店は開いてないと思いますっ」




 足跡は僕たちが予想した通りに向かっていた。

 今は戸が閉ざされている酒場の前を通り、更に奥へと進んでいた。

 やはりこの通りは夜のための通りのようで、昼間は閑散としている。

 だが、足跡はまっすぐ通りを進んでいるのであった。




 それから草の生えた足跡はときには右の路地に入り、ときには左の路地を入りと複雑に進んでいた。

 最初は僕たち追手のことを考慮しての撹乱行為かと思ったが、方角的には同じ西側に向かっているので、おそらくこれが最短経路なのだろうと思った。




「更に奥に向かっているわね」




「そうだね。僕はちょっと迷子になりかけているよ」




「大丈夫ですっ。後ろに見える領主城が常に見えてますっ。あれを目標にすれば迷うことなく宿に戻れますっ」




 フララランにそう言われて振り返ると、居並ぶ2階建ての建物の屋根の上の遥か先に尖塔を持つ領主城が見えた。確かにあれを目印にすれば大丈夫だろうね。




タマユラが攫われてしまったのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「いらぬ神にたたりなし」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。

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