105話 捜索願いの案件。
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どうぞ、よろしくお願いします。
そして僕たちがふらふらっと開いている窓口に向かうのを混んでる窓口に並んでいる冒険者たちが怪訝そうに見ている。
まあ、確かにフララランの特権を使うのだけど今回は緊急事態の報告でもあるし、後ろめたさはないね。
「あの~っ、すみませんっ」
非常用窓口には受付の人がいなかった。
なのでフララランが声をかけたのだ。すると奥からひとりの女性職員が駆け足でやって来た。
きれいな黒髪を見事に編み込んで後ろで纏めている女性。
うん、リリエさんだった。
「えっ! フララランさん、またなにか用事ですか? ……申し上げました通り確かにSランクの冒険者にはこの窓口を使う特権がありますが、そうなんども雑事で使用されますと業務に支障が来すのでご遠慮願いたいのですが……」
そうだよね。
リリエさんの言いたいことはわかる。
だけど今回は違うんだ。
「違いますっ。今回は緊急事態の報告ですっ。街につながる岩盤の洞窟に魔物が現れたのですっ」
「ええっ……! ほ、本当ですか?」
僕とフララランは共に頷いた。
そしてリリエさんはまじまじと僕たちの表情を見て、それが嘘や冗談ではないことがわかったようだ。
「わかりました。支部長室でお話を聞きたいと思います。ご同行願えますか?」
僕とフララランは同意した。
そしてリリエさんの案内で僕たちは2階のいちばん奥にある支部長室へと通されたのだった。
そこにはもちろん熊獣人の支部長であるロイドさんが待っているはずだ。
「……と、言うことでスリを追って入った洞窟が外に繋がっていたのですっ」
僕たちは証拠としてさっき切り落としてきたゴブリンの右耳5つを提示している。
「……但し、その出入り口は小さくてゴブリン程度しか出入りできないと……。不幸中の幸いだな」
フララランの説明の後、ロイドさんがそう締めくくった。
「ゴブリンの死骸も放置してしまっています。その処理もお願いしたいのですが」
僕はすでに提出したゴブリンから切り取った右耳を示してそうお願いした。
するとロイドさんが頷くのが見える。
「さっそく調査隊を編成し差し向けます。その者たちに処理もさせましょう」
同席したリリエさんがそう言うので安心だ。
そして僕とフララランはこの件はエリーゼとタマユラから衛兵詰所に報告してもらっていることも伝える。
すると衛兵隊と調整して今後の処理を共同で行うと言ってくれるのであった。
また、外へと繋がる洞窟の穴は場所が特定できたら即、閉鎖するとのことだった。これならもうゴブリンたちが侵入して来ることもないだろうね。
ちなみにゴブリンは常時討伐依頼が出ているので報酬も出ることになった。ただし謹慎が明けてからだそうだ。
「……ところでお前たちの謹慎だが、今回の件で更に期間を短くできそうだぞ」
「本当ですかっ。あと3日くらいになりますかっ」
喜んだフララランが突然にそう言う。
……いや、いくらなんでも3日は無理じゃないか?
「う~む。3日は無理だが残り10日にしてやろうっ」
そういうことになった。
実はまたここでフララランがあと7日でお願いしますっ、と交渉を開始したのだが、さすがにこれ以上は無理のようで10日に落ち着いたのであった。
それから僕とフララランがエリーゼとタマユラに合流する。
エリーゼたちも衛兵さんたちにゴブリン出現の報告をしてくれたとのことだった。
これで今回のゴブリン騒動の件はすべて担当すべき所に預けたことになる。
あとは冒険者組合と衛兵隊に任せるだけだ。
■
それから4日過ぎた。
その間、僕たちはすることもないのでこのサンバーンメの街の隅から隅まで探索した。
なので下手な地元民よりも街に詳しくなってしまったかも知れない。
謹慎期間は残り6日。
そんなある日、僕たち『ひとつの足跡』4人は冒険者組合にいた。
いや、大した理由はないよ。することがないので暇つぶしに訪ねたためだし。
そして仕事依頼の掲示板をぼんやりと眺めていた。
そんなときだった。
「――これ、ちょっと!」
エリーゼが1枚の依頼票を指さした。
それは冒険者ランクを問わない全体依頼の掲示板だ。
「えっ……」
その依頼票を見た僕は絶句してしまった。
そこには聞き覚えのある案件が記載されていたのだ。
「捜索依頼ですねっ。なになにっ? 獣人の少女ですかっ」
「そうじゃのう。しかも何人も行方不明になっているようじゃのう」
そうなのだ。
そこに書かれていたのは獣人の少女たちが行方不明になっていて、その捜索依頼が出されていたのだ。
少女たちはすべてこの街の住民で家から出たところから行方がわからなくなってしまったようだ。
「サイラとミーラと同じかしら?」
「そうだね。タマユラの霧の街で保護されていた子たちもそうだよね?」
「ユミアとシリスとアンシュじゃのう。これは関係のある話なのかもしれんのう」
「そうですねっ。獣人の少女たちとサンバーンメの街と言うのが一致しますねっ」
そうなのだ。
エリーゼの故郷の里から攫われたサイラとミーラはサンバーンメの街に連れて行かれそうになった。
そしてタマユラが保護していたユミア、シリス、アンシュもサンバーンメの街に攫われそうなところを隙を見て逃げ出したと聞いている。
「やっぱり、この街に違法奴隷を扱う誘拐組織があるのかしら?」
「裏通りとか治安悪そうだったもんね。衛兵さんたちも巡回していなかったし……」
僕たちはこの数日間、このサンバーンメの街の隅々まで歩いた。
そして裏通りに行くとそこは安酒場、娼館などの夜の商売や、なにが売っているのか、そもそも営業しているのかもわからないような看板がない店などがたくさんあった。
しかも昼夜問わず路上で人相が悪い連中が屯していたり、寝ていたりする宿無しらしき人々の姿が多く、物乞いもかなり見かけた。
そしてその通りでは巡回する衛兵さんたちを一度も見かけていない。
なんていうか、行政に見捨てられた、もしくはあえて放置されているような印象を持ったのだ。
もしかしたらそんな中にまっとうじゃない商売。つまり違法な奴隷を扱っている組織があるのかもしれない。
だとしたら2度も誘拐未遂に関わった僕たちが無視できる訳がない。エリーゼの顔を見てもフラララン、タマユラの顔を見ても同じ覚悟の表情だった。
獣人少女行方不明事件発生なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神にたたりなし」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




