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100話 追跡の魔法。

【基本一日置きで夜の18時に更新します】

どうぞ、よろしくお願いします。



 

「どうして? 早くしないと追いつけないよ!」




 僕は焦って思わず抗議混じりの声を出してしまう。

 だがフララランはそれには構わずに一層笑みを深くして足元を指差した。




「落ち着いて下さいっ。ここに足跡がありますっ」




 見ると地面にいくつもの足跡があった。

 どうやら水はけが悪い土の道のようで泥に足跡が残っているのだ。




「これはマキラがぶつかられてふんばった足跡ですっ。で、こっちがスリの鼠獣人の足跡ですっ。これがわかれば大丈夫なのですっ」




「……どういう意味? この足跡を辿ろうとしても道には大勢の足跡が残っているから判別するのは無理よ」




「そうじゃのう。いくつも混じってしまってるのう」




 そうなのだ。

 エリーゼやタマユラが指摘したように道にはたくさんの足跡がある。そして人々が次々に歩くものだから足跡の上に足跡が重なり、ぐっちゃぐちゃになってしまっているのだ。

 だけどフララランは余裕の笑顔だった。




「最初の一歩さえ残っていれば私の魔法で追えるのですっ」




 そう答えるとフララランは口の中でなにやら呟き始めるのであった。

 おそらくたぶんなにかの魔法を予約しているのだろう。




「……大丈夫なのかしら?」




 エリーゼが不安そうに言う。

 それは僕にはよくわかる。

 あのスリの鼠獣人はもうすでにかなり遠くにまで逃げているに違いない。

 そして当然ヤツは地元民だろうから地理には詳しいはずだ。

 それに対して僕たちは土地勘がぜんぜんないのだ。

 つまりスリが逃げそうな場所やその連中が屯している場所などもぜんぜん見当がつかない。




「お前ら余所者か。ちなみに言っておくが衛兵に訴えても無駄だぞ」




 薬草売りの店主が無愛想にそう言った。

 話を聞くに、この市場にはスリなど日常茶飯事なので衛兵詰所に被害届を出してもまともに対応してくれないそうだ。

 自分のことは自分で守れ。つまりは自己責任と言うことらしい。

 どうも釈然としないが、それがこの市場でのルールらしいのでそれに不満を持つなら最初から出入りしなければいいそうだ。




「お待たせしましたっ。これでスリを追えますっ」




 時間にして3分くらい経過したときだろうか、やっとフララランが口を開いたのだ。

 そしてフララランは足元を指さした。

 すると……。スリの足跡に短い草が生えたのだ。それは芝生によく似ていて足跡の形全体にこんもりと茂った。




「なにこれ……?」




 呟いた僕だけじゃない。エリーゼもタマユラも驚いた顔になっている。




「足跡草の魔法ですっ。これを辿って行けばスリの居場所がわかるのですっ」




 なんとも奇っ怪な魔法だ。

 だが考えてみればフララランはエルフなので植物系の魔法が得意だ。いつもは捕縛用に木の根を使っているし。




「じゃあ追っかけましょう」




 エリーゼの言葉に僕たちは頷いた。

 そして足跡草を辿って市場の道を歩くのだった。

 市場が大勢の人々でごった返しているが、足跡草はどこまでも続いているので見失うことがない。

 これなら安心して追跡ができそうだ。




「ねえ、フラララン。この魔法はどれくらいの時間、効果があるの?」




 気になるので僕は尋ねた。

 するとフララランはちょっと考える顔になる。




「そうですねっ。……だいたい2時間くらいでしょうか。その時間になると一斉に枯れて消えてしまいます」




「なるほど。じゃあ大丈夫だね」




 スリに巾着袋を盗まれてから、まだ10分くらいしか経ってない。

 いくらなんでも2時間もあれば、追いつけるだろう。

 向こうもずっと歩き続けている訳じゃないだろうし、どこかに立寄ったり、それとも隠れ家に帰っているかもしれないのだ。




 それからしばらく追跡を続けた。

 足跡草はやがて市場を抜けて人通りが少ない通りへと向かっている。そして足跡草の状態だけど、残された足跡全部に一斉に生えるんじゃなくて、魔法使用者であるフララランが近寄ると草が生えてくる。

 これなら追跡されている者には感づかれることはない。




 そしてその間、スリの鼠獣人は一度も立ち止まっていない。

 それは足跡草を見れば足の運びがすべてわかるから理解できる。

 そんなときだった。

 それまでしばらく無口だったエリーゼが突然、口を開いたのだ。




「ねえ、フラララン。……この魔法、とっても便利なんだけど、どうしてサイラとミーラが攫われたときに使わなかったのかしら? この魔法があればすぐに見つけられたと思うんだけど……」




 あ、なるほど……。

 エリーゼの故郷である狼獣人の里からサイラとミーラが誘拐団に攫われたとき、僕たちは森の中をずいぶん探した。

 なので、もし、あのときにフララランがこの魔法を使ってくれれば捜索はもっと楽だったはずだ。

 するとフララランが答える。




「あのときは使えなかったのですっ。この魔法は追跡対象の一歩目の足跡に残された少量の魔力に反応するのですっ」




「そうだったのね。理解したわ」




 エリーゼが納得顔で頷いた。

 ちなみに人にしろ魔物にしろ量の違いはあるけれど、生きとし生けるものすべてに魔力が宿っている。そして魔力が多い人だけが魔法が使えると僕は師匠に教わっている。

 だけど魔力自体は誰にでもあるのだ。それが足跡に残留しているという理屈はわかる。

 そしてサイラとミーラが攫われた件では、サイラにしろミーラにしろ、そして誘拐団のラルゴたちにしろ、犯行時の一歩目が見つかればこの足跡草の魔法が使えたと言うことだろう。




「良かったですっ。そうなのですっ。人は事を起こすときの一歩目に無意識に微量の魔力を使うのです。……漏れ出ると言った方が正解かもしれませんっ。なので一歩目が見つかるかどうかでこの魔法が使えるか決まるのですっ。それにですっ。森の中で足跡草が生えても他の草と混じって判別しづらいですっ。……あ、あれっ? その言い分だともしかして私があのとき足跡草の魔法のことを忘れていたと思ったんですかっ?」




 フララランがちょっと不機嫌な顔になる。

 片方の頬を少し膨らませているのが、なんとも可愛らしいね。




「そ、そんなことないわよ。ただ気になっただけよ」




 答えるエリーゼは少々慌て気味だ。

 それは僕も理解できる。フララランはちょっと抜けているところがあるからね。




「わかりましたっ。じゃあ追跡再開ですっ」




 どうやらフララランの機嫌は治ったようだ。

 そして僕たち4人は足跡草を追って更に進むのであった。



追跡用の魔法なのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「いらぬ神にたたりなし」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。

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