四 新しいゲーム
グリーンが16歳に成った頃、時空パトロール本部のステーションは
騒然としていた。
事故にあった異星人の仲間が、ゲームを始めて、開示の情報が入ってきた。
ゲームの競技者は、近代ヨーロッパを席巻した総統と呼ばれる男だった。
通常では、選んではいけない人物だったが、開催者が経験不足だった。
神の声で総統に情報(北の共産主義国の攻撃を、3カ月早めて、冬が来る前
に占領せよ)を与えて、北の共産主義の大国を、あっと言う間に占領した。
東の帝国主義の島国は脅威を感じ、総統との同盟を破棄してきた。
その為に、連合軍の大国の大統領は、参戦する理由を失った。
総統側で、他に神の声が聞こえるのは、総統の警護をする若い兵士2人だった。
ゲームの暗殺者は総統配下の元帥であった。
神の声が聞こえるのは、連合国の大国の大統領と共産主義国の代表であった。
ゲームの成功は、総統の世界征服だったが、それは不可能に近かった。
異星人もそれは分かっていて、ゲームが終了すれば良かった。
もう、歴史が総統に有利に動いている。
元に戻そうと、時空パトロールは奔走した。
東の島国の軍部の上層部に、アンドロイドを配置してあった。
共産国の代表は国を追われて、東の隣国に部下達と逃げ込んでいた。
その東の隣国は、東の島国の傀儡政権であった。
アンドロイドは東の隣国に行き、代表を補佐し、国を取り戻す戦いを開始した。
東の隣国の国境に駐留していた、共産国の精鋭部隊を中心に反撃を開始した。
共産国は広い国で東側は手薄だったので、首都付近まで進撃できた。
その時点で、貢献した軍人のアンドロイドを、南方方面に派遣した。
東の島国は、傀儡政権に不服を持ち対立する国と紛争を起こした。
それが拡大し、その国に侵攻するようになり、
連合軍の大国と対立するようになった。
そして、総統との同盟を元に戻し、世界的規模の戦争に突入して行った。
これで、歴史はある程度修正出来たが、総統が持っているシールド発生機
が問題だった。不死身になり、死亡年月日が大きくずれると問題になる。
暗殺者の元帥は暗殺に失敗し、処刑されて、シールド発生機を、
総統に奪われてしまった。
今回のゲームには、前回のゲームの担当の上司と部下も参加する事になったが、
時空パトロールの全員が関わる事態なので、チームの一員だった。
「今回のゲームのシールド発生機は何ですか?」部下が聞いた。
「拳銃で安全装置を外すと、シールドが発生するらしい」
「総動員のようですが、私達の役目は何ですか?」
「3チームが総統の監視で、我々は警護の兵士の監視が役目だ」
「前回のゲームのように、総統に異星人が乗り移っている事は
考えられないですか?」
「その可能性はあるが、今は不明だ、そして、元帥が暗殺を失敗したのは、
総統の廻りを警護している、2人の兵士の仕業だった。もう少しで、
爆死されられたのを、凄い速さで総統を移動させた。異常に動作が早いので、
しっかりと監視しなければならない」
「分かりました。それで、今回の情報ロボットは何ですか?」
「擬態が出来る、蛾のロボットだが、総統を警護している兵士は、
人間離れしているので見つかる可能性もある」
「今回は暗殺者のアンドロイドは、用意してないのですか?」
「用意してないらしい。上層部はこのまま、歴史的に自然に収まるのを
期待している。駄目なら、戦闘用アンドロイドの投入を考えているらしい」
それから、上司と部下は警護の兵士の観察を始めた。
常に警護の兵士は総統と一緒にいるので、監視は重なっていて、
補助的な役目になっていた。
警護の兵士は、いつも総統の側にいて廻りを警戒していた。
時々、目に見えない早さで移動した。
「この警護の2人は人間ですか? ゲームの規則では、
人間以外は駄目ですよね?」
「人間で間違いはないが、能力が三倍になる装置が付けられている。
開示されていて、認められたそうだ」
「これでは、総統は倒せないのではありませんか? それに元帥の
シールドも総統が手にしている。方法はあるのですか?」
「共産軍が北から、連合軍が南から進軍している。挟まれて総統の軍隊
は殲滅するだろう。しかし、総統とシールドを持ったもう1人は、
爆弾が直接落ちても無事だろう。残った2人をどう倒すか今検討中らしい」自信がなさそうに上司は答えた。
深刻な報告が入った。歴史の修正が少し雑だったので、
東の島国の終戦が2年程遅くなった。
共産軍との戦いのために、傀儡政権に駐留していた100万の軍隊を、
南方の前線に送った。
共産軍との間で不可侵条約を結んだからだ。
それと、連合軍の大国と中部太平洋の海軍同士の戦いは、時間のずれで
互角になったことも原因だった。
2年の遅れは50年間で、少しずつ調整すれば修正できるが、2年の遅れで
制海権はまだ東方の国にあり、総統が東の島国を経由して、
第三国へ逃亡することが懸念された。