表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/16

二 序章2

  透明のケースを覗き、時空パトロールの部下の検査員は不思議そうに

ポツリと言った。


「最初は生命反応が無かったが、このステーションに来てから、僅かだが

生命反応が出て来た。この子は何処からエネルギーを貰っているのか?」


ケースの中には、シルバー色の女性のアンドロイドが仰向けに寝かされていた。


胸の部分に幾つもの穴が開いていた。下腹部のパネルが開けられていて、

中に胎児の形をした緑色の生き物が微かに動いていた。


「母体からではないのか?」上司の検査員は部下の疑問に

分かっていたように答えた。


「でも、母体のアンドロイドは、機能停止状態でエネルギー源は

無いはずですが?」

不思議そうに部下の検査員は聞いた。


「それじゃ、母体から離して確認してみるか?」


「勝手に離して良いのですか? 上部に許可が必要ではないですか?」

と部下は不安そうに聞いた。


「実は上部に全部任されている。それに母体は修理が必要で、

何時かは離さなければならない。心配するな」と言いながら、

上司は保育装置らしき物を用意した。


そして母体の入っているケースを開けて、操作用ロボットで、

母体の腹部から子供らしきものを取り出し、装置に入れた。


そして、部下に3日ほど経過を観察するように伝え出ていった。


 このアンドロイドは、異星人のゲームに対応するために造られた。


ゲームは地球の時空に影響が出るため、ゲームが不成功になるように、

前もって仕掛けておいたものだった。


今回はゲームが無事終了して、回収する機会を窺っていたが、

なかなか機会が無く、銃撃され機能不全になった時点で回収できた。


アンドロイドが妊娠とは異例だったが、男のアンドロイドと出会い、

暮らすようになり、お腹に子供の基盤を作った。


この時期のアンドロイドは自分を人間と思っていた。


3日後に、上司が来て、部下に経過を聞いた。


「体重が4g程増えています。それ以外は変化ありません」


「4gか? 湿度で影響される範囲だけど、微妙な数値だな? 

成長している可能性も考えられるな」

「この装置の中では温度も湿度も管理され、変わっていないので湿度の影響

はないと思いますが?」


「そうだな。環境の数値を計測して確認しよう」と上司は指示した。


部下は装置の計測数値を見ながら

「えーと、温度25度、湿度60%で割合は・・・・ あー、窒素の数値が

68~70%の間を行き来しています」


「エネルギー源は空気中の窒素だな」


「窒素を食べる? そんな生命体いるのですか?」


「宇宙は広いから色々な生命体がいる。地球だと、植物とか藻の一種だな」


「じゃー、この子は動くこともなく、ただ植物のように大きくなるだけ

ですか?」


「いや、違うと思う。今回のゲームを、開催していた異星人達が

管理していた。グリーンと言う或星があった。其処の生物は、

地球の植物と同じ形態だが、違う処は動くことが出来て知能もあった。

異星人は、その星に地球から出る二酸化炭素を供給していたが、

それも出来なくなり、その生物は死滅した。ただ、一部は異星人が保護して

生きているらしい。何処で保護しているかは分からない」


「それと、この子が関係あるのですか? 遠い惑星と地球、

とても接点など無いと思いますが?」


「この事は確定していないので推測だが、この惑星の生物は、植物と同じで

窒素も食べている。地球と違い窒素が少なく、その方法は瞬間で窒素を

固形にして食べる。しかも、固形にされた窒素は無色透明でかなり硬いそうだ。

異星人はそれを応用して、地球のゲーム用のシールドを作り、

その生物を地球に連れて来た可能性がある」


「そのシールドはゲームに使用された宝刀の事ですか?」


「多分そうだと思う、宝刀に仕込まれていて、宝刀を持っていたアンドロイド

の小次郎からアイラに移った。アイラは子供が欲しくて、頭脳の基盤をお腹の

中に作っていて、体も作っていたが、生命の素がなかった。

そこに、その生物が入ってきて合体した」


「其処まで分かっていたのですか?」


「ごめん、この3日間の調査で分かった。あくまで推測の域を出ないが」

と上司は答えて、以後の経過観察を部下に依頼した。


この子は人間の子と同じ速度で成長した。


顔と体は人間の子と変わらなかったが、皮膚の色が緑色だった。女の子で、

名前はグリーンと付けられた。


2歳になると、検査部門を歩き廻り、言葉も喋れるようになり、皆に可愛がられ

ていた。とくに部下は可愛がっていた。


ある時に、アンドロイド一体が保安庫から消えた。誰かが起動させて

連れ出した。


それに、アイラの記憶媒体も無くなっていたので、上司は察しが付き、

グリーンの監視部屋に入った。


案の定、アイラの顔をしたアンドロイドが座って、グリーンを抱いていた。


「グリーンがママに会いたいと、何度も言うので、可哀そうで連れて来ました」

と側にいた部下は焦って話した。


上司は、部下に遠隔でアンドロイドの動作を制止させた。


「ママどうしたの?」不安そうに顔を覗き込むグリーンを、部下は抱き上げた。


そして、上司はアイラの記憶媒体を、アンドロイドから抜き、再起動させて、

保安庫へ向かわせた。


「ママ、どこにいくの?」グリーンの言葉にも振りかえらずに、

アンドロイドは部屋を出て行った。


上司は部下に話があると伝え、グリーンを部屋に残し、一緒に部屋を出た。

そして持ってきた探知機で部下の頭の廻りを調べた。


「ああー 此処か」と言って、首の後ろに刺さっていた、

緑色の小さい棘を抜いた。


その時に、部下は我に返ったようで呆然をしていた。自分が操られていて、

それが、グリーンの仕業と分かり驚いていた。


それに、アンドロイドに抱かれていた時に、グリーンは数本の髪の毛を

伸ばし、アイラの記憶媒体の情報を収集していた。


それ以来、グリーンはある範囲内に監禁され、部下は首廻りまで

隠した防護服を着て接していた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ