音の考察会 図書館で調べ物
玲奈は佳奈多から耳にした音の考察について考えていた。
音の考察に一言言えば、音でどの様に考察するのか?と言うことだ。
学校が所有する図書館にある資料によれば、音の考察会の歴史は学校そのものの歴史より少し浅い位で、ほぼ同一の時の流れがある。
最初の頃は生徒が面白半分に、“音で人を絞殺出来るか”と言う題に基づき、推理小説をグループで各々が書いた事が始まりだとされているし、小説の内容を書き出した資料もある。
それが発端となり生徒達の悪ふざけがあり教師ぶちギレ事件有り、時代の流れもあって音楽の演奏会の現在となったらしい。
「何とも下らない。」
「何か書いてありましたか」
「最初に推理小説、次に張りぼてを使っての演習な実演、数年経ってのイベント事故、次の年から危険回避の為にかねてから生徒がリクエストしていた演奏会へと全面移行して、更に数十年後に書類のみの実験が容認されているかな。」
「……どんな事故だったんですか」
「実践中の事故で一人での落雷事故。危うく多くの人巻き込む所だったんだけど、件の生徒が危険だろうからって映像を遠隔で撮影して他人を巻き込む事は逃れって……まあ、色々書いてある。
雷の力を使って電池を作れないかって考えて、感電死の一歩手前迄行ったんだって。」
「どの時代にも馬鹿者はいるのですね。」
「……沙都、水無雲新四郎って名に覚えはあるかな。」
苛立った視線を玲奈に向ける。
「此処にこう書いてある。当該生徒である水無雲新四郎は一命を取り止めたが……って。」
「何ですかそれは。」
沙都が近付いてきたので資料を示した。
資料にある地元紙を読む沙都の表情は、段々と翳っていった。
そのまま放って置くと資料を思わずぐしゃぐしゃにしそうだったので、ソッと資料を掴むと、そっと沙都が手を離した。
「でもたぶん違うでしょ。この水無雲新四郎は雷に打たれた後、右半身不随ってなってるから。」
「しかし、似た様な名前ですし。関係者でしょうか。」
沙都の沈黙は不穏な空気を増していく。
「別の資料を見ましょう。」
「雷に打たれるのって……。」
「気になりますか。」
「いえ、それよりも御題はどの様になされますか」
「う~ん。生徒の自主性に任せているって言われてもねぇ。」
“そうですか。”沙都は懐中時計を見る。
「若し、玲奈さま。もうそろそろ御茶の仕度をしたいのですが。」
「そうですねぇ。」玲奈は雫無く椅子の背凭れに凭れ掛かり窓の外を見る。
「丁度いい頃合いだし引き上げよう。」
玲奈が立ち上がり資料を片付け始めた。沙都はその光景を恍惚と見入る事で先程の苛立ちを忘却の彼方へ追いやる事にした。