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梅川玲奈さんの日常  作者: 黒牛魚のごった煮
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玲奈さん、集会に誘われる その2

 コンッ!と甲高い音をさせボールは青い空を背景に、どこかへ跳ね跳んでいく。

「プレイヤー青5ポイント!」

 レフェリーの声が原っぱの空間へ心許なく広がる。その音を気に止めることなく女が草に埋もれているボールを蹴り、動く四足ネコ型ロボットにぶち当てる。

 女は長い髪をぐるぐると1つに纏めあげて、激しい動きでも髪が邪魔にならないようにしている。

 女が走る周りから蜘蛛の子散らす様に四足ネコ型ロボットが、草原を逃げていく。

 女はテニスボール大のボールを空飛ぶロボットにぶち当てる。

「プレイヤー青10ポイント」

 近付く対戦相手に牽制ボールを投げつつ、移動するプレイヤー目掛け足元にあるボールを蹴り上げぶち当てる。

「プレイヤー青8ポイント!」

 一方的に、青プレイヤーが点数を重ねていった。


「玲奈さん一方的ですね。・・・・動ける人なんですね。」

 瞳は下草の生えた高水敷こうすいしきを他の参加者と入り乱れて駆け回っている玲奈をみていた。

「筋肉じんわり有るなぁと思ってたけど、スタミナもあったんだね。」

 佳奈多は食べ掛けのホットドックを片手に観戦していた。追加の昼食である。玲奈の放った直球がまた、空飛ぶトンビ型ロボットに当たる。

「筋肉有ったんですね。気付きませんでした。」

 常世里見は風で暴れる髪が、眼に入らない様に格闘している。常世の目の端には、ボール同士が衝突し、跳弾が参加者をびびらせているのが見える。

「合同授業の時に筋肉うっすら見えてたぁ~ぁ。睨まないでよ。良いでしょ、女同士なんだし。」

 沙都の目は、咎める雰囲気を醸し出していた。

 取り敢えず佳奈多はホットドックを味わいつつ片付ける事にした。

「ところでいつの間に、玲奈さん運動着用意したんですかね?」

 皆が沙都をみる。応援グッズに埋もれた沙都は警戒心も露に答える。

「玲奈様から直接お聞き下さい。私は侍女なので個人情報を御教えする事は控えさせて頂きます。」

「沙都タオルプリーズ!」

 玲奈が沙都に尋常ではないくらい近付く。

「皆、私の沙都を苛めないで。沙都の心を乱して良いのは私だけなのだから。」

「私は玲奈様の御世話をするので心を乱さないで下さい。」

「・・・・・沙都・・冷たい!」

「冷たくは有りません。」・・・・の?』

 常世の問い掛けに、肉体強化はインドアの必須項目である。と玲奈は語る

「冷たくは有りません!」

 肉体と文科系に対し、玲奈が指摘する関連性と玲奈の提唱に3人がドン引いている。

「冷たくは有りません!」

 玲奈は沙都を見て、両手を広げた。無表情である。

 沙都は無表情なまま、じっと見つめ十数秒するとおずおずと両手を広げ玲奈とハグッた。

 玲奈は満足そうに頷くと沙都の頬に頬擦りキッスをした。





 レーダーには、十キロ圏内に敵影がない。荒れた土地を戦車隊が突き進んでいく。

 敵基地を攻略する為戦車部隊を増産したプレイヤーAは本拠地から離れて前線へと向かう一大戦力を見ながら満足感に浸っていた。

 敵プレイヤーは今頃前線の兵力に戦闘による気疲れがきている所だろう。そこへコツコツ貯めた兵力を突っ込み、物量で敵の前線を崩壊させ、其のまま相手の基地を休む間なく次々落とし、敵本営をぶっ潰す!プレイヤーAは自身の用兵に絶対の自信を持っていた。

 相手プレイヤー玲奈のターンである。プレイヤーAの本営の左側から機影が複数、目視出来る距離に現れた。

 プレイヤーAはニヤリと嗤う。対処はしてある。長距離対空砲を6門用意してあるのだ。是式の事・・・予測が付けば、どうと言うほどの事ではない。

 ホレ見なさい、たかがその程度の戦力で・・・多!

 対空砲の弾薬が尽きた。制空権を取られる。だか、敵機はその先端がようやく本拠地のど真ん中かつ、上空に陣取っただけだ。未だ巻き返しがきく。

 ターンが代わり、取り敢えず対空砲を街中に戻し補給を済ませる。敵の機影は多くが偵察機だった。コストが安い。

 だが、数が尋常ではなかった。20基飛んできている。予備戦力の戦闘機を三部隊だす。

 敵機は攻撃してこない。攻撃が出来ない。戦闘機は都市部近辺に待機させる。短距離対空砲も、三門作る。

 此れで一応完璧な布陣である。ターン終了だ。


「これから玲奈ちゃんどうするのかな?」

「正面突破じゃないかな。」

「何故ですか?」

「正面突破嫌いだから。」

「・・・・嫌いだったらしないんじゃないの?」

「絡め手好きなんだけど、沙都ちゃんが、絡め手の玲奈ちゃんをボロボロにしてたから、いま玲奈ちゃんは、正面突破を基本的に学習してるんだ。だから、今日仮に負けるとしても正面突破の戦術をやるに、500円!」

「自分の得意戦術をやってくるに300円!」

「私は教師です!なので生徒の成長したいという気持ちを応援したい!ので、正面突破に800円!!」

「・・・・・ショボい。」

「沙都ちゃんは?」

「・・・・・玲奈様が負けるに600円。」

「いいの?玲奈ちゃん応援しなくて?」

「構いません。」

「なんで?」

「媚びたり、甘やかす関係性ではないので。」

「玲奈ちゃんに告げ口しちゃうよ。」

「御勝手にどうぞ。」

 沙都は玲奈のプレイしている画面をじっと見ている。



玲奈は負けました。



「さ~とぉ~負けてしまいましたぁああ」

玲奈は沙都にハグッている。ぎゅっぎゅっしている。

「帰ったら反省会です」

 沙都は冷静な目で玲奈を見つめていた。

「お手柔らかにね。・・・どの辺が悪かった?」

 沙都は玲奈の頭を撫でている。

「・・・・数揃える前に戦うべきですね。少数でも戦える内に戦うべきです。」

「でも、数が揃わないと、心細いし。」

「時間を喰っているだけです。物量でそうとしても相手も同数になるのですから、上限まで貯める意味が有りません。相手が貯めるタイプならソコソコ貯まったときに突っ込まないと戦術の方法が少なくなっていくでしょう。その辺調整してかないと、論外ですよ。」

 玲奈が沙都の体に顔をうずめている間に一行は移動の準備を整えた。



 玲奈は手品を教わった。

 皆の前で披露した。

 無難に終わる事が出来た。

 本をプレゼントされた。20人くらい主催者から同じ本をプレゼントされた。参加した人皆にくれるんだそうだ。

 玲奈達は帰路に着いた。



「本面白いですか?」

「うん。」

「楽しかったですか?」

「うん。」

「もうすぐ御夕飯が出来ますよ。」

「うん。沙都」

 玲奈がソファに座りつつ、両手を広げる。沙都は玲奈と両手をそれぞれ合わせ引っ張り上げる。

 玲奈を立たせて沙都は服のシワを取る。そして玲奈は沙都に誘導されて食卓へと歩き出すのだった。


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