表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マスカブレード  作者: 黒野健一
第五章 文化祭/学校/喪失
86/120

86放課後

キーンコーンカンコーン。


放課後を知らせるチャイムが響く。

だが教室の誰もが自由へ解き放たれることはなかった。


机を教室の端に集め、中央にスペースを作りブルーシートを引いて、数名の女子がペンキで木の板に色を塗っている。

彼女たちは美術部の部員とその友人たちであった。

皆イラストを描くのが得意で、こういう仕事は彼女達の得意分野で周囲で、暇そうな男子たちがくだらないことを話しながら見ていた。


「ふーん、かわってるのね?ここの伝統?」

「いや、何年か前にモメごとが起きて、だからこういうやり方になったらしいよ」


月村詩朗と黒藤忍。

壁にもたれかかって、美術部女子たちが作る『お化け屋敷喫茶』の看板の飾りとなる赤い花を紙で作っている二人。

話の内容はこの学校で行われる文化祭という行事での、他の学校との違うところについて。


普通、クラスで出し物をするときはクラス内で決めたことを生徒会やらで集めて、被ったりしてないか、安全面は大丈夫かと調整されるのだが

ここの学校ではクラスで決めたいくつかの案を集め、全学級の案からランダムに振り分けられる。

つまり、どんな出し物になるか自分達ではなく天に任せることになるのだ。


「隣のクラスはイカスミスパゲッティ屋だって、ほんと?」

「ああ、どこのクラスが思いついたんだか……」


なんてこともない。ありふれた日常の風景だ。

ただお喋りしながら作業をしているだけの放課後。

とても穏やかで、とても、彼女が人類の救世主に力を保持している存在とは思えない。


彼女を日野に紹介してから数日……詩朗はこの黒藤忍が組織に属し、魔刃との戦いに身を投じていることを気にしないようにしていた。

もう、自分には関係ない。何もできないと、そう自分に言い聞かせ。


その成果か、こうしていると彼女が何者か忘れて、ただ一人の青春を共にする級友としか認識しなくなりそうだった。

そして彼はそれを望んでいる。


「……月村君、向こう手伝ってほしいって……」

「おう、夕河……わかった」


二人の元にやってきた少女、夕河暁がそう告げると、入れ替わるように詩朗は教室から出ていく。


「……手伝おうか?」

「……お願いできるかな?」


黒藤の隣に行き、赤い紙を切って並べて貼っていく。


「手先、器用なのね」

「そう?ありがとう……」


「…………」


少しの間、沈黙が続きつつ、赤い花びらが量産されていく。


「ねぇ、夕河さん。私前からあなたと友達になりたいって思ってたのよ」

「え?」


唐突に発された言葉に夕河が驚き、その顔を見た黒藤がうれしそうに続ける。

以前読んだ記憶からの情報は伏せつつ、ここ数日の夕河の姿を見て抱いた感想をそのまま彼女に投げ、自分が興味を持っていることを告げる。

何故学校に来たり来なかったりするのか、月村詩朗以外との交友関係を持とうとしないのか、どうして彼は友人として認めたのか。


「え……と」

「……ごめんなさい、突然」


つい熱が入ってしまった。

夕河に不審に思われたかもしれないと反省する。

夕河暁は魔刃に対して恐怖心を抱いている。

精神汚染の影響が無いことを知らないわけではないだろうし、解放の魔刃がどういう存在なのかも彼女は知っているはずである。


だがそうだとしても、それを超える心傷が彼女を脅かすのだ。


「今は……」

彼女には魔刃の関りを絶って接してもらうようにするべきだろう。

黒藤は適当な話題に切り替える。


「好きな食べ物って何?」

「……何その質問」


すごく、場をしのぐのに困った人間がするような質問を黒藤は発してしまった。




一方、教室を出た詩朗は階段を駆け下り、一階にある倉庫に来ていた。

ここには前年の文化祭で使った宣伝用の看板が置いてあり、その上に新しい紙を貼って再利用しようということだ。

夕河からここにいるクラス委員長の手伝いをしに、詩朗は急いでいた。


「委員長!来たよ」

「あ、詩朗くん。助かるわぁ……」


委員長のほかに数名、真面目そうな生徒が何人か倉庫にいた。

一人を除いて女子ばかりであった。

クラスの、部活動などで鍛えられている男子は皆、校庭で開かれる大規模な出店の設置に駆り出されていて、クラスに残っているのは

怠惰な青春を送る駄目男ばかりであった。


「いやぁ、男の子が来てくれて助かったよぉ、俺ばっか重たいもの持たされるもんなぁ」

「井上先輩、そういいますけどさっきから対して仕事してないじゃないですかー」


委員長がそう言うので、井上という上級生の持っているダンボール箱の中身を覗く。

その中にはぎっしり詰められたペットボトル。

一瞬重そうと思った詩朗だったが、それらは全てからのペットボトルである。


「うちのクラス、ペットボトルロケット飛ばすんだよねぇ……去年ペットボトルボウリングしたとか聞いたからここに取りに来たんだよぉ

 そしたらここで、他のクラスも使いそうなものは私たちであらかじめ運んでおきましょう、って巻き込まれてさぁ」


と、倉庫にしまってある文化祭に使えそうなものを出すのを他のクラスの分も手伝わされる羽目になったと愚痴を漏らし始める。


「他のクラスのペットボトルわなげとかペットボトルベッドとかペットボトル巨大ロボとか、今年はペットボトル使いすぎだよねぇ」

「あ、ははは……ペットボトルマニアでもいるんですかね?」


詩朗はこのめんどくさがり屋な先輩に適当に合わせて、自分の仕事である看板を運ぼうと手に駆ける。

その瞬間。


「ピンポンパンポーン!」


校内の響くアナウンスの音。

放送室から、慌てていることが容易に伝わるような声色で早口に話す教頭の声が流れる。


「えー校内に残る全校生徒の皆さん、速やかに体育館まで集まってください。文化祭の準備をしている皆さんは今すぐ作業を中断してください。

 繰り返します、全校生徒の皆さんは……」


倉庫にいた皆が何事かと不安を抱く。

それは校舎にいる誰もが感じただろう。


「んー?なんだろうねぇ?とりあえず休憩できそうだから体育館に行こうかー」


空のペットボトルを置いて、ふっと一息つく井上。

委員長は自分のクラスに一度戻って教室内の他の生徒が騒いでないかと見に行くそうで、詩朗には先に体育館に行くように言って走っていった。

そのほかの女子生徒と共に詩朗は体育館の方に向かうと、一番後ろにいた井上が「ふっ……」と微笑したように思えた。


「……そんなに、休みたかったんですか先輩……」


詩朗は心の中で呟いて、ざわざわ騒がしい、体育館にやってきた他の生徒たちの群れの中に混じった。



お久しぶりです。

先の展開に悩んでいたりキャラがブレまくってよくわからない状態になりました。

しかし必ず完結するつもりですので、これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ