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マスカブレード  作者: 黒野健一
第五章 文化祭/学校/喪失
82/120

82蛙頭

蛙、巨大蛙、人型蛙。


頭が蛙の形をした、全身緑色に輝く、奇妙な怪人の噂、

これはゾンビナイフと共にますかれーどちゃんねるに投稿されたものだ。


もし夕河暁がまだ組織にいたのなら、これを見逃すことは無かっただろう。




「対象……停止!」


怪しい雰囲気の男の後に付き、様子を伺っていた日野。

無線で報告しながら路地の影に隠れていたが、彼の気配を感じ取ったその男は影に潜む日野を見つけ、振り返る。


「フッ……意外と鋭いやつだな」


隠れているのが無意味であると、日野はその男の前へ堂々と体を出す。

我ながら気配を悟られるなど、詰めが甘いものだ……と考えながら相手の顔が見える位置までゆっくりと近づいていく。

そして懐には、いつでも戦闘に入れるように仮面が潜んでいた。


「さて……聞くまでもないが、お前が最近騒がしているゾンビ……」

「げーろげろ」


「は?」


その男、月光すら遮断されている暗い路地でよく見えなかったが、その頭は人の形をしていない。

爬虫類の顔、しっとりした緑の肌。

蛙を人型に伸ばしたようなすこし滑稽な姿、だがその手首から肘までに伸びる光沢あるそれは、本来人間にも蛙にもない、異物。


禍々しい、紫色の刃。


そしてもう片方の手に握られているのは細長いナイフ。

ナイフには赤黒い染みがついていて、言葉を交わす必要もなく、蛙の男の意思をくみ取ることができよう。


「げげげっーーーロォ!!」


奇怪な鳴き声と共に発せられたのは毒を連想させる色をしたナイフでの斬撃。

狭い路地だというのにお構いなしに真横に線を引くように振る。


「くっ……ふん!!」


日野はそれをしゃがんで躱し、半円を描くように相手の足を払う。

相手の足首に靴のかかとが触れた途端、そのかかと部分がギリギリと裂けていく。

それを見た日野は満足そうに口角を上げ、懐の彼に向って叫ぶ。


「対象、魔刃確定!!行くぞ先導者ァ!!」

「了解だよ、選ばれし者よッ!!」


ガシガシガシ……日野の体に足代わりの鋭い刃が突き刺さりながら、登っていく。

日野はそれを気にした様子などない。ただ彼の顔の前に飛んだ仮面を被り、自身が特別な者の真の姿へと変身する悦びに浸る。


「ふっん……蛙頭、お前を倒すのはこの俺だ……」

「げろぉ?」


蛙頭の仮面の男のその口元から赤い何かが飛び出す。

細長く、しなやかなそれはまるで鞭である。


「げーろ、げーろ」


飛び回るハエを捕食でもするように、ビルの壁を蹴りながら立体的に逃げ回る日野を伸縮する舌が追いかける。

ビルの表面が舌に剥がされ蛙の頭に降り注ぐ。


「げろげーぇ!?」


攻撃を緩めた蛙頭の男、その隙を見逃さなかった日野は仮面の力で生み出したレイピアを握り、相手の頭上に飛ぶ。

そしてそのまま、重力に任せて相手へと落下していく。


「オラァ!!」

「げろぉおおおおおッ!!」


その刃先は突き刺さりながら脳を破壊し、勢いを止めずに蛙の男の体内へ侵入していく。

日野が刺さった剣の柄をレバーのように引き降ろすと、頭上から足へと向かっていた刃先が地面に対して平行になる。


「げっ……げろぉ……!!」

「魔刃に情けは無い……」


そこから刃を真横に振り抜く。

蛙の仮面は真ん中から横が二つに割れ、全体的に2:1:1に分断される。

もちろん、仮面だけでなくそれを身に着けていた男もだ。


「よろしいので?選ばれし者よ」

「こいつはもう、完全に魔刃化けしている。もう元には戻れないだろう」


そう自身の仮面へ言いつつ、破壊した場所を無線で本部へ知らせ、日野は周囲の探索を続ける。

この蛙の男が持っていた血まみれのナイフ、これが噂の通りのモノだとすると……


「近くに、新たな魔刃がいる……殲滅するぞ」



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