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マスカブレード  作者: 黒野健一
第五章 文化祭/学校/喪失
78/120

78黒藤

夕河暁、剣之上市内の高校に通う高校生。


入学してからすぐに、教室に通うことが少なくなり、学校に来てもサボりがちな少女。

普段会話をする相手は月村詩朗、両親、出席率について話す教師。

好きなことはオカルト情報の収集、交換。

自らサイトを立ち上げるような、普段の行いからは予想もできない行動力がある。


「……不登校ね」


夏が過ぎたこの季節。

だんだんと、暗くなるのが早くなる。

天井に明りが灯っていないこの教室、ここがこれから彼女が毎日通うことになるクラス。

その中の、彼女はまだよく知らない……ある女子生徒の席にいた。

机に伏して、窓側の席ゆえ落ちる夕日を見つめている。

ひび割れた仮面を被って。


記憶の解放。


詩朗達との用事が済み、二人は帰った。

詩朗の隣にいた彼女に興味を持っていたがため、黒藤は一人でこんなところにいる。


「どうしてかな……?」


普段から使っているモノや身に着けているモノからもある程度記憶を読むことができる。

そして、思い入れのあるモノからも。

彼女は、夕河暁は決して学校が嫌いなわけではなかった。

いじめや何か悩みがあるわけではない。


彼女が学校に来なくなったのは?オカルトにのめり込んだ理由とは?


「うん、私何やってんだろう?」


机の上の自分の頭を上げ、ため息をつく。

気になれば、声をかけて友達になればいいのだ。

いつもそうだ。回りくどいことをして、結局独り。


人間の組織についての情報こそ、この能力で探ればいいのに。


黒藤は軽く自分を嫌う。


この机からはこれ以上の情報は読み取れない。


「……」


詩朗の机、不登校の夕河より長くそこに座っているだろう。

彼についても、彼女ほどではないが興味がある。


「おーい、転校生どうした?」

「え?」


開いた教室の扉の先には、今日この教卓の前で私をクラスのみんなに紹介していた30代ぐらいの男の教師。


「忘れ物を取りに……」

「そうか……なにか困ってたら俺や、クラスの奴らに頼れよ。」


みんないいやつだから。


そう言い付け加え、彼は職員室へと帰っていく。


「いいやつ……か」


いいかわるいか、その二つの視点でいえば彼女はわるいやつ、なのだろう。

彼女は教室の扉に触れ、ゆっくりともう一度夕河の席を見ようと振り返る。

教室は真っ暗で、どこが誰の席かわからない。


「……夕河さん、私と友達になってくれるかな?」



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