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マスカブレード  作者: 黒野健一
第三章 変身/恋心/失われた笑顔
48/120

48獣達

昼間、ここで子供たちは屈託のない笑顔で遊んでいただろう。

今、殺し合っている者達にはない、笑顔で。


「…………アァ……」

月村詩朗は自分が噛み千切らせた指の根本を見つめている。

獣のような息遣いで、その傷口から刃が生えるのを待っているのだ。


「コイツ……なんでだ、初めて会った時とは比べ物にならないほど、俺と同調している……?」


詩朗の顔を覆い隠している仮面が不可解に思っているのは、月村詩朗という人間の本性だろう。

復讐心が『復讐』の力を引き出す。

今、引きちぎったばかりの指が、既に刃に生え変わった。

これほどまでの力を引き出す彼の復讐心とは、どのようなものなのだろう?


「待たせたな……」


「………………」

「いたたたたた」

「いたいわぁ」

「誰か……助けて……」


相変わらず、自分が殺した者達に喋らせて自身は黙り込んでいる。

そうした行為は、詩朗にとって死者の冒涜、殺意を煽られる要因となっている。


魔刃の女はゾウの滑り台と、ゆっくり自身を混ざり合わせていた。

詩朗はそれには気付いていないが、徐々に肉体の性質が変化している。

ゾウの滑り台は少しずつ女の肉体の一部となっている。

さらに、詩朗が相手を固定するのに突き刺した刃も彼女のモノとなりつつあった。


「それ以上、その人達にしゃべらせるな……」

詩朗は彼女にくっついた被害者たちの首を狙い刃を振るう。


それは彼の償いだ。

間に合わなかった自分の罪の、その償い。

せめて、奇麗な形を取り戻させたいという気持ち。


なにより、この化け物のおもちゃにされているのが気に入らない。


ゆえに詩朗はまず女が肩などに取り付けた遺体の首を取り戻すことを優先とした。

身動き取れない女は、次々と母親達の首をもっていかれる。


「えいッ!オラァ!ウァアアアッ!!」

詩朗は一心不乱に刃の指を振るう。

魔刃となった女の体にはもう流れていないが、首にはまだ血が宿っていて

切り離すたびに、血が流れていくのでまるで詩朗が首を断ち切り殺したかのようにも感じてしまう。


「アッァアアアア!!」

最期の一つは切り落とされ、その場に転がされる。

詩朗は本当は今すぐにそれらを骸たちに届けてやりたかったが、女がそうはさせない。


このままトドメも刺そうと、詩朗は黒と白の仮面に向かって獣のような爪で突こうとする。

しかし、それは憎い敵には届かなかった。


「ぐ、ぐっっっ!!がぁ!!」

突如詩朗の体は投げ飛ばされてしまった。


それを行ったのは、追い込まれていた女がはりつけにされていたあの、ゾウの形をした滑り台だ。

滑り台の……ゾウで言えば鼻の部分で詩朗は殴られたのだ。

金属性のそれが、実際のゾウの鼻のようにしなった。


「が……はッ……」

打たれた詩朗はブランコの柱にぶつかり、止まる。

衝撃で口から吐き出しそうになりつつ、詩朗はなんとか意識を保つ。


そんな彼にむかって、遊具であるはずのゾウがなんと突進してきた。


「ッ……」

「貸せェ!」


復讐の魔刃が跪いている詩朗に叫ぶ。

その時、詩朗は自分の肉体を自分の意思外で動かされる感覚を覚える。

今体を操っているのは復讐の魔刃である。


魔刃は人間の肉体と精神へ影響を与え、自分のモノとする。

その応用だろう、復讐の魔刃は一時的に詩朗の肉体の主導権を得る。

痛みなどという人間の感覚に対して復讐の魔刃は鈍かった。

詩朗の負った傷を、以前捕食した『癒し』の力で修復しつつ、迫る獣を避ける。


「……ッ!どうやらこんだけだァ!詩朗!!」

「……ハッ、復讐!ありがとう!」

自身の感覚が元に戻り、先の傷も耐えられないほどではなくなった。

こうやって逃げ回るうちに、刃と変えた指先が元の形に戻りつつある。


「復讐、もう一度行くぞ……」

「……ああッ」


今度は両手の指を咥えさせ、抜刀する。

双爪を持って、獣に向かって挑む。


その鉄の獣は、背に女の腹から上を乗せていた。

それに加えて先ほどはなかった、鋭い牙も生やしている。


「これは、俺たちの刃……こいつ、本当にこの前の魔刃か……?」

「今は関係ない……ッ!バラバラに解体するまでだ!!」


詩朗は迫る鉄の牙獣に対して怯まず、向かっていく。

砂煙を上げ、敵の真正面へ突き進む。

女の魔刃も同じく、自身と一体化している鉄の獣に相手を轢き潰すように命じる。


「ガァアアァアアアアッ!!」

「ウォオオオオオッ!!」

二体の獣の如き者が衝突する……!

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