表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マスカブレード  作者: 黒野健一
第三章 変身/恋心/失われた笑顔
37/120

37狭い道

「ひっ……」

「いやぁ……!」


「逃げなさい!早く!!」

恐怖心に囚われた二人の前に現れたのは、仮面を被った少女。

彼女の言うとおりに、狭い道に向かってカップルは必死に足を動かす。

この先には広い道につながっており、そこに出れれば逃げ切ることができるだろう。


「……誰よ……愛が、逃げたじゃない!!」

目的遂行を邪魔され、怒りをあらわにする。

この狭い路地で狂気を垂れ流している女の仮面が、まるで生物のように。


「我主……敵はおそらく結合の魔刃であるかと」

「結合……合体ねぇ……」

「魔刃支配時代にも魔刃同士を結合させるなど、凶行を繰り返していた狂人です。ご用心ください、主様」


結合の魔刃について語ったのは制約の魔刃。

彼と結合の魔刃との間に深い親交もなく、ただの他人である。

それでも、彼が話した結合の魔刃の凶行については、彼でなくとも多くの魔刃が知っていた。


「ひどいわね、狂人だなんて」

自身についての評判は結合の魔刃、彼女自身何度も耳にしたことだ。

今更自分が理解されていないことについて、思う所は何もないが、

ただの挨拶代わりとして、言葉を返しているだけである。



そして、本当に自分のことを理解しない人間……魔刃などどうでもいいと思っているので

これから行うことも、ただ目的の邪魔をするから行うだけである。


先ほど標的にしていたカップルに振るうはずだったコンクリートの拳を

彼女の前に立ちはだかる魔刃、制約の魔刃と彼に体を貸している少女、黄鐘咲に向ける。


片足を一歩前に進ませ、その拳を引き、もう片方の足と共に突き出す。

いたってシンプルな拳な撃ち方だ。

彼女の腕を纏うコンクリートの塊が、特別な技術や打ちこみ方などなくとも威力をつけてくれる。


「脚力強化、頼める?」

迫る巨大なコンクリートの拳を前にして、黄鐘はつぶやく。

「……了解、制約……両腕」

彼女のつぶやきに応じた制約の魔刃は、人身の本体である仮面の口から鎖のようなものを出し始める。

仮面の口から垂れるように出た鎖は、被っている体の腕に巻き付く。


黄鐘は両腕を後ろに縛られる状態になった。


「砕けなさい!!」

この狭い路地を制圧する巨大な拳はまっすぐ黄鐘の方へ。


これから叩き潰す相手である少女は両腕をなぜか縛られた。

防御行動はとれない、このまま潰すのみ、と結合の魔刃は決着に急いでしまった。

当然、自分自身を縛るなど意味のない行為をこの状況をするはずはない。


警戒すべきだった。だがもう遅い。


黄鐘は目の前の拳に片足を出し、階段を二段飛ばしで駆け上がるように拳を踏みつける。

そして、跳躍。黄鐘は空中で一回転し、相手の背後へと着地する。


この狭い路地で相手の背後へと回ることに成功した黄鐘。

対象を粉砕できると信じ込んでいた結合の魔刃が一瞬、その対象を見失う。


その隙を見逃さなかった。


「後ですわよ……!!」

制約、魔刃の能力により両腕の使用を禁じられた代わりにすさまじい脚力を得た。

そのため、人並み離れた速度で背後から結合の魔刃を狙える。


結合の魔刃は気配を察知し、振り向くことはできた。

しかしその巨大な拳があるため、反応はできても防御を実際に行動するのはできない。

能力を解除し、コンクリートの塊たちで形成した拳が崩壊する。

身軽になり両腕で、黄鐘が放つ強化された脚力による蹴りを受け止めようとする。


だが、やはり遅かった。


「ぎゃああああぁああ!!」

腹部に蹴りが直撃し、体が吹き飛ばされる。

細い路地を勢いよく進み、すこし広い道へと出る。


「うっ……つぅう!ねぇ、あの仮面の女の子貴方と同じ力を……」

「大丈夫……大丈夫、強いけどこれで距離が離れたわ!」

動くたびに腹部の痛みが人間である女と彼女が被った魔刃、両方に襲い掛かる。

呼吸すらもままならないが、今のうちにこの場から離れなければ次の一撃で終わる。

女の口にあふれる体液を飲み込ませ、結合の魔刃が立ち上がる。


その動きを確認した黄鐘は、猛スピードで走り寄る。

すぐに追いつかれてしまう!そう思わせ、その恐怖により結合の魔刃が必死に肉体を動かす。

結合の魔刃と女がのろのろとしたスピードでありながらも、道を進んでいく様を確認した黄鐘は、自身を縛る鎖から解き放たれる。


「……どうやらうまく逃げてくれるようですね、我主様……」

「……詩朗くん!聞こえる?」

動かせるようになった腕で無線を使って待機している詩朗たちに通信する。

敵に負傷を負わせれたことと、目的地点を少し変更する。


「……了解!」

無線の先の詩朗の声で会話は終了する。


役目を果たした黄鐘はひと気のないこの場所で仮面を脱ぐ。

「……さぁ詩朗くん、頼むわよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ